20XX年 9月6日 MRI室に彼女を移送
完全に意識が消失したのを確認して、看護師は内線通話で連絡を入れる。
対象患者を、三人がかりでストレッチャーに乗せた。
拘束具を外しながら、意識確認。
大丈夫。完全に意識は消失している。
思ったより、手間は掛からなかった、と思う。
聞いていた話とは、大分違うようだ。なんだったのだろう。
対象患者の移送中に、他の看護師にも聞いてみたが、皆、同じように思っていたらしい。
「警察からは相当暴れるから注意するようにって聞かされてたけど……」
「思ってたより、ずっと大人しかったわね。お世話がしやすかったわ~」
「ほんと、可愛いし、素直だし……これはあまりにもひどい扱いだよね……」
MRI室に乗せるまで、おしゃべりは続いた。
看護師たちも、かなりの要注意人物と聞かされていたので、緊張の糸が解けたかのようだった。
~ ・ ~
「拘束しなくて、本当に大丈夫か?」
そう、同僚の医師に聞かれた男は、自信を持って頷いた。
「薬がしっかり効いているから、大丈夫だ」
かなり強い鎮静剤を処方し、看護師にもしっかり確認させ、自分の目でも確かめている。
MRIの撮像中どころか、今夜はもう目を覚まさないだろうという分量だ。
この手の患者は、もう幾十人と扱っている。彼はこの処方で失敗したことが無かった。
機械を起動させ、医師たちは別室に向かってモニターを開始した。




