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家にいる人  作者: 亀


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第一百一十三章 集まる人

七月の終わり、昔の仕事仲間から連絡が来た。


「土曜日、みんなで飯を食べることになった」


周は電話を持ったまま、カレンダーを見た。


「何人くらい来る?」


「まだ分からない。五、六人かな」


「場所は?」


「前に行ってた店」


周は少し考えた。


その店には、もう十年以上行っていない。


「分かった。行くよ」


電話を切ると、劉が聞いた。


「誰と会うの?」


「昔の仕事仲間」


「何人?」


「五、六人くらい」


「みんなまだ近くにいるの?」


「分からない。何人かは別の町に行ったって」


劉は頷いた。


「久しぶりだね」


「そうだな」


土曜日になった。


昼過ぎ、周はシャツを着替えた。


鏡を見る。


以前より白髪が増えている。


「不用意に飲みすぎないでね」


劉が言った。


「そんなに飲まないよ」


「前もそう言ってた」


「前っていつだ?」


「いつだったかな」


二人で笑った。


店に着くと、すでに三人が来ていた。


「周!」


「久しぶり」


肩を叩かれた。


昔と同じような挨拶だった。


周は一人ずつ顔を見た。


名前はすぐに出てこない人もいた。


けれど、話し始めると少しずつ思い出した。


「あの時、周さんが機械を止めたんだよな」


「止めないと危なかったからな」


「上の人、すごく怒ってた」


「覚えてるよ」


「俺は怒られると思って逃げた」


みんなが笑った。


昔の仕事の話は、細かいところまで覚えている人もいれば、まったく覚えていない人もいた。


そのうち、別の町で働いている人が来た。


「遅くなった」


「まだ始まったばかりだ」


「仕事が長引いた」


「今も同じ仕事?」


「いや、三年前に辞めた」


「そうなのか」


「体がきつくなってな」


その人は今、物流関係の仕事をしていると言った。


「給料は前より少し下がったけど、夜勤がなくなった」


「それなら楽になったな」


「楽というか、生活が普通になった」


周はその言葉を聞いていた。


別の人は、


「俺は逆に、夜勤のある仕事に変わった」


と言った。


「給料がいいから」


「体は大丈夫か?」


「今は大丈夫」


同じ年代でも、選んだ仕事は違っていた。


誰かは給料を優先し、誰かは時間を優先している。


誰かは家の近くを選び、誰かは遠くても仕事の条件を選んでいる。


話を聞いているうちに、周は昔の職場にいた頃のことを思い出した。


毎朝同じ時間に出勤し、同じ機械の音を聞いていた。


当時は、それがずっと続くような気がしていた。


けれど、十年経てば、人も仕事も変わっている。


食事の途中で、一人が周に聞いた。


「息子さん、今何してる?」


「会社勤めだよ」


「結婚した?」


周は少し笑った。


「してる」


「子どもは?」


「まだ聞いてない」


「そうか」


それ以上、その人は聞かなかった。


別の人が自分の娘の話を始めた。


娘は大学を卒業してから二度仕事を変え、今は別の町で暮らしているという。


「最初は、何でそんなに変えるんだと思ったよ」


「今は?」


「今は本人に任せてる」


「変わったな」


「俺も年取ったからな」


みんなが笑った。


食事が終わるころには、昔の話より今の話の方が多くなっていた。


誰かの親が病院に通っている。


誰かの妻が仕事を始めた。


誰かの子どもが学校を卒業した。


誰かはまだ働いている。


誰かは仕事を辞めている。


誰かは仕事を変えようとしている。


生活は、同じ場所にいる人だけでできているわけではない。


周はそんなことを考えながら、店を出た。


外はまだ暑かった。


駅まで歩く途中で、昔の同僚の一人と二人きりになった。


「周さん、最近どう?」


「普通だよ」


「体は?」


「少し腰が悪い」


「俺もだよ」


二人は笑った。


「また集まろう」


「うん」


「でも、次はいつになるか分からないな」


「そうだな」


その人は駅の反対方向へ歩いていった。


周は一人で駅へ向かった。


家に着くと、劉が夕食を準備していた。


「どうだった?」


「久しぶりで面白かった」


「何か変わった?」


「みんな変わってた」


「あなたもでしょ」


周は靴を脱ぎながら笑った。


「そうかもしれない」


食事のあと、周はスマートフォンを見た。


今日会った一人から、写真が送られてきていた。


店の前で撮った集合写真だった。


周は写真を拡大した。


若い頃の顔を知っている人たちが、今はそれぞれ違う顔をしている。


昔の写真ではない。


今日の写真だった。


周はそれを保存した。


翌朝、庭へ出ると、白い花はもうほとんど残っていなかった。


昨日まであった花びらが、土の上に落ちている。


その代わり、茎の先には小さな実のようなものがいくつか残っていた。


周はしゃがんで、それを見た。


何になるのかは、まだ分からない。


周は水をやらず、そのまま家へ戻った。


台所から劉の声がする。


「朝ご飯できたよ」


「今行く」


周は庭を振り返った。


昨日会った人たちも、今日はそれぞれの家で、それぞれの朝を迎えている。


周も自分の朝へ戻った。

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