20XX年 9月6日 病室内 意識が朦朧としている 彼女の見た夢
人狼が、私を抱きしめて、じっと見つめてくる。
「妹は、無事に帰して貰えたんですか?」
金色の瞳を睨み返しながら、私は彼に尋ねた。
「契約だからな。たがえると、お前は自由になるからな」
契約。私は、その言葉を信じるしかなかった。
「では、契約に基づき、お前を人狼の花嫁とする」
人狼の花嫁。
私は、自分がどうなるのかを知っている。
説明を受け、理解し、自分の意思で受け入れる。
たとえそれが、悪意に満ちたものであったとしても。
自分で決めた事だから。
人狼は私に口づけして、身体中を撫ぜ擦っていく。
その手はあくまで優しく、あくまでしなやかだった。
それは乱暴な、私を踏みにじるようなものではなかった。
何度も、何度も、私達は口づけを交わした。
彼の香り、体温、力強さ、優しさが、私の中に染み込んでいく。
安心して、身を委ね始める私。
人として、扱って貰える。
人として、愛して貰える。
人として、貴方のものになる。
私の身体は、貴方のものになる。
彼の唾液を何度も飲み干し。
やがて、彼の精を私の胎内に受け入れる準備が整う。
何度も、何度も、そう、何度も。
どれ位の時間が過ぎ去ったのか、もう、そんな感覚はない。
自分が自分でいることを考えることなど無いように。
私は、貴方の花嫁。
私は、人狼の花嫁。
私の、身も心も、それは貴方のもの。
だから。
私の身体が、貴方の其れに変化していく。
私の身体から、貴方のような黒い剛毛が生えてくる。
爪が鋭く伸び、口が牙のように固く強くなる。
瞳が金色に輝き、貴方のような耳が生え出てくる。
怖い。自分が変わっていくのが、怖い。
そんな私を、貴方は優しく、力強く、抱きしめてくれた。




