小噺
久しぶりの小噺。ルカ視点です。
時は少し遡り、ナギが再びいなくなるまでの間の事。
ナギが戻ってきた事により、復活した事がある。それはーーー
「今日のおやつはなんだろう?」
そう、休憩時間である。午後3時になった瞬間、ナギは手を止めて立ち上がった。そしてご機嫌な様子で休憩室に向かう。
冷蔵庫を開けて、ナギは歓喜の声を上げた。
「羊羹だ!!しかも蒸し羊羹!」
練りもいいけど、蒸しの方が特に好きなんだよね、と言いながら、すでに人数分に取り分けられている羊羹を取り出す。
…うん、知ってる。なにせ用意したのは俺だから。
と、心の中で呟きつつ、俺は飲み物の準備をした。
煎茶の香りと、羊羹の甘味にナギは幸せそうな表情を浮かべる。
「羊羹ってさぁ、もとは羊のスープから来てるんだよね」
「スープから?検討もつかないんだが」
「正しくは、羊の羹が冷えて出来た、煮こごりの料理かららしいよ」
「だから羊羹って書くのか。けど、それがどうして小豆になったんだ?」
俺の疑問に、ナギはお茶を一口飲んでから答えた。
「どっかの国に伝わる時、時代や宗教的な問題で肉類がダメだったんだって。だから動物性タンパク質の代わりに植物性タンパク質そして、ゼラチンの代用として寒天が採用されたらしい」
「動物性蛋白質を植物性蛋白質に置き換えると言う理屈は分かるが、大豆じゃダメなのか?」
「大豆だと、お豆腐と変わらないとでも思ったんじゃない?」
そう言いながら、もう一口。一切れ食べるごとに幸せそうな表情を浮かべなから、ナギは菓子切りを持つ手を回した。
「ちなみに、この前の事件なんだけど」
「ちょっと待て、どれの事だ?」
「憑依事件」
「あぁ…桃塗れ事件な」
そうそう、とナギは頷く。
「実は桃以外にも魔除けとなる食べ物は、他にもある」
「…おい、まさか」
「小豆があの高さから落ちたら、流石に怖いよね」
怖いと言うか、痛いと言うか…実行する俺だって嫌だわ。
ジト目を向けると、ナギは「更にね」と、追い討ちをかけてきた。
「この菓子切り、黒文字って言うんだけど、これも魔除けの効果があるとされているんだ」
ほら、桃塗れで良かったと思わない?と、笑顔を向けられ、俺は改めてナギの優しさーーーもとい、怖さを悟ったのだった。
後日談
「魔除けと言っても、小豆や黒文字の対象は病魔だから、憑依事件では役に立たないんだけどね」




