10.小型化の影響
誘拐事件が解決した5日後、警察が面白い記者会見を行った。帰宅中の女性会社員を、子どもと間違えて補導してしまったというのだ。警察署で正直に説明したものの、信じてもらえず、仕方なく身分証明を提示して、帰宅できたのだそうだ。最近では作業着で行う職業も多く、私服で出勤する人も少なくない。私服で出勤するということは、帰宅も同じように私服だ。この事態に便乗して、若いころの格好をしている大人が多くいたので、見た目はさながら学生なのだ。見分けがつかなくても、なんだおかしいとは言えない状況になっていた。
この一件を受け、政府は対応策に追われた。しかし、多くの企業では、一足先に仕事スタイル改革を行っていた。帰宅時間を含め、青少年が補導されない時間に行うことにしたのだ。お店が24時間営業をやめ、銀行は仕事時間外に営業するために早朝から営業し始めた。
政府も遅ればせながら対応策を発表した。その内容は、企業が予想したとおり、作業時間の変更が中心だった。しかし、どうしても24時間管理が必要な業種のみ、政府直々に夜勤を認めるという内容も含まれていた。
この恩恵を受けた多くの大人は、早くなった帰宅時間を利用して、家族や友達との交流を盛んにおこなった。実際、このような形態になったからといって、問題が発生した人は一人もいなかった。警察の記者会見の次の土日を過ぎるころには正直このまま仕事の時間を固定してもいいんじゃないかと思うぐらいに、社会の中に新しい仕事システムが溶け込んでいた。




