13.休みの日
ナナちゃんと一緒に学校に通った最後の日は、金曜日だった。と、言うことは、これから週末、2日間は休みだ。晩御飯の時、
「明日、どっか行かない?週末だよね。」
と、僕が言ったら、
「そうねー、博物館あたり行ってみる?」
と、ナナちゃんが言うと、
「うん。」
と、りっちゃんがノリノリになった。
「明日は天気良さそうだけど、中のイベントでいいのか?」
マーくんは冷静に聞いて来た。
「そうねー。つまらなくなったら、夏に行った公園に移動してお昼食べたらいいじゃない。」
と、行った。
「え?博物館こんなに近いのに車移動?」
と、僕はびっくりして尋ねたけど、
「車のがいろいろ行けるもん。」
と、りっちゃんが言ったから、そうなってしまった。
次の日、やりたかったことを全部するために、家を出た時間が8時半。これから行くと博物館の開館時間少し前に着ける。到着すると、発券所には5人ぐらい人が待っていた。順番が来て、お金を払うと、10時からのイベントのチラシを渡された。
「これ、行こうよ。」
と、りっちゃんが飛びついたので、すぐにイベント会場に向かう。今日のイベントテーマは『山の暮らし』暮らしの説明があったあと、蕎麦団子と山菜入りの味噌汁の振る舞いがあった。秋も深まって、外のイベント会場では、風の冷たさを感じるようになっていたから、すごく温まって美味しかった。これだけに満足して、他の展示は見ないで、すぐに移動を開始した。
天気予報が言っていたほど上天気ではない今日の空模様は、どうしても外で無邪気に遊ぶなんてきつそうな感じだった。それでもりっちゃんは、公園につくとはしゃいでいる。とりあえず、朝からナナちゃんが用意した弁当を東屋で食べて、あとは好きなように遊ぶことになった。弁当を食べながら公園全体を見回してみると、公園にはたくさんの遊具があった。小さい子が遊ぶようなシーソーや木馬はもちろん、木でできたアスレチックのような大がかりなものもあった。しかも、アスレチックの中の仕組みとして、二つのタワーを行き来するために、ワイヤーにつられたタイヤに座って、浮かんだ状態で進むマシーンまであった。高校生の僕でも、遊べるものなら一緒に遊びたいぐらい、楽しそうなものがたくさんあった。いつもなら東屋でそのまま休憩している僕やナナちゃんも、今回は遠慮なく遊ぶことにする。ナナちゃんは中学校入りたてに見えるから、服装次第では小学生に紛れていてもわからないから。そして僕は、二人の監視役という名目で遊べると思うから。小さい頃の僕は怖がりだったから、わけのわからない背の高いものによじ登るなんて言えなかった。でも、今になったら、その時にできなかったことをやるんだとばかりに、公園に来るたびにはしゃいでしまう。たぶんこんなこと、今のうちしかできないんだろうなと思いながら。
そして今日、アスレチックによじ登って、狭い入り口を入ってびっくりした。いつもよりも明らかに中に人が多い。たぶん同じことを考えている人が多いのだろう。大掛かりな遊具のほうに向かうと、その前の部屋当たりまで人が並んでびっくりした。ナナちゃんは途中で疲れて東屋に戻るといって戻っていってしまった。
一通り遊んで、僕たち二人が戻ってくると、そこにはすでに、隣の売店で買ったと思われるサイダーとオレンジジュースが置いてあった。僕たちの好物をよくわかっている。ジュースを飲みながら、僕が、
「アスレチック、びっくりするぐらい混んでたよ。」
と、マーくんに報告する。
「そうか、遊具にたくさん人がいたんだな。車はたくさんいたけど、普段混んでる売店が混んでないからどうしたのかと思ってた。」
と、言っていた。
「もしかしたら、大人も一緒に遊んでいるのかも。」
と、ナナちゃんが言うと、
「そうだな。」
と、言った。
「なんか窮屈そうに遊具で遊んでる人、いっぱいいたもんね。」
と、りっちゃんが言うと、
「大人になっても、こういうので遊ぶのは楽しいんだよ。でもさ、遊具には年齢制限あってさ、やりたくても遊べないから、ここぞとばかりに来てる人がいるんじゃない?」
と、僕も言った。
「そうね。たっくんは高校生だけど、確かにもう遊具の年齢は越してるものね。」
と、ナナちゃんも言った。りっちゃんが不思議そうな顔をしたから、
「公園の遊具に大人がいたら怪しいだろ?」
と、マーくんが言うと、笑いながらうなずいた。
「大人になるって、そういうことなのよ。社会の目が気になりだして、やりたいことがどんどんできなくなる。」
と、ナナちゃんも言った。ちょっとどんよりした話題になったとき、東屋の屋根からぽつぽつと規則的な音が鳴り始めた。
「天気も微妙になったし、そろそろ帰ろうか。」
と、ナナちゃんが言って、車まで走って移動した。車につく頃には、雨はかなり大降りになっていた。マーくんが車のエンジンをかけると、ナナちゃんが、
「帰りに何か暖かいもの、買いに行く?」
と、言ったから、
「行き…」
と、僕が言いかけると、
「くしゅん」
と、りっちゃんがくしゃみをした。雨に濡れて、体が冷えたのか、りっちゃんがくしゃみをしだしたので、急いで家に帰ることになった。
「りっちゃん、大丈夫?帰ってすぐにお風呂入れるから、入ってからすぐに着替えて。たっくんは、リビングの暖房すぐに入れてくれる?」
と、ナナちゃんが言った。マンションの駐車場からうちは、屋根でつながっているから、濡れる心配はない。でも、車からの玄関までの道、りっちゃんはずっとうつむいて歩いていた。
家に帰ってきて、着替えを済ませたりっちゃんは、リビングに戻ってきた。お風呂で温まったせいか、くしゃみも収まっていた。
「ごめんなさい。」
うつむいて言ったけど、
「気にしなくてもいいよ。せっかくのお出かけなのに、風邪をひいたらいけないから。」
と、ナナちゃんが言うと、僕も、
「そうだよ、今日雨だなんて言ってなかったもん。誰だって驚くよ。」
と、言った。
「さて、何かあったかいものでも飲むか?」
と、マーくんが言った。
「うん。」
と、僕が言うと、すぐに準備を始めた。少しひやひやしたものの、いつもののんびりした日常が戻ってきた。




