第四十八章 家の中のお金
年が変わった。
正月の三日目、周の家には親戚が何人か集まった。
大きな食卓ではない。
料理を並べると、皿と茶碗がほとんど隙間なく置かれた。
劉は台所と食卓を何度も往復した。
「もう少し食べなさい。」
「食べてるよ。」
「それだけじゃ足りない。」
「十分だって。」
いつものやり取りだった。
しばらくして、話題が仕事のことになった。
張の息子が去年仕事を変えたこと。
李の甥が別の町へ引っ越したこと。
誰かの娘が結婚して、家を買ったこと。
話は自然にお金の話へ移っていった。
「今の若い人は、家を買うのも大変だな。」
親戚の一人が言った。
「昔とは違うからね。」
劉が答えた。
「でも、親が少し出してあげればいいんじゃない?」
別の親戚が言った。
「出せるならね。」
周が言った。
「うちだって、昔はできるだけ出した。」
「息子さんの家にも?」
「結婚するときは出したよ。」
「じゃあ、今も出してる?」
「今は出してない。」
「なんで?」
周は少し考えた。
「必要だと言われてないから。」
親戚は笑った。
「親なんだから、言われなくても助ければいいじゃない。」
周は何も言わなかった。
劉が皿を置きながら、
「うちは、もう大人だからね。」
と言った。
それ以上、話は続かなかった。
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食事が終わると、周は一人で食器を片付けた。
昔なら、息子の生活費や結婚費用について、もっと細かく考えていただろう。
家を買うならいくら必要か。
車を買うならいくらかかるか。
結婚式にはいくらかかるか。
親がどこまで出すべきなのか。
今でも、考えることはある。
ただ、以前とは少し違っていた。
「出せるお金」と「出すお金」は同じではない。
そして、
「出したお金」と「決める権利」も同じではない。
周はそこまで考えてから、蛇口を閉めた。
台所が静かになった。
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その夜、息子から電話が来た。
「父さん、正月どうだった?」
「人が多かった。」
「そう。」
「そっちは?」
「こっちは仕事。」
「正月も?」
「少しだけ。」
周は笑った。
「大変だな。」
「まあ、仕方ない。」
少し話してから、息子が言った。
「そういえば、前に出してくれたお金、まだ覚えてる?」
「何のお金だ?」
「家のとき。」
「ああ。」
「ありがとう。」
周は黙った。
「急にどうした?」
「いや、なんとなく。」
「そうか。」
「今は、自分で少しずつ貯めてる。」
「そうか。」
「もし何かあっても、できるだけ自分でやるつもり。」
周はしばらく黙った。
それから、
「無理して全部一人でやる必要もないぞ。」
と言った。
「うん。」
「必要になったら言えばいい。」
「分かった。」
電話を切った。
周はスマートフォンをテーブルの上に置いた。
劉が隣の部屋から顔を出した。
「何の話?」
「お金の話。」
「また?」
「ちょっとだけ。」
劉は椅子に座った。
「子どもにお金を出すって、難しいね。」
「そうだな。」
「出さなかったら、冷たいと思われるかもしれない。」
「出しすぎても、口を出したくなる。」
「それもそう。」
二人は顔を見合わせた。
「じゃあ、どうする?」
劉が聞いた。
周は少し笑った。
「その時になってから考えるしかないだろ。」
劉も笑った。
「そうだね。」
窓の外では、正月の飾りが風で少し揺れていた。
家の中には、まだ食事の匂いが残っていた。
お金の話は、家族の中から消えることはない。
けれど、同じお金でも、渡す時期や理由によって意味は変わる。
周はそれを考えながら、明日の買い物のことを劉と話し始めた。
魚を買うか。
肉にするか。
それくらいの話だった。




