6.二匹、解す
真白き朝のこと。
山盛りの灰をせっせと掘って、二匹はやっと珠を見つけ出した。
例のごとく半分に割り、例の如く口に放れば、もうこんなところに用はない。
珠を喰った後も、そう辛くはなくなってきた。
だいぶ妖気が身に馴染み、あたかも大妖のごとき気分をかもし出す二匹であった。
「にしても、なぜにキクリは百年待てと言ったのだろうな」
街道へ戻った頃に、太郎がぼやいた。
「山桃に転生するということならば、芽が出たところで叶っておろうに。なぜ百年も待てと言うたのか」
すると、すっかり調子の戻ったいち子が鼻で笑う。
「そんなん、復讐に決まっとろう」
「復讐?」
「ほうじゃ。人が木などに転生するわけなかろ。要はあの化け物に、どっこも行かせず何もさせず、百年待ちぼうけさせ殺したかったのじゃろう。それが目論見はずれて、奴が千年も生きてしもうただけじゃ」
「キクリは百目を恨んでいたと? 百目や婆の言い様じゃ、そうではなさそに思えたが」
「そんなん、犯した者と殺した者の言い分やろうが。女に非があったと言い逃れするためじゃ。キクリは化け物の子を宿されたから捨てられた。恨めしくないわけがない。憎まずにおれるはずがない」
「ぬしの母が、そうだったのか?」
「・・・うん」
途端にうつむいたいち子の背を、太郎は軽く叩いてやった。
「落ち込むな。いずれ、ぬしの父は必ず殺そう。それで良い。それでぬしの母は浮かばれる。たとえ恨みがぬしにまで及んでおったとしても、なに、そこまで気にするこたぁない」
いち子は顔上げた。
そこへ太郎は歯を見せた。
「なあいち子、俺はぬしが生まれて良かったぞ。ぬしが生きておって嬉しいぞ。そんなもんで万事良しとしておこうじゃないか」
「・・・あんた、よっぽどの自信家やな」
呆れたいち子は肩を竦めた。
「ええわ。いちいち沈むもバカらし。うちもあんたみたく、お気楽に生きよ」
「もう十分そうじゃと思うが」
「やかましなあ」
ころりと、いち子は笑って歩を早める。
互いの影をじゃれ合わせつつ、二匹はさぱっと次の大妖を目指し行くのであった。




