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第4話 何かがおかしい

雨は降り続け、列車はアカデミーへ向かって走っていた。


海斗は窓の外を見つめていた。


「なあ、暁継。アカデミーに着いたとしても、この雨の中を歩いて行けると思うか?」


しかし、暁継は答えなかった。意識は完全に別のところへ向いていた。


「暁継?」


「ん?」


「おい、ちゃんと俺の話聞いてるか?」


「ごめん、聞いてなかった」


海斗はため息をつき、再び窓の外へ視線を向けた。


「雨の話だよ。この調子じゃ、外を歩くのは無理だと思うぞ」


「そうだね。さっきよりずっと強くなってる。でも、近くで雨宿りできる場所を探して、止むまで待てばいいだろ」


「まあ、この様子じゃ、しばらく止みそうにないけどな」


二人はその場に立ったまま、窓の外を見つめていた。


すると、暁継は二人の少女が小声で話しているのを耳にした。


「ねえ、他の街で何が起きたか聞いた?」


「うん。突然雨が降り始めたあと、変なことが起きたって」


「やっぱり。もしかして、今この街でも起きてるのかな?」


「え? 考えたことなかったけど……そういうこと言わないでよ。怖いじゃん」


二人の会話を聞いた暁継の表情が、さらに険しくなる。証拠もないのに、憶測だけで結論を出すような性格ではない。


あの謎の少女との遭遇が、無視することのできない疑念を心の中に残していた。


暁継はポケットからスマホを取り出し、天気予報を確認した。今この瞬間でさえ、表示されているのは晴れの予報だった。


やっぱり変だ。栞は無事に学校へ着いてるといいけど。


列車はそのまま線路を走り続けていたが、しばらくすると突然、速度を落とし始めた。


「なあ、暁継。今、列車遅くなったか?」


「なったな。雨のせいかもしれない」


すると突然、列車内のスピーカーから車掌のアナウンスが流れた。


「お客様にご案内いたします。現在、強い雨と風の影響により、列車は速度を落として運行しております。安全確認のため、次の駅で臨時停車いたします。ご不便をおかけしますが、しばらくの間、列車内でお待ちくださいますようお願いいたします」


アナウンスが終わると同時に、車内のあちこちから囁き声が広がった。不安そうに顔を見合わせる乗客もいれば、すぐにスマホを取り出して確認する人もいた。


海斗が暁継のほうを向いた。


「マジかよ? 次の駅が俺たちの降りる駅なのに、ここから出られないってことか?」


「安全が最優先だろ。外を見てみろよ。今出たら危ないかもしれない」


「まあ、それなら何も言えないな」


暁継は再びスマホを確認し、連絡先を開く。そこに栞の名前が表示された。


栞の様子を確認したほうがいい。


暁継は栞の連絡先をタップして電話をかけた。何度も呼び出し音が鳴ったが、応答はなかった。


もう一度かける。それでも出ない。三度目も同じだった。


暁継の表情がさらに不安そうになる。


出ない。母さんにもかけてみよう。


続けて母親にも電話をかけたが、結果は同じだった。呼び出し音は鳴るのに、誰も出ない。


また? 栞はスマホを鞄の中に入れたままなのかと思ったけど、母さんなら今は家にいるはずだ。一体、何が起きてるんだ?


突然、海斗が暁継の肩を軽くつつき、スマホを見せてきた。


「おい、暁継。見てみろ」


「何?」


画面には、街中のさまざまな場所、さらには他の街からも、同じような奇妙な雨について報告したり、話したりしている人々の投稿が並んでいた。


「俺たちだけじゃないみたいだな」


すると突然、海斗のスマホの通信が途切れ始め、画面が奇妙に点滅した。


「え? な、なんだ今の? 今、画面見たか?」


「見た。普通じゃない」


すると二人は、周囲にいる人々が話し始める声を聞いた。


完全に電源が落ちたスマホもあれば、天気予報に嵐が表示されているものもあった。一方で、晴れのまま表示されているスマホもある。


車内には、静かな緊張と不安が少しずつ広がっていった。


海斗はもう一度スマホを見た。今度は、明らかな不安がその顔に浮かび、息を呑むように唾を飲み込んだ。


そして暁継のほうを向いた。


「なあ、これって……俺が思ってるやつだと思うか?」


「どういう意味?」


「これ……アノマリーの始まりなんじゃないか?」


「アノマリー?」


「ああ。さすがに偶然にしてはおかしすぎるだろ。雨も、天気も、それに今の画面の点滅も……全部、普通じゃない」


暁継はスマホへ視線を落とした。


「海斗が心配なのは分かる。でも、もしアノマリーなら、政府から何か発表があるはずだろ。今のところ何も言ってない。そこは俺よりお前のほうがよく知ってるだろ」


「そ、そうかもな。ははは……そうだといいけど」


暁継の目は連絡先の画面に向けられたままだった。頭の中にあるのは、栞と母親のことだけだった。


あんなことを言って、平静を装ってるけど、二人とも電話に出ない理由が分からない。雨のせいで通信に影響が出てるのか? それに、さっきの画面の点滅は一体なんだったんだ?


暁継は栞と母親の二人に、無事なのか、どうして電話に出ないのかを尋ねるメッセージを打ち込んだ。


早く返事が来るといいけど。

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