『世界観ノート』序章(1/5)「なぜ、世界は拡がったのか」
雇い主はソファに腰かけ、端末の読者コメントを眺めている。
周りには誰もいない。
しばらく画面を見つめたあと、ポツポツと呟き始めた。
最近、こんなコメントをいただいた。
「彼女の“計画”って、結局何なんでしょう?」
……そうなんですよね。
実は、私も知りません。
『彼女の計画』を書き始めたとき、私は「彼女の計画」を知っていたわけではありません。
むしろ、彼女が誰なのかも分からなかった。
ただ、彼女の“計画”を追いかけてみたかった。
それだけなんだ。
ところが、物語を書いているうちに、別の場所が見えてきた。
別の時間が現れた。
別の人生が始まった。
そして、いつの間にか『彼女の計画』の外側に、いくつもの物語が存在するようになっていました。
不思議なことに、それらは完全に独立しているのに、どこかで繋がっている。
同じ名前。
似た熱。
別の席に残る沈黙。
最初から、そんな世界を作ろうとしていたわけではありません。
「彼女の計画」を追いかけていたら、世界の方が先に拡がってしまった。
だから今でも、私は彼女の“計画”を知りません。
たぶん、読者の皆さんと一緒に探しているのだと思います。
……さて。
では、この世界の拡がりについて、
博士を呼んで、
少しだけ、振り返ってみたいと思います。
――中継セクター世界観記録・終了。
『現象と哲学の狭間』
ひとつの答えを探して、
歩き始めた。
けれど、
辿り着くたびに、
そこには別の問いがあった。
世界は、
答えを見つけたから
拡がったのではない。
――問いを追い続けたから、
見えていなかった世界が現れたのかもしれない。




