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第57話 空が光った夜

 大陸中央高地の簡易観測器が「可視域発光反応」を報告してから、日没まで二時間四十七分。


 エレナは、その二時間四十七分を人生で最も長い待ち時間の一つだと思った。


 もちろん、ただ待っていたわけではない。


 帝国、カルディア、エルグラン、故国、ローディア、東方諸国へ観測強化を要請し、高地周辺の山岳監視所には空の色、光量、方角、継続時間を統一形式で記録するよう通知した。通信が届かない地域では、地元の役人や修道院、鉱山監督所まで動員されている。


 百五十年前には、人々が「空が青く光った」と文章で残すしかなかった。


 今回は違う。


 魔力濃度。


 地下流動。


 光量。


 方角。


 時刻。


 全部、同じ時計で測れる。


「中央高地、大気魔力プラス五一」


 ノアが最新値を読み上げた。


「地下簡易観測器は?」


「一基停止。残っている低精度器で推定プラス九〇前後。ただし測定上限に近いので、数値そのものの信頼度は低いです」


「分かりました。『九〇』だけを独り歩きさせないでください」


「もう報告書に注記してあります」


「ありがとうございます」


 エレナは大陸地図へ目を移した。


 周辺地域では、逆に魔力低下が続いている。


 帝国北部、マイナス一九。


 カルディア北部、マイナス二〇。


 エルグラン北西部の地下魔力井戸、マイナス二三。


 中央では増える。


 外では減る。


 同じ時間に。


 偶然と呼ぶには、もう少し無理がある。


「エレナさん」


 リナが窓際から呼んだ。


「はい?」


「日が落ちます」


 西の空が、濃い橙色から紫へ変わり始めていた。


 帝都から大陸中央高地は見えない。


 当然だ。


 何百キロも離れている。


 ここで空を見上げても、何も分からない。


 それでもエレナは一度だけ窓の外を見た。


「見えませんよ」


 リナが言う。


「分かっています」


「でも見ちゃいますよね」


「はい」


 そんな自分が少し可笑しかった。


 技術者なのに。


 数字を信じると言いながら。


 やはり自分の目でも見たくなる。


「現地に行きたかった?」


 リナが聞く。


「かなり」


「まだ言うんですね」


「むしろ今が一番行きたいです」


「行かなくてよかったとは?」


「それも思っています」


「両方?」


「両方です」


 以前より、自分の中に矛盾が増えた。


 けれど、それでいいのだと思う。


 行きたい。


 でも、行くべきではなかった。


 心配。


 でも、任せられる。


 怖い。


 でも、見たい。


 人の気持ちは、一つに整理できるものばかりではない。


 午後五時四十二分。


 第一報。


『カルディア東部山岳監視所。北東天に淡い青白光を確認』


 通信室が静まった。


 ノアがすぐ時計を見る。


「時刻記録」


「五時四十二分」


「方角」


「北東」


「雲量」


「二。薄雲あり」


「雷?」


「雷鳴なし」


 エレナは紙を受け取った。


 まだ。


 一か所。


「他は?」


「待ってます」


 二分後。


 エルグラン西部山岳所。


『東方低空に青光。雲とは異なる。』


 さらに。


 故国北東部。


『西方山地上空に淡青色発光帯を確認。』


 エレナの指先が冷たくなる。


「三地点」


 ノアが地図へ線を引く。


「見てる方向」


 カルディアから北東。


 エルグランから東。


 故国から西。


 三本。


 おおまかに。


 一つの地域へ。


 集まる。


「中央高地」


 リナが小さく言った。


「はい」


 エレナは答えた。


「たぶん」


 それでも。


 まだ。


 たぶん。


「現地遠隔観測器は?」


「光量上昇中」


「魔力値」


「大気プラス五八」


「地下」


「計測精度低下。もう数値として使えません」


「分かりました」


 測れない。


 それも。


 情報。


 装置の能力を越えた。


「空の発光」


 ノアが言う。


「これ、魔力そのものが光ってるんですか?」


「分かりません」


「大気中の粒子が励起されてるとか?」


「それもあり得ます」


「魔石粉塵?」


「山岳地帯で大規模粉塵なら風向記録が必要です」


 分からない。


 でも。


 見えている。


 それだけは。


 確か。


 午後六時七分。


 夜空が完全に暗くなった頃。


 光は。


 帯になった。


 カルディア監視所から送られた写生記録には、山の稜線を越えるように、青白い光の筋が長く横たわっている。


 一本ではない。


 薄い筋が。


 何重にも。


 重なる。


 雲のように。


 でも。


 風に流されない。


「百五十年前と」


 ベルナールが。


 通信会議越しに言う。


「似ています」


 故国に残った記録。


『帯のごとき光、山稜の上に長く横たわる』


 ほとんど。


 同じ。


 エレナは。


 古記録と。


 今日の写生記録を。


 並べた。


 胸の奥が。


 少し。


 震える。


 怖い。


 でも。


 それだけではない。


 百五十年前。


 誰かが見た。


 同じ光。


 その人は。


 何も測れなかった。


 でも。


 残した。


 だから。


 今。


 繋がった。


「ベルナール技師」


「はい」


「百五十年前の記録」


「ええ」


「残してくれた人の名前」


「修道士の記録にはあります」


「正式報告に入れたいです」


 ベルナールが。


 少し黙る。


「そこまで?」


「はい」


「技術者ではありませんよ」


「それでも」


 エレナは古い文字を見る。


「この人が書かなかったら、今日の光と比べられませんでした」


 ベルナールの声が。


 少し柔らかくなる。


「分かりました。確認します」


 名前。


 記録。


 功績。


 見えない仕事。


 昔も。


 今も。


 同じ。


 午後六時二十分。


 最初の異常設備報告。


 中央高地から百キロ以上離れた山岳集落。


『家屋用結界、一時過出力』


 六時二十六分。


『街路灯二基、異常高輝度。手動停止』


 六時三十一分。


『保存魔石一個、表面温度上昇。隔離』


 光は。


 ただ。


 きれいなだけではない。


 エレナの表情が変わる。


「過剰魔力域、広がってます」


 ノアも頷く。


「高地だけじゃない」


「遮断核配備地域は?」


「周辺主要設備へは一部だけ」


「全部には間に合ってない」


「はい」


 今。


 第一型。


 まだ。


 数が少ない。


「最優先」


 エレナ。


「通信中継所、水道、治療設備」


「すでに現地へ指示」


「小型照明は?」


「手動停止を推奨?」


「はい。異常に明るくなったら使い続けない」


 普通なら。


 明るくなれば。


 便利。


 と思う。


 でも。


 今は。


 危険信号。


「一般向け告知」


 外務連絡官。


「どう表現します?」


 エレナは考える。


「中央高地周辺で魔力過剰を確認」


「“空が光っています”は?」


「見れば分かります」


「もう新聞社が騒いでいます」


「なら、隠さないでください」


「危険性」


「光そのものの人体影響は不明。でも、魔導具過出力の可能性がある」


「避難?」


「現時点では不要」


「外出制限?」


「必要ありません」


「では」


「魔導具が異常に明るくなる、熱くなる、音が変わる場合は使用停止。触れない。設備管理者へ連絡」


「分かりやすい」


「お願いします」


 広報。


 出る。


 午後七時。


 国際技術会議。


 いつもの大会議室ではない。


 全員。


 通信。


 各国。


 現場対応中。


「大陸中央で魔力上昇」


 カルディア代表。


「外縁で低下」


 エルグラン代表。


「同時発生」


 ベルナール。


「ここまで揃うと」


 誰か。


「移動仮説を正式に採用していいのでは?」


 エレナは。


 すぐには頷かない。


「正式採用、という言い方はまだ早いです」


「また慎重だ」


「でも」


 今回は。


 一歩。


 進む。


「主要仮説には上げていいと思います」


 室内。


 少し。


 空気が変わる。


「つまり」


 カルディアの気象技師。


「魔力は消滅しているのではなく」


「少なくとも一部は」


 エレナ。


「大陸中央へ偏っている可能性が高い」


「なぜ?」


 エルグラン。


「それを」


 エレナは。


 地図を見る。


「次に調べます」


 原因。


 そこ。


 まだ。


 何も。


 分からない。


「自然周期」


 ノアが挙げる。


「地下構造変化」


 エルグラン。


「季節性」


 カルディア。


「古代大規模術式?」


 誰か。


 少し。


 声が低くなる。


 古代。


 その言葉。


 会議が。


 少しざわつく。


「待ってください」


 エレナ。


 すぐ止める。


「人工物と決まっていません」


「でも百五十年前にも」


「だからこそ」


 自然現象。


 周期。


 地質。


 大気。


 全部。


 残す。


「分からないところへ」


 エレナは言った。


「分かりやすい物語を当てはめないでください」


 誰かが。


 少し苦笑。


「古代文明の装置が世界の魔力を吸っている、というほうが新聞受けはいい」


「だから嫌です」


 エレナが即答すると。


 何人か笑った。


「原因が自然なら自然」


「はい」


「人工なら人工」


「はい」


「調べてから」


「そうです」


 その単純なことが。


 案外。


 難しい。


 夜八時。


 光帯。


 さらに明るくなる。


 カルディア東部では。


 肉眼ではっきり。


 エルグラン山岳地域でも。


 青。


 白。


 わずかに緑。


 複数の色。


 空。


 揺れる。


 風とは。


 違う。


 エレナは。


 送られてきた観測画を見つめた。


 美しい。


 そう思った。


 思ってしまった。


「きれいですね」


 リナが。


 先に言った。


「はい」


「言っていいんですかね」


「いいと思います」


 危険。


 それと。


 美しい。


 同時。


 「危険だから美しくない」と思う必要はない。


「私」


 エレナが言う。


「現地で見たかったです」


「知ってます」


「たぶん一生言います」


「それはちょっと面倒ですね」


「すみません」


 でも。


 画だけでも。


 目を離せない。


 自然なのか。


 人工なのか。


 災害なのか。


 何なのか。


 まだ。


 分からない。


 夜八時半。


 クロムウェルから。


 短い通信。


『宮殿北塔でも光が見えるとの報告あり』


 エレナが。


 思わず顔を上げる。


「帝都から?」


 距離。


 かなりある。


 実際。


 研究院の窓から北東方向。


 空。


 見れば。


 ごく淡く。


 青。


 雲の縁。


 色が違う。


「……見える」


 リナも。


 窓辺。


「本当に」


 帝都の人々も。


 外へ。


 出ている。


 広場。


 窓。


 橋。


 空を見る。


 混乱は。


 ない。


 でも。


 ざわめき。


 当然。


 怖い。


 人。


 美しいと。


 言う人。


 祈る人。


 子どもを抱く人。


 新聞売り。


 走る。


「外へ出るな、は?」


 リナ。


「人体影響がない限り必要ありません」


「でも怖がりますよね」


「はい」


 そこで。


 エレナは少し考え。


 広報へ。


 一文。


 追加。


『現時点で、発光そのものによる人体への直接的危険は確認されていません』


 確認されていない。


 安全。


 ではない。


 でも。


 今。


 分かる範囲。


 正直に。


 夜九時。


 宮殿。


 クロムウェル。


 国家会議。


「光帯」


 彼が言う。


「国民はかなり不安がっている」


「はい」


「宗教団体の一部は」


 外務。


「天罰だと」


 エレナは。


 少し。


 困る。


「技術で否定できます?」


 クロムウェル。


「天罰かどうか?」


「そう」


「無理です」


「正直だな」


「技術で分かることではないので」


「なら?」


「魔力現象として測れている」


 それだけ。


「それを出します」


 クロムウェル。


 頷く。


「恐怖を笑うな」


「はい」


「だが」


「はい」


「恐怖に国を動かさせるな」


 エレナ。


「分かりました」


 それ。


 技術。


 政治。


 同じ。


 怖い。


 だから。


 全部止める。


 ではない。


 怖い。


 だから。


 測る。


 準備。


 守る。


 夜九時半。


 新しいデータ。


 光帯の強弱。


 地下魔力濃度の変動。


 ノアが。


 何度も。


 並べる。


「主任」


「はい」


「これ」


「何です?」


「光量」


 増える。


 少し遅れて。


 地下濃度。


 下がる。


 また。


 地下上昇。


 少し遅れて。


 光。


 強くなる。


「位相差」


 エレナ。


「ありますね」


「地下から大気へ出てる?」


「可能性」


「かなり?」


「上がりました」


 地下に。


 集まる。


 そして。


 一部。


 大気へ。


 放出。


 それが。


 光る?


「循環」


 エレナが呟く。


「止まってはいない」


「むしろ」


 ノア。


「偏ってる?」


「はい」


 大陸の魔力循環。


 壊れた。


 完全停止。


 ではない。


 偏った。


 片寄る。


 吸い上げる。


 集める。


 吐き出す。


「脈動」


 ノア。


「圧力差」


 エレナ。


「大きな循環路の」


 紙。


 地図。


 地下。


 大気。


 全部。


 一つに。


 繋がり始める。


 夜十時。


 光帯。


 最大。


 同時に。


 中央高地周辺。


 魔導具異常。


 増加。


 旧式街灯。


 過発光。


 家屋結界。


 振動。


 魔力蓄積石。


 発熱。


 でも。


 今回。


 過剰魔力遮断核を設置した重要設備は。


 止まった。


 壊れず。


 止まった。


「通信中継所」


 ノア。


「第一型、赤。主回路停止」


「予備」


「物理伝令へ」


「水道」


「遮断核作動。手動ポンプへ」


「治療所」


「患者回路切断成功。独立魔石式へ交換」


 エレナは。


 少し。


 目を閉じる。


 事故が。


 なかったわけではない。


 小型魔導具。


 壊れた。


 窓。


 割れた家。


 軽い火傷。


 数件。


 でも。


 人命。


 今のところ。


 守れている。


 失敗から。


 作った。


 遮断核。


 それが。


 本当に。


 次の事故を。


 減らしている。


「ハロルドさんに」


「はい」


「軍の旧式逃がし技術」


「はい」


「役に立ったと」


「本人、絶対『知ってる』って言いますよ」


「それでも」


 エレナは。


 少し笑った。


「伝えてください」


 夜十一時。


 光。


 少し。


 弱まる。


 同時に。


 外縁部の魔力低下。


 ほんの少し。


 回復。


「連動」


 ノア。


「見えます」


「まだ一回」


「分かってます」


 二人とも。


 同じ。


 慎重。


 でも。


 興奮。


 隠せない。


「もし」


 ノアが言う。


「中央に集まって」


「はい」


「放出して」


「はい」


「そのあと」


「周囲へ戻るなら」


 大陸の。


 呼吸。


 そんな言葉が。


 頭へ。


 浮かぶ。


 でも。


 エレナは。


 口にはしない。


 詩的すぎる。


 正式報告。


 困る。


「循環変動モデル」


 代わりに。


 書く。


 ノアが。


 肩を落とす。


「夢がない」


「正式名称です」


「ですよね」


 夜十一時半。


 光帯。


 残る。


 淡い。


 空。


 静か。


 エレナは。


 ようやく。


 交代。


 でも。


 今日は。


 宮殿から。


 迎え。


 カミラ。


「陛下からです」


「何が?」


「外を見る時間くらい取れ、と」


「……」


「命令ではありません」


「分かってます」


 研究院の外。


 夜。


 帝都。


 人。


 まだ。


 空を見る。


 青白い。


 遠い。


 光。


 エレナも。


 止まる。


 数分。


「きれいですね」


 カミラが言う。


「はい」


「怖い?」


「かなり」


「それでも?」


「見ていたいです」


 カミラが。


 少し笑う。


「技師長らしいですね」


 そのあと。


 宮殿。


 クロムウェル。


 北塔。


 珍しく。


 仕事机ではなく。


 窓。


 二人。


 並ぶ。


「見た?」


「はい」


「どうだった」


「きれいです」


 クロムウェル。


 少し意外そう。


「そこから?」


「駄目ですか?」


「いや」


「危険でも」


 エレナ。


 空を見る。


「きれいなものはきれいです」


「そうだな」


 しばらく。


 仕事の話。


 しない。


 ただ。


 見る。


 でも。


 エレナ。


 やっぱり。


 言う。


「中央に集まっている可能性が高いです」


「始まった」


「すみません」


「今日は許す」


「光量と地下濃度に」


「分かった」


「まだ途中です」


「聞いている」


 エレナ。


 少し笑う。


「恋人としては?」


「空を見てほしい」


「国家魔導技師長としては?」


「原因を調べろ」


「両立しますね」


「今のところは」


 短い。


 でも。


 穏やか。


 エレナは。


 窓枠へ。


 少し手。


 置く。


 クロムウェルの手。


 隣。


 触れる。


 今日は。


 エレナから。


 指を。


 少し。


 重ねる。


 誰も。


 何も。


 言わない。


 ただ。


 遠い空。


 光。


 その美しさを。


 一緒に見る。


 翌朝。


 光帯は。


 消えていた。


 大陸周辺地域の魔力も。


 少しずつ。


 回復方向。


 中央高地の地下値。


 まだ高い。


 でも。


 昨夜より。


 低下。


 技術部会。


 朝八時。


 エレナ。


 最新モデル。


 説明。


「現時点では」


 黒板。


『広域低下』


 矢印。


『中央高地への偏流』


 さらに。


『地下高濃度化』


 矢印。


『大気放出・発光』


 そして。


『再分散?』


 最後だけ。


 疑問符。


「大陸魔力循環が」


 エレナは言う。


「何らかの理由で中央高地へ偏っています」


 カルディア代表。


「原因は?」


「不明」


 エルグラン。


「自然周期」


「候補」


「地殻変動」


「候補」


「人工術式」


「候補」


「全部?」


「はい」


 エレナ。


 少し。


 眉を寄せる。


「だから」


「何を調べる?」


「中央高地の地下構造です」


 そこ。


 今まで。


 大気。


 地下魔力。


 だけ。


「地質?」


「はい」


「過去の地図?」


「はい」


「鉱山記録?」


「全部」


 ベルナールが。


 少し笑う。


「また増えましたな」


「増えます」


「嬉しそう」


「少し」


 その日の午後。


 エルグラン側から。


 中央高地周辺の古い地質測定記録。


 カルディア。


 山岳踏査資料。


 故国。


 国境測量図。


 帝国。


 地下魔力脈探査結果。


 重ねる。


 最初は。


 何も。


 見えない。


 山。


 断層。


 岩盤。


 でも。


 一枚。


 エルグランの古い地下反応図。


 百年以上前。


 鉱脈探索目的。


 精度。


 低い。


「これ」


 ノアが言う。


「中央」


 円。


 ではない。


 妙に。


 直線的。


 深部反応。


 規則。


 並ぶ。


「自然地層?」


 リナ。


「分かりません」


 エレナ。


 見る。


 折れ。


 角。


 一定間隔。


 地下深く。


 何か。


 反応。


「再測定」


 エレナ。


「今の遠隔観測器は停止してます」


「別の方法」


「何を?」


 エルグラン技師。


 少し。


 考える。


『旧式の地響き式魔力反応測定なら、高濃度でも本体を近づけずに済む』


「できます?」


『現地へ装置を設置し直す必要はある』


「危険域」


『外側から』


「お願いします」


 数日。


 準備。


 この回で。


 そこまで。


 全部。


 答えは。


 出ない。


 でも。


 夕方。


 既存の遠隔中継点。


 高地の外。


 安全域。


 そこから。


 簡易反応。


 試す。


 地中へ。


 弱い。


 魔力波。


 強く。


 刺激しない。


 反射だけ。


 一回。


 二回。


 三回。


 返る。


 自然の岩盤なら。


 ばらばら。


 になるはず。


 でも。


 記録紙。


 一定間隔。


 反応。


 並ぶ。


 ノア。


 黙る。


 ベルナール。


 通信越し。


「……規則的ですね」


 エルグラン技師。


『かなり』


 エレナは。


 紙を見る。


 心臓。


 少し。


 早い。


「自然に」


 言う。


「こういう形になることは?」


 エルグラン技師。


 少し。


 間。


『ないとは言わない』


「でも?」


『少なくとも、俺は見たことがない』


 エレナは。


 すぐ。


「人工構造物」


 とは。


 言わない。


 まだ。


 でも。


 地下。


 何百メートルか。


 あるいは。


 もっと深く。


 大陸魔力循環の。


 中心近く。


 そこに。


 規則的な。


 巨大反応。


 百五十年前。


 空が。


 光った。


 今日。


 また。


 光った。


 そして。


 その下で。


 今まで。


 誰も知らなかった何かが。


 地下魔力の脈動と。


 ほぼ同じ周期で。


 反応していた。

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