12.授業体験2
こんな調子で1日が過ぎた。久しぶりにどっと疲れた1日だった。クラスで雑談をしたのはいつぶりだろうとか考えて舞い上がったけど、みんなが集まると、それが嘘だったみたいに感じてしまう。ナナちゃんは相変わらず西口さんと一緒にいるし、僕は一人のままだった。このまま次の朝を迎えると、ナナちゃんが同じ学校に通う、最後の日になってしまう。この秘密を知っているのは、クラスメイトの中では僕一人。たぶん西口さんと沼田さんすら知らないと思う。でも、僕には何かを変える力はない。ちょっと無理をして、誰かと仲良くしようと頑張っても、怪しまれて嫌な顔をされるだけだし、ナナちゃんと仲良くしたら、孤立させてしまうのがわかっている。あと1日で、僕になにができるんだろう?ベッドの上で考えているうちに眠ってしまい、気がついたら、窓の外からは、鳥の鳴き声が聞こえていた。
早い時間に学校に行く日が2日も続くと、もっともらしい理由を考えるのが大変だから、今日は、いつも通りの時間に登校することにした。
「いってきます。」
何食わぬ顔で、いつものように玄関を出て学校に向かう。僕が教室に着く頃には、ぽつぽつと周りの人たちも集まり始めていた。でも、何かいつもと集まりかたが違う気がした。西口さんがまだ来ていないのだ。そして、自分の机はきれいなままだった。僕は、さすがに驚いた。まさかと思った次の瞬間、ナナちゃんと西口さんが一緒に教室に入ってきた。いろんなグループにばらけていた女子が、数人、西口さんに話しかける。集まり始めた女子達の中で、西口さんの笑顔が引きつったのがわかった。
今までと変わらない1日が過ぎた。ナナちゃんと同級生として過ごす日は、あっという間に終わってしまった。でも、来てすぐにお別れなんて言ってなかったから、みんな知らずに今日を終える。ナナちゃんは、仲の良かった女子達には、帰る前に靴箱に手紙を入れて伝えたみたいだ。
クラスのみんなにも、仲良しの女子達にも、ナナちゃんがいなくなったからと言って、穴が空くことはない。居ないならいないで、済んでしまうのがこの学校だ。しばらくしてから、不登校になったとだけ噂されただけだった。でも僕にはわかる。ナナちゃんが僕の状況を変えるために、真っ先に企画に参加してくれたこと、3日で西口さんを変えようとしてくれたこと。実際今日から僕は平和に暮らせるようになった。ナナちゃんは、家にいてもいつも気まぐれで、周りを驚かしてばっかだけど、それでもすごいと、心から思った。




