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狐狸の千年天下取り  作者: 日生
三章 百目巨人
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6.二匹、解す

 真白き朝のこと。

 

 山盛りの灰をせっせと掘って、二匹はやっと珠を見つけ出した。


 例のごとく半分に割り、例の如く口に放れば、もうこんなところに用はない。


 珠を喰った後も、そう辛くはなくなってきた。

 だいぶ妖気が身に馴染み、あたかも大妖のごとき気分をかもし出す二匹であった。


「にしても、なぜにキクリは百年待てと言ったのだろうな」


 街道へ戻った頃に、太郎がぼやいた。


「山桃に転生するということならば、芽が出たところで叶っておろうに。なぜ百年も待てと言うたのか」


 すると、すっかり調子の戻ったいち子が鼻で笑う。


「そんなん、復讐に決まっとろう」


「復讐?」


「ほうじゃ。人が木などに転生するわけなかろ。要はあの化け物に、どっこも行かせず何もさせず、百年待ちぼうけさせ殺したかったのじゃろう。それが目論見はずれて、奴が千年も生きてしもうただけじゃ」


「キクリは百目を恨んでいたと? 百目や婆の言い様じゃ、そうではなさそに思えたが」


「そんなん、犯した者と殺した者の言い分やろうが。女に非があったと言い逃れするためじゃ。キクリは化け物の子を宿されたから捨てられた。恨めしくないわけがない。憎まずにおれるはずがない」


「ぬしのかかが、そうだったのか?」


「・・・うん」


 途端にうつむいたいち子の背を、太郎は軽く叩いてやった。


「落ち込むな。いずれ、ぬしのととは必ず殺そう。それで良い。それでぬしのかかは浮かばれる。たとえ恨みがぬしにまで及んでおったとしても、なに、そこまで気にするこたぁない」


 いち子は顔上げた。

 そこへ太郎は歯を見せた。


「なあいち子、俺はぬしが生まれて良かったぞ。ぬしが生きておって嬉しいぞ。そんなもんで万事良しとしておこうじゃないか」


「・・・あんた、よっぽどの自信家やな」


 呆れたいち子は肩を竦めた。


「ええわ。いちいち沈むもバカらし。うちもあんたみたく、お気楽に生きよ」


「もう十分そうじゃと思うが」


「やかましなあ」

 

 ころりと、いち子は笑って歩を早める。


 互いの影をじゃれ合わせつつ、二匹はさぱっと次の大妖を目指し行くのであった。

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