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転生したけど、ただの高校生やってます  作者: 岸波
転生と、静かな始まり
10/10

少しだけ、特別な約束

日常は、ほんの少しのきっかけで形を変える。


それは大げさな出来事じゃなくてもいい。

たった一言、たった一つの約束が、

いつもの時間に“特別”という意味を与えていく。


図書室で過ごす静かな放課後。

その中で育まれてきた九條とほのかの距離は、

ゆっくりと、でも確かに変わり始めていた。


そして今回――

その関係に、小さな一歩が加わる。


“誰かと過ごす時間”を、自分から選ぶこと。

それは簡単なようで、少しだけ勇気のいること。


何気ない誘いと、交わされる約束。

その先にあるものはまだわからないけれど――


確実に、二人の物語は次の段階へ進み始める。


そんな一日の始まりを、どうぞご覧ください。

第10話:「少しだけ、特別な約束」


放課後。

教室の窓から差し込む夕方の光が、机をオレンジ色に染めていた。


俺は鞄を持ちながら、少しだけ迷っていた。


――図書室、行くか。


考えるまでもないのに、なぜか一瞬だけ立ち止まる。

その理由は、多分わかっている。


最近の時間が、少しだけ“特別”になってきているからだ。


図書室の扉を開けると、

ほのかはいつもの席に座っていた。


「九條くん」


俺に気づくと、柔らかく微笑む。


「今日も来てくれたんだね」


「まあ、いつものことだろ」


そう言いながら席に座ると、

ほのかは少しだけ視線を泳がせた。


「……あのね、九條くん」


「ん?」


いつもより、少しだけ緊張している声。


「お願いがあるんだけど……いいかな?」


その言葉に、自然と背筋が伸びる。


「内容によるな」


「そんな大したことじゃないよ」


ほのかは小さく笑ってから、少しだけ間を置いた。


「今度の土曜日……もしよかったら、一緒に本屋さん行かない?」


――本屋。


思っていたよりずっと“普通”の誘い。

でも、それが逆に胸に響いた。


「……二人で?」


「うん」


迷いのない答えだった。


心臓が、少しだけ早くなる。


これはただの外出か?

それとも――


「……いいよ」


気づけば、答えていた。


ほのかの表情がぱっと明るくなる。


「ほんと?」


「断る理由ないしな」


なるべくいつも通りを装って答えると、

ほのかは少しだけ安心したように息をついた。


「よかった……」


「そんなに不安だったのか?」


「うん。ちょっとだけ」


ほのかは指先で本の端をなぞりながら言う。


「誰かを誘うのって、あんまり慣れてなくて」


その言葉に、自然と口が開く。


「俺も似たようなもんだ」


「そうなの?」


「まあな。だから――ちょうどいいだろ」


ぎこちないけど、それでいい気がした。


「じゃあ……約束ね」


ほのかはそう言って、小さく手を差し出した。


一瞬、どうするか迷う。


でも、その手を無視する理由なんてない。


俺は軽くその手に触れた。


「……約束だ」


ほんの一瞬の接触。

それだけなのに、不思議と温かさが残る。


帰り道。

今日は一人で歩きながら、何度もその言葉を思い出していた。


――土曜日。


たったそれだけの予定なのに、

いつもの日常とは違う意味を持っている気がする。


「約束、か……」


前世では、こんな風に誰かと約束をすることなんて、ほとんどなかった。


だからこそ、今のこの感覚が新しい。


少しだけ楽しみで、少しだけ緊張する。


———


翌日。

教室に入ると、藤井がすぐに気づいて声をかけてきた。


「お、九條。なんか今日機嫌よくない?」


「別に普通だろ」


「いや絶対なんかあっただろ」


藤井はじっとこちらを見る。


「図書室関連だな?」


「……さあな」


はぐらかすと、藤井はニヤッと笑った。


「まあいいや。そういう顔、嫌いじゃないけどな」


席に座りながら、ふと思う。


“普通に過ごす”だけだったはずの毎日。

でも今は、その中に小さな約束が増えている。


それがどんな意味を持つのかは、まだわからない。


けれど――


少なくとも、その日が来るのを、

少しだけ楽しみにしている自分がいた。



次回予告:

第11話「初めての寄り道」

土曜日、本屋での時間が二人の関係をさらに動かします。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!


第10話では、ついに二人の間に“約束”が生まれました。

これまでの積み重ねがあったからこそ成立した、自然でありながらも大きな一歩です。


「一緒に本屋へ行く」――

内容だけ見ればとてもシンプルなものですが、

ほのかにとっては“自分から誰かを誘う”という大きな挑戦であり、

九條にとっても“誰かとの時間を楽しみにする”という変化の象徴でもあります。


また、今回は「手に触れる」というさりげないシーンも入れました。

大げさではないけれど、確実に距離が縮まったことを感じられる瞬間として描いています。


二人の関係はまだ名前のつかない段階ですが、

だからこそ、一つひとつの出来事に意味が生まれていく。

そんな“青春の途中”を大切にしていきたいと思っています。


次回はいよいよ土曜日。

二人での初めての寄り道――いわゆる“デート回”です。

少しだけ特別な時間の中で、どんな会話や気持ちが生まれるのか、ぜひお楽しみに。


これからもゆっくりと進んでいく二人の物語を、よろしくお願いします!

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