折角の牡丹餅を譲るつもりもな
何か言わなければと口を開いた時に、ドタバタッ!と言う効果音が聞こえてきそうな勢いで扉が開いた。そして
「ナギがまたいなくなった!!」
護衛としてそばにいた風見を撒いて、再びナギは姿を消したのだった。
「今頃、怒ってるだろうなぁ」
とソファーで項垂れながら呟く私にラプライアスは溜息を吐いた。
「毎度、後処理ばかり押し付けていれば、いずれ愛想を尽かされるぞ」
「……」
痛い所を突かれ、私は渋い顔をした。確かに、立て続けに後始末を丸投げしてしまっており、とても申し訳なく思っているーーーだが!
「私だって遊んでいるわけではないし…。なんならアルカナの人権獲得の立役者は私だって事、みんな忘れてるよね…」
「ただしその後はシルフィードやルカ達に丸投げして、現在に至ると言う事も忘れてはおるまいな」
「……」
これってエンドレスになる?とようやく気付き、私は無言でそばにあったクッションに顔を埋めた。その様子にラプライアスは呆れた表情を向ける。
が!
「…処分に困っていたドライアイスを活用してやったんだから、感謝されてもいいと思うんだけどなぁ」
と、私は爆弾を投下したのだった。
ライデンフロスト現象というものを知っているだろうか。
高温の物体に液体を近づけると、液体の下面が瞬時に蒸発し、液体と高温物体との間に蒸気の膜が形成される。この蒸気の膜によって液体が浮き、熱伝導が抑制される現象をライデンフロスト現象と言う。例えば熱したフライパンに数滴の水を垂らすと、すぐには蒸発せず玉のような形で浮遊・滑走する。これもライデンフロスト現象の一つだ。
「ライデンフロスト現象を応用してドライアイスの塊を高速回転させ、その回転運動を磁石やコイルに利用し電磁誘導を起こして発電する。効率やコスト面から火の国では実用化が見送りになったがゆえに、研究用に確保していた多量のドライアイスを抱え込んでいたことを忘れたのか?」
私の言葉に口を噤んだラプライアス。そんな様子に私は「あと…」と言葉を続ける。
「ファータを丸投げするつもりはないよーーー折角の牡丹餅を譲るつもりもな」
転んでもただでは起きない。否応なくして、福を得たり。そう言わんばかりの、意地の悪い笑みを私は浮かべたのだった。




