表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/40

第17話四人分


 新しい部屋に、積み木の道が少しずつ伸びていきました。


 悠人さんが同じ形の積み木を並べ、その横へ結衣さんが黄色い積み木を置きます。


「そこ、道だよ」


「はな」


「花は横」


「ここ」


「そこならいいよ」


 二人は、もう自分たちだけで話し合っていました。


 直哉は向かい側に座り、箱の中から悠人さんが探している形を見つけて渡しました。


「これ?」


「それ」


「同じ形、まだあるよ」


「久世さん、そこ置いて」


「ここ?」


「違う。反対」


「こっち?」


「そう」


 直哉は言われた通りに積み木を置きました。


 悠人さんは少し離れて道を眺め、満足そうにうなずきました。


「できた」


「もう終わり?」


「ここまでは」


「まだ続くんだ」


「うん」


 悠人さんは箱の中をのぞきました。


 積み木は、まだたくさん残っていました。


 センターで作った道は、いつも箱が空になったところで終わりました。


 けれど、ここではしばらく終わらなそうでした。


「日向さん」


 直哉が私を見ました。


「荷物を置く場所、案内するよ」


「はい」


「二人も見る?」


「見る」


 悠人さんはすぐに立ち上がりました。


 結衣さんは積み木を一つ握ったまま、悠人さんのあとを追いました。


「結衣さん、それは置いていきましょう」


「もってく」


「部屋の中を見るだけですよ」


「いっしょ」


 黄色い積み木を持っていくようでした。


 直哉は何も言わず、私たちを廊下へ案内しました。


「ここが風呂。洗面所は一緒」


 扉を開けると、センターのものより広い浴室が見えました。


 洗面台には、歯ブラシが四本並んでいます。


 大人用が二本。


 子ども用が二本。


「きいろ」


 結衣さんが、黄色い歯ブラシを指しました。


「結衣さんのだと思います」


「そう。黄色が好きだって聞いてたから」


「誰に聞いたんですか」


「申請の時に、必要なものを確認したんだ。髪留めのことも書いてあった」


 結衣さんは、黄色い歯ブラシをじっと見ていました。


「触るのは、使う時にしましょう」


「あと?」


「あとです」


「ほんと?」


「はい」


 次の扉を開けると、小さな寝台が二つ並んでいました。


 壁際には低い棚があります。


 寝具の色は違いました。


 一つは青。


 もう一つは黄色でした。


「ここは、二人の部屋にしようと思ってる」


「ここで寝るの?」


 悠人さんが尋ねました。


「嫌じゃなければ」


「日向さんは?」


「日向さんの部屋は隣」


 直哉が、もう一つの扉を開けました。


 そこには、大人用の寝台と机、棚が置かれていました。


 荷物のケースも運び込まれています。


「私の部屋ですか」


「うん」


「一人で使うんですか」


「そのつもりで用意したけど」


 私は室内を見ました。


 何も置かれていない机。


 空の棚。


 まだ一度も使われていない寝具。


 自分一人のために用意された部屋でした。


「必要ありません」


「え」


「二人と同じ部屋で眠れます」


「でも、一人になりたい時もあるだろ」


「二人を残して一人にはなりません」


「残すっていっても、隣の部屋だよ」


「それでも」


 言ってから、私は何を断ろうとしているのか分からなくなりました。


 直哉は、同じ部屋で眠るよう求めたわけではありません。


 子どもたちと離れるように言ったわけでもありません。


 ただ、私のための部屋を用意していました。


「使わなくてもいいよ」


 直哉が言いました。


「荷物を置くだけでもいいし、二人と一緒に寝てもいい。日向さんが決めて」


「私が」


「うん」


 決めて、と言われることに慣れていませんでした。


「今日は、二人と一緒にいます」


「分かった」


 直哉は、それ以上何も言いませんでした。


 悠人さんが、二つの部屋を見比べました。


「日向さんの部屋、何もない」


「これから荷物を置きます」


「絵、あるよ」


「そうですね」


「僕があげたやつ」


「持ってきましたよ」


「忘れなかった?」


「忘れていません」


「じゃあ、大丈夫」


 何が大丈夫なのかは分かりませんでした。


 結衣さんは黄色い積み木を持ったまま、自分の寝台へ近づきました。


「きいろ」


「結衣さんの寝具も黄色ですね」


「はな、ここ」


 結衣さんは、枕の横へ積み木を置きました。


「それは積み木の箱へ戻してください」


「ここ」


「眠る時に当たると痛いですよ」


「いたい?」


「痛いです」


 結衣さんは少し考え、積み木を持ち直しました。


「あとで、もどす」


「今戻しましょう」


「あとで」


 さっそく、いつものやり取りが始まりました。


 直哉が小さく笑いました。


「毎日こんな感じ?」


「毎日ではありません」


「違うの?」


「同じことをもっと何度も言う日もあります」


「そっか」


 直哉は、結衣さんの前へしゃがみました。


「積み木、僕が預かろうか」


「だめ」


「じゃあ、一緒に戻しに行く?」


「いっしょ?」


「うん」


 結衣さんは少し迷ってから、直哉へ黄色い積み木を渡しました。


 二人で居間へ戻っていきます。


 悠人さんも、そのあとを追いました。


「久世さん、道は壊さないで」


「気をつけるよ」


「踏んでもだめ」


「分かった」


 三人の声が遠ざかりました。


 私は、自分のために用意された部屋に残りました。


 ケースを開けます。


 衣類。


 日用品。


 悠人さんからもらった絵。


 持ってきたものは、それだけでした。


 衣類を棚へ入れました。


 日用品は、どこへ置けばいいのか分かりませんでした。


 センターでは、すべて置く場所が決まっていました。


 ここでは、棚のどこを使ってもよいのでしょう。


 机の上でも。


 引き出しの中でも。


 自分で決めなければなりません。


 私は日用品をケースへ戻しました。


 悠人さんの絵だけを、机の上に置きました。


「日向さん」


 廊下から直哉が呼びました。


「はい」


「昼、まだだよね」


「はい」


「簡単なものなら用意してあるけど、二人が食べられないものを確認してもいい?」


「今行きます」


 私はケースを閉じ、部屋を出ました。


 台所には食材が並んでいました。


 直哉は一つずつ私に見せました。


「卵は?」


「食べられます」


「乳製品も大丈夫?」


「はい。ただし、結衣さんは一度に多く取ると残します」


「分かった。悠人くんは?」


「好き嫌いは少ないですが、葉物は小さくしてください」


「これくらい?」


「もう少し小さい方がいいです」


「了解」


 直哉は包丁を持ち、野菜を切り始めました。


 手つきに迷いはありませんでした。


「久世くんが作るんですか」


「そのつもりだけど」


「私がします」


「日向さんは二人を見ていてよ」


「でも」


「僕、一人の時も自分で作ってるから」


 直哉は切った野菜を鍋へ入れました。


「子ども用に作るのは初めてだけど、料理自体はいつもしてる」


「そうなんですね」


「できないと思ってた?」


「少しだけ」


「家を出てからは、だいたい自分でやってるよ」


 センターへ入る前の直哉しか、私は知りませんでした。


 図書室で隣に座っていた直哉。


 坂道を一緒に歩いた直哉。


 私の手を握っただけで、少し緊張していた直哉。


 その人が、一人で暮らし、料理をしていました。


 私の知らない時間が、確かにあったのだと思いました。


「日向さん」


 居間から悠人さんが呼びました。


「結衣さんが道壊した」


「今行きます」


「壊してない」


 結衣さんの声もしました。


「久世くん」


「何?」


「お願いします」


「うん。こっちは任せて」


 私は居間へ向かいました。


 道の途中に、黄色い積み木が三つ置かれていました。


「結衣さん、ここは道ですよ」


「はな」


「花は横だって言ったのに」


 悠人さんが困った顔をしています。


「結衣さんは、たくさん花を置きたかったんですね」


「いっぱい」


「でも、道を通れなくしてはいけません」


「じゃあ、こうしよう」


 悠人さんは黄色い積み木を一つずつ道の端へ動かしました。


「こっちが花のところ」


「いっぱい?」


「いっぱいでいいよ」


「やった」


 結衣さんも手伝い、道の横に黄色い積み木を並べました。


 台所から、包丁の音が聞こえていました。


 一定の速さで続く音でした。


 昼食は、卵と細かく切った野菜を入れた料理でした。


 食卓には椅子が四つありました。


 大人用が二つ。


 子ども用が二つ。


 皿も四枚。


 飲み物の入った器も四つ。


「いただきます」


 直哉が言いました。


 私も続きました。


「いただきます」


「いただきます」


 悠人さんはきちんと手を合わせました。


 結衣さんは、すぐに匙を持ちました。


「結衣さん」


「いただきます」


「まだ言っていませんよ」


「いま、いう」


「では、言ってください」


「いただきます」


 四人で食事を始めました。


 悠人さんは一口食べ、しばらく黙っていました。


 直哉が心配そうに見ています。


「どう?」


「葉っぱ、小さい」


「日向さんに言われたから」


「食べられる」


「よかった」


 結衣さんも口へ運びました。


「おいしい?」


 直哉が尋ねました。


「きいろ」


「黄色?」


「たまご」


「ああ、卵」


「おいしいですか」


 私が聞くと、結衣さんはうなずきました。


「おいしい」


 直哉は安心したように息を吐きました。


「久世くん」


「何?」


「おいしいです」


「日向さんまで心配しなくていいよ」


「伝えた方がよいと思いました」


「ありがとう」


 食事が終わると、私は皿を重ねました。


 立ち上がろうとすると、直哉が先に皿へ手を伸ばしました。


「私が洗います」


「いいよ」


「作ってもらいましたから」


「今日は二人のこともあるし、日向さんも荷物を片付けたりするだろ」


「洗い物くらいできます」


「僕もできるよ」


 直哉は四枚の皿を持ち上げました。


「いつもやってることだから、気にしなくていい」


「でも」


「その代わり、二人に新しい洗面所の使い方を教えてあげて。僕だと、普段と違うところが分からないから」


 そう言われると、断れませんでした。


「分かりました」


「お願いします」


 直哉は、当然のように台所へ皿を運びました。


 私は悠人さんと結衣さんを洗面所へ連れていきました。


 踏み台の使い方。


 タオルの場所。


 歯ブラシの色。


 結衣さんは黄色い歯ブラシを見つけると、嬉しそうに手に取りました。


「まだ使いませんよ」


「あと?」


「食後ですから、今使いましょう」


「いま?」


「はい」


「あとじゃない?」


「今です」


 結衣さんには、時間の説明が難しいようでした。


 悠人さんは青い歯ブラシを取りました。


「これ、僕の?」


「そうだと思います」


「久世さんのは?」


「こちらでしょう」


「日向さんは?」


「これです」


 四本の歯ブラシを、悠人さんが順番に指しました。


「四人の」


「そうですね」


「みんな、ここ?」


「ここで使います」


「明日も?」


「明日もです」


「その次も?」


「その次もです」


 悠人さんは鏡の中の四本を見てから、歯を磨き始めました。


 午後は荷物を片付けました。


 悠人さんと結衣さんの衣類を、二人の部屋の棚へ入れます。


 乗り物の絵本と動物の絵本は、低い棚へ並べました。


 黄色い髪留めは、結衣さんが自分で棚の上へ置きました。


「ここ?」


「なくさないなら、そこでいいですよ」


「なくさない」


「使ったあとは、必ずここへ戻しましょう」


「もどす」


 悠人さんは、持ってきた小さな車を積み木の道へ置きました。


「走れる」


「よかったですね」


「センターの積み木より大きい」


「少し形が違いますね」


「でも、道は作れる」


「はい」


 直哉は空になったケースをまとめていました。


 洗濯物を入れる場所や、着替えの置き方を私に尋ねました。


 私はセンターでしていた通りに説明しました。


「じゃあ、ここに籠を置いた方がいい?」


「そうですね」


「あとで買ってくるよ」


「私が行きます」


「場所、まだ分からないだろ」


「教えてもらえれば」


「今日は僕が行く。次から一緒に行こう」


 次から。


 その言葉が、自然に使われていました。


 夕食も直哉が作りました。


 昼より少し手のかかる料理でした。


 私が手伝おうとすると、今度は野菜を洗うよう頼まれました。


 直哉が切り、私が洗いました。


 悠人さんと結衣さんは、食卓からこちらを見ていました。


「二人で作ってる」


 悠人さんが言いました。


「そうですね」


「僕もする」


「今日は見ていてください」


「次は?」


「簡単なことなら、お願いしましょうか」


「混ぜるのがいい」


「では、今度お願いします」


「今度」


 結衣さんも繰り返しました。


「はな、買う?」


「花の髪留めですか」


「日向さんの」


 以前、店で話したことを覚えていたようでした。


「今は食事の話をしています」


「こんど」


「そうですね。今度、見に行きましょう」


 直哉が私を見ました。


「何の話?」


「結衣さんが、私にも花の髪留めを買うと言っているんです」


「いいんじゃない」


「私には必要ありません」


「似合うかもしれないよ」


「久世くんまで言わないでください」


 直哉が笑いました。


 その笑い方は、昔とあまり変わっていませんでした。


 夕食も四人で食べました。


 昼より会話が増えました。


 悠人さんは、積み木の道を明日はもっと長くすると話しました。


 結衣さんは、黄色いものを見つけるたびに指を差しました。


 直哉は二人の話を聞きながら、時々私に意味を尋ねました。


 食事が終わると、また直哉が皿を重ねました。


「今度こそ私が洗います」


「今日はいいって」


「昼も洗ってもらいました」


「四人分になっても、それほど変わらないよ」


「一人分とは違います」


「でも、日向さんはこれから二人を風呂に入れるんだろ」


「はい」


「じゃあ、そっちをお願いする。僕は洗い物と、寝る準備をしておくから」


 直哉はもう袖をまくっていました。


「毎日、久世くんがする必要はありません」


「日向さんが全部する必要もないよ」


「私は二人の担当者です」


「うん。だから二人のことは日向さんに聞く。でも、ここで暮らすためのことは、僕もやるよ」


 直哉は皿を台所へ運びました。


「一緒に暮らすんだから」


 私は何も言えませんでした。


 悠人さんが、洗面所の方から呼びました。


「日向さん、結衣さんが服脱いでる」


「今行きます」


 結衣さんは、まだ入浴の準備をしていないのに、上の服を脱ごうとしていました。


「待ってください」


「おふろ」


「順番があります」


「いま」


「まず着替えを用意します」


「あと?」


「お風呂は今です。着替えるのはあとです」


 やはり、説明は難しいままでした。


 新しい浴室に、二人は興奮していました。


 悠人さんはセンターより広いと言い、結衣さんは何度も湯をすくいました。


 私は二人が滑らないように見ながら、体と髪を洗いました。


 台所から水の音が聞こえていました。


 直哉が、四人分の食器を洗っています。


 入浴を終えると、二人の部屋には寝具が整えられていました。


 直哉が用意したのでしょう。


 悠人さんの乗り物の絵本は青い寝具の上。


 結衣さんの動物の絵本は黄色い寝具の上。


 黄色い髪留めは、棚の上に戻されていました。


「久世さんが置いた?」


 悠人さんが尋ねました。


「そうだと思います」


「間違ってない」


「よかったですね」


 私は二人を寝具へ入れました。


 けれど、結衣さんはすぐに起き上がりました。


「日向さんは?」


「ここにいますよ」


「ねる?」


「結衣さんが眠るまで、そばにいます」


「ここで?」


「はい」


 悠人さんも、こちらを見ました。


「日向さんの部屋、隣だよ」


「そうですね」


「一人で寝る?」


「今日は、二人と一緒にいます」


「明日は?」


「明日のことは、明日決めます」


「また決まってない」


「まだ初日ですから」


 私は二つの寝台の間に座り、乗り物の絵本を開きました。


「どちらの本から読みますか」


「車」


「いぬ」


 二人の答えは違いました。


「では、一冊ずつ読みましょう」


「車が先」


「いぬ」


「交代です」


「今日は僕」


「いぬ」


「では、短い方からにしましょう」


 動物の絵本を先に読むことになりました。


 見慣れない天井。


 新しい寝具。


 廊下から聞こえる、直哉が歩く音。


 二人は何度も目を開けました。


 それでも、絵本を二冊読み終える頃には、結衣さんの目は閉じていました。


 悠人さんは、まだ起きていました。


「日向さん」


「はい」


「明日もここ?」


「はい」


「久世さんも?」


「いますよ」


「四人?」


「四人です」


「ずっと?」


 私は少しだけ迷いました。


 ずっとという言葉を、簡単に使うことはできませんでした。


「明日も四人です」


「その次は?」


「その次も、四人だと思います」


「じゃあ、いい」


 悠人さんは目を閉じました。


 しばらくすると、寝息が聞こえ始めました。


 私は二人の間に座ったまま、その音を聞いていました。


 センターでも、毎晩聞いていた音でした。


 けれど、部屋が違います。


 扉の向こうには、直哉がいます。


 私は静かに立ち上がりました。


 廊下へ出ると、居間の明かりがついていました。


 直哉は、洗った食器を棚へ戻しているところでした。


「眠った?」


「はい。少し時間がかかりました」


「やっぱり、知らない場所だと難しい?」


「今日は仕方ありません」


「日向さんも、あっちで寝る?」


「そのつもりです」


「分かった。寝具、追加で持っていくよ」


「自分でできます」


「場所が分からないだろ」


「教えてください」


 直哉は少し笑いました。


「じゃあ、一緒に持っていこう」


 棚から寝具を取り出し、二人で子どもたちの部屋へ運びました。


 床へ敷くと、直哉は眠っている二人を見ました。


「本当に来たんだな」


「久世くんが迎えに来たんですよ」


「そうだけど、まだ少し変な感じがする」


「私もです」


 部屋を出る前に、直哉が小さな声で言いました。


「日向さんの部屋も、好きに使っていいから」


「はい」


「足りないものがあったら言って」


「十分にあります」


「何もなさすぎるだろ」


「持ってきたものが少ないので」


「これから増やせばいいよ」


 直哉は、それだけ言って廊下へ出ました。


「おやすみ、日向さん」


「おやすみなさい、久世くん」


 私は自分の部屋へ入りました。


 机の上には、悠人さんの絵が置かれていました。


 まだ壁へ飾るものはありません。


 棚も空いたままです。


 私は絵を手に取り、机の端へ置き直しました。


 部屋の外から、水の音が聞こえました。


 直哉が、台所に残っていたものを洗っているようでした。


 私が使った皿。


 悠人さんと結衣さんの小さな皿。


 直哉の皿。


 四人分の食器を洗う音でした。


 その音を聞きながら、私は悠人さんの絵を、もう一度だけまっすぐに置きました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ