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宅建見習い栞の人情事件簿 〜転生したら昭和の不動産屋だったので、巻き込まれているうちに宅建過去問が解けるようになりました〜  作者: 条文小説
〈権利関係 配点14点/50点〉 債権

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[危険負担]現場編 燃えてなくなった家の代金を払え

挿絵(By みてみん)

 世の中には、なくなったものにお金を払えと言う人がいます。


 電車の切符なら、まだ分かります。


 映画も、見終われば映像は手元に残りません。


 食事だって、食べ終われば皿しか残らない。


 でも。


「建物は焼けてなくなりました。でも代金は全額払ってください」


 これは、さすがに話が違います。


 少なくとも私は、そう思います。


 そして、その朝。


 大槻不動産の応接机を挟んで、まさにその理屈が堂々と展開されていました。


「ですからね、もう契約は済んでるんですよ!」


 声を張り上げたのは、四十代くらいの男でした。


 名前は大森達也さん。


 駅から少し離れたところで小さな印刷会社を営んでいる社長さんです。


 その隣には奥さんらしい女性が座っていて、ハンカチを握ったまま青ざめています。


「契約書にも判を押しました。手付も百万円払いました。それは分かってるんです。でも……」


 大森さんはそこで言葉を詰まらせました。


「建物、もうないんですよ?」


 私は湯飲みを置きながら、ちらりと真壁さんを見ました。


 真壁さんも、ものすごく嫌そうな顔をしています。


 こういう顔をする時の真壁さんは、大体ろくでもない案件を嗅ぎつけています。


 犬なら鼻が利く。


 不動産屋なら面倒事に鼻が利く。


 できれば身につけたくない特殊能力です。


「最初から説明してください」


 所長の大槻さんが、低い声で言いました。


 別に怒鳴ってはいません。


 でも、事務所の空気が一段重くなる。


 この人、声量を上げずに圧力だけ上げることができます。


 便利ですね。


 主に相手が困ります。


「はい」


 大森さんが頷きました。


「先週、この町の北側にある旧・吉岡洋品店の建物を買う契約をしたんです。倉庫に改装して、印刷機を置こうと思って」


「土地付きですか?」


 真壁さんが聞きました。


「土地と建物です。ただ、価格は土地五百万円、建物七百万円という内訳になっています」


 合計千二百万円。


 契約日は八月二十二日。


 引渡しと残代金の支払いは九月十日。


 今日は八月二十九日。


 そして。


「二十六日の夜、雷が落ちたそうです」


 大森さんの声が低くなりました。


「火事になって……建物が全焼しました」


 私は思わず目を閉じました。


 ああ。


 来た。


 前世で宅建のテキストを読んでいた時、何度も見たやつです。


 契約成立後。


 引渡し前。


 売主にも買主にも責任がない。


 自然災害などで目的物が滅失。


 ――危険負担。


 試験問題の中では、


 A所有の甲建物が何月何日に滅失したとか、


 Bの責に帰すべき事由だとか、


 妙に無機質なアルファベットで処理される話です。


 でも実物になると全然違いました。


 焼けた建物には、人の予定が入っています。


 借金も入っています。


 事業計画も入っています。


 家族の生活まで入っている。


「売主は?」


 所長が聞きました。


「吉岡さんという方です。ただ、話は全部、仲介の黒沼不動産がやっています」


 黒沼不動産。


 その名前を聞いた瞬間、真壁さんが顔をしかめました。


「黒沼か……」


「知ってるんですか?」


「知ってる。契約書より声がでかい男だ」


 すごく分かりやすい人物紹介でした。


 大森さんが鞄から紙を取り出します。


「今朝、これが来たんです」


 私は受け取って目を通しました。


 通知書。


 内容は簡単でした。


 売買契約は有効に成立している。


 建物の焼失は売主の責任ではない。


 したがって買主は、予定どおり残代金千百万円を支払え。


「……千百万円?」


 私は顔を上げました。


「建物七百万円がなくなってるのに?」


「そうなんです!」


 大森さんが机を叩きました。


「土地は渡す。建物が焼けたのは誰のせいでもない。契約した以上、代金は払う義務がある、って」


「なるほど」


 私は通知書をもう一度見ました。


 文章だけ読むと、それっぽい。


 契約は成立している。


 売主は悪くない。


 だから買主は払う。


 ――うん。


 途中までは正しい。


 途中まで正しい理屈ほど、厄介なものはありません。


 一番騙されやすいからです。


「栞」


 真壁さんが小声で呼びました。


「どう思う」


「ずるいです」


「法律の話を聞いてる」


「法律的にもずるいです」


「そこ分けられるんだな」


 私は通知書を机に置きました。


「所長」


「何だ」


「黒沼さん、今日来てもらえませんか?」


 所長が私を見る。


「理由は?」


「たぶんこの人、三つの話を一緒くたにしてます」


「三つ?」


「契約が有効かどうか。建物を渡せるかどうか。そして代金を払わなきゃいけないかどうか」


 真壁さんの眉が上がりました。


 私は続けます。


「そこ、全部別の話です」


 所長は少しだけ目を細めました。


 それから電話を取りました。


「真壁。黒沼を呼べ」


「はい」


「今日中にな」


 そして付け加えます。


「逃げる前に」


「所長、怖いです」


「事実確認だ」


「言い方が刑事です」


 大森さんの奥さんが、そこで初めて少し笑いました。


      ◇


 午後二時。


 黒沼不動産の黒沼社長は、本当に声の大きい人でした。


「だから契約は契約でしょう!」


 入って三分で分かりました。


 本当に契約書より声がでかい。


 灰色のスーツ。


 金色の腕時計。


 太い指に大きな印鑑指輪。


 そして、こちらが何か言う前に畳みかけるタイプです。


「大森さんは売買契約書に判を押してる! 吉岡さんだって売る約束をした! 契約は成立してるんですよ!」


「そこは否定してません」


 私が言いました。


 黒沼さんがこちらを見る。


「……誰だね、君」


「事務見習いです」


「じゃあ大人の話に口を出さないでもらえるかな」


 出た。


 年齢で論点を潰すやつ。


 法律に年齢制限がなくて助かります。


「じゃあ、所長から同じ質問をしてもらいます」


「何?」


「建物は引き渡せますか?」


 所長が腕を組んだまま言いました。


「黒沼さん。答えてください」


 黒沼さんが少し詰まりました。


「……建物は焼けた」


「つまり?」


「渡せませんよ。だからそれは不可抗力だと言ってるんです!」


「はい」


 私は頷きました。


「そこも争ってません」


「だったら代金を――」


「だから、そこが飛んでるんです」


 私は遮りました。


 黒沼さんの顔が固まる。


「売主が悪くない」


「そうだ」


「買主も悪くない」


「そうだ」


「建物はなくなった」


「そうだ」


「だから売主は建物を渡せない」


「そうだよ!」


「では、どうして買主だけが七百万円を払うんですか?」


 黒沼さんの口が止まりました。


 事務所が静かになります。


 外を走る原付の音まで聞こえました。


 私はゆっくり言います。


「危険負担です」


 黒沼さんが眉を寄せました。


「何?」


「売主にも買主にも責任がない事情で、売主が建物を引き渡せなくなった」


 私は契約書を指しました。


「その場合、買主は、それに対応する代金の支払いを拒むことができます」


「だが契約は成立してる!」


「はい」


「だったら払う義務はあるだろう!」


「そこが違います」


 私は首を振りました。


「契約が有効であることと、反対側の代金を支払わなければならないことは、同じじゃありません」


「屁理屈だ!」


「法律です」


 真壁さんが吹き出しました。


「おい栞」


「何ですか」


「そこは少し手加減しろ」


「してます」


「今ので?」


 黒沼さんが机に身を乗り出しました。


「じゃあ何か? 吉岡さんは悪くないのに七百万円損しろっていうのか!」


「そういう問題だから、“危険負担”って名前なんです」


「……」


「誰も悪くない。でも、損失は発生した」


 私は少し声を落としました。


「その損失を、売主と買主のどちらに負担させるか。それを決めるルールです」


 黒沼さんは苛立った顔で椅子にもたれました。


「買主は契約したんだぞ」


「契約しました」


「建物を七百万円で買うと決めた」


「はい」


「なら払う!」


「建物を渡してもらう前提で、です」


 私は契約書を一度閉じました。


「建物を渡せないのに、代金だけ払えと言ったら、一方だけが丸損になります」


「吉岡さんだって丸損だ!」


「そうです」


 私は頷きました。


「だから悲しい話なんです」


 黒沼さんが怪訝な顔をしました。


「悲しい?」


「誰かが悪いなら、まだ責任を追及できます」


 雷が落ちた。


 火が出た。


 売主に落ち度はない。


 買主にもない。


「でも今回は、誰も悪くない」


 私は言いました。


「だから法律は、“誰が悪いか”じゃなくて、“どちらが危険を負担するか”を決めるんです」


 所長が静かに頷きました。


 黒沼さんはまだ納得していません。


「じゃあ土地はどうする」


 来た。


 私は待っていました。


「土地は残ってます」


「だろう!」


「はい」


「なら契約全部なくなるわけじゃない!」


「その通りです」


「……何?」


 勢いよく否定されるつもりだったのか、黒沼さんのほうが戸惑いました。


 私は契約書を開きます。


「今回、幸いにも価格が分けてあります」


 土地五百万円。


 建物七百万円。


「土地については引渡しができます。そこは別途、契約内容に沿って処理できます」


「じゃあ五百万は払うんだな」


 大森さんが不安そうにこちらを見ました。


 私は頷きます。


「大森さんが土地だけでも取得する意思があるなら、そこは話し合えます」


「……土地は欲しいです」


 大森さんが言いました。


「建物は建て直します。時間はかかるけど……あの場所で会社を広げたい気持ちは変わりません」


「では」


 私は黒沼さんを見る。


「土地五百万円の売買は進める。建物七百万円については、引渡し不能なので支払いを拒む」


「そんな都合のいい……」


「都合じゃありません」


 そこで初めて、所長が前へ出ました。


「黒沼さん」


 低い声でした。


「あなたの通知書には、残代金千百万円を予定どおり支払え、とある」


「……そうですよ」


「百万円の手付は、土地と建物の代金に充当する予定だな」


「そうだ」


「なら精算をやり直せ」


 所長は机の上の通知書を、黒沼さんの前へ滑らせました。


「燃えて存在しない建物まで売ったことにするな」


「……」


「不動産屋は、紙を売ってるんじゃない」


 黒沼さんが所長を見る。


「土地と建物を扱ってるんだ」


 静かな言葉でした。


 でも、重い。


 真壁さんが腕を組んだまま、うっすら笑っています。


 私は心の中で拍手しました。


 所長、こういう時だけ映画みたいな台詞を出すんですよね。


 普段は昼飯の蕎麦にネギが少ないとか言ってるのに。


「しかし……」


 黒沼さんはまだ引き下がりません。


「吉岡さんには何の責任もない。それなのに建物代を受け取れないんだぞ」


「はい」


 私はもう一度答えました。


「それが今回、売主側に残った危険です」


「買主側が負担する場合だってあるだろう!」


 私は少しだけ笑いました。


「あります」


 黒沼さんが勢いを取り戻す。


「ほら見ろ!」


「たとえば、買主の責任で建物が焼けた場合です」


「……」


 また止まりました。


 私は指を一本立てます。


「大森さんが引渡し前に勝手に建物を使って、暖房器具をつけっぱなしにして火事を出した、とか」


「してません!」


 大森さんが慌てて言いました。


「例です、例」


「びっくりしました……」


「そういうふうに、買主の責任で売主が引き渡せなくなったなら、買主は『建物がないから払わない』とは言えません」


 真壁さんが頷きました。


「自分で燃やしといて、ないから払いませんじゃ通らんわな」


「そうです」


「じゃあ今回は?」


「落雷」


「誰のせいでもない」


「はい」


 真壁さんが黒沼さんを見る。


「答え出たな」


 黒沼さんは黙り込みました。


 長い沈黙でした。


 やがて、彼は通知書を乱暴に鞄へしまいました。


「……吉岡さんと相談する」


「お願いします」


 所長が言います。


「大森さんを脅すような請求は、もうするな」


「脅してなんか――」


「千百万円払わなければ違約だと書いてある」


 黒沼さんが黙りました。


 所長の圧、二段階目です。


 便利だなあ。


 絶対欲しくはないけど。


「……分かりましたよ」


 黒沼さんは立ち上がりました。


 そして出口まで行ったところで、振り返ります。


「嬢ちゃん」


「はい」


「本当に事務見習いか?」


「はい」


「どこでそんな知識覚えた」


「夢で」


「馬鹿にしてるのか」


「いえ、本当に」


 私だって説明できません。


 前世で宅建の過去問に殴られ続けた結果、昭和に転生しました。


 そんなことを言ったら、危険負担より先に私の精神状態が問題になります。


 黒沼さんは「変なところだ」と吐き捨てるように言って帰っていきました。


 真壁さんが肩をすくめます。


「お前のせいで、うちの評判がまた一つ増えたな」


「何ですか、その評判」


「変な事務員がいる」


「事務見習いです」


「そこ大事か?」


「非常に」


 大森さん夫妻は、まだ呆然としていました。


「……本当に、千百万円払わなくていいんでしょうか」


 奥さんが恐る恐る聞きました。


 所長が答えます。


「少なくとも、黒沼の言うように『契約したから全部払え』という話ではありません」


「土地については、どうされます?」


 私が聞くと、大森さんは妻を見ました。


 奥さんはしばらく黙っていました。


 それから小さく頷きます。


「買いましょう」


「いいのか?」


「あなた、あそこ気に入ってたでしょう」


「でも建物を建て直す金が……」


「また働けばいいじゃない」


 奥さんは笑いました。


「印刷屋なんだから。紙ならいっぱいあるんでしょ」


「建物は紙じゃ建たないぞ」


「知ってます」


 夫婦で笑った。


 さっきまで青ざめていた二人が。


 その笑顔を見て、私はようやく肩の力が抜けました。


      ◇


 三日後。


 黒沼不動産から連絡が来ました。


 残代金千百万円の請求は撤回。


 建物代七百万円については請求しない。


 すでに払った手付百万円は土地代金に充当し、残り四百万円を支払って土地を引き渡す。


 そして、建物の売買部分については双方で整理する。


「片付いたな」


 真壁さんが電話を置きました。


「はい」


「しかしお前、よくすぐ危険負担なんて出てきたな」


「前世で死ぬほど間違えましたから」


「またその前世ってやつか」


「はい」


「前世では何だったんだ?」


「宅建受験生です」


「しょぼい前世だな」


「失礼ですね!」


 勇者とか魔法使いとかではありません。


 模試の点数を見て絶望するタイプの一般人です。


 でも、考えてみれば不思議でした。


 前世では、危険負担なんて嫌いな論点でした。


 誰の責任でもなく目的物が滅失。


 代金債務はどうなる。


 拒絶できる。


 買主の責任ならどうなる。


 拒絶できない。


 そんなものを、ただ丸暗記していた。


 問題文に「甲建物」と出ただけで、


 また燃えるの?


 また地震?


 宅建試験の建物、耐久性なさすぎない?


 なんて思っていたくらいです。


 でも今日。


 本当に建物がなくなりました。


 そして、そこには試験問題には書かれていないものがあった。


 大森さんが、その倉庫で仕事を広げようとしていたこと。


 奥さんが心配していたこと。


 売主の吉岡さんだって、悪くないこと。


 誰も悪くないのに、損だけが残ること。


 だから。


 危険負担。


 誰かを罰するためのルールではない。


 避けられなかった損失を、どちら側に置くか決めるためのルール。


「……法律って、変ですね」


 私が呟くと、真壁さんが缶コーヒーを開けながら言いました。


「何がだ」


「誰も悪くない時にも、必要なんですね」


「そりゃそうだろ」


「普通、法律って悪い人を裁くものって感じがするじゃないですか」


「刑事ドラマの見すぎだ」


「前世のテレビです」


「知らん」


 そこへ所長が新聞を畳みながら言いました。


「揉め事ってのはな、悪人がいるから起きるとは限らん」


「……」


「むしろ誰も悪くない時のほうが、納得するのが難しい」


 私は所長を見ました。


「吉岡さんは、悪くないのに建物を失った」


「はい」


「大森さんも悪くない」


「はい」


「だからこそ、決まりが要る」


 所長はそれだけ言って、また新聞を広げました。


 相変わらず説明が短い。


 でも時々、妙に腑に落ちることを言います。


 ずるい。


 私はまだ十八歳なので、もっと長々説明しないと格好がつきません。


「そういえば栞」


 真壁さんが言いました。


「はい?」


「大森さんから預かってるぞ」


「何をですか?」


 真壁さんが事務所の奥を指差しました。


 そこには大きな段ボール箱がありました。


 嫌な予感がします。


 開けると。


 大量のノート。


 大量の便箋。


 大量の封筒。


 全部、大森印刷の社名入りでした。


「……何ですか、これ」


「礼だと」


「多い!」


「印刷屋だからな」


「昭和の感謝、物量で殴ってきません?」


「柿よりいいだろ」


「前にも何かあったんですか?」


「いや、こっちの話だ」


 私は一冊のノートを取り出しました。


 表紙には、青い文字で、


 『DAIMORI PRINTING』


 と印刷されています。


「スペル、これ大丈夫ですか?」


「言うな」


「でも大森さんですよね?」


「言うな」


「DAIMORIって」


「栞」


 所長まで新聞の向こうから言いました。


「感謝は細かく検品するな」


「……はい」


 深いようで、たぶん今回は誤植を見逃せという意味です。


 私は笑って、そのノートを机の引き出しに入れました。


 今日の出来事を書いておこうと思った。


 契約成立後。


 引渡し前。


 誰のせいでもなく建物が滅失した。


 契約は、燃えて消えるわけではない。


 でも。


 建物を渡せなくなったのに、買主に代金だけ支払わせるわけでもない。


 売主が悪くないことと。


 買主が払わなければならないことは。


 同じではない。


 私はノートの一番上に書きました。


 ――危険負担。


 その四文字の下に、もう一行。


 誰も悪くない時こそ、法律は仕事をする。


 窓の外では、八月の終わりの夕日が、町を赤く染めていました。


 どこかでは建物が焼けて。


 どこかでは、また新しい建物を建てようとしている。


 なくなるものもある。


 残るものもある。


 それでも人は、残った土地の上で、もう一度始めることができます。


「栞」


「はい?」


「帰るぞ」


 真壁さんが鞄を持っていました。


「所長、今日は?」


「蕎麦だ」


「またですか」


「文句あるか」


「ありませんけど、所長って危険負担より蕎麦の頻度が高いですよね」


「意味が分からん」


「私もです」


 真壁さんが笑いました。


 私も笑った。


 昭和六十三年。


 建物は燃える。


 契約は残る。


 そして、人は案外、それでも前へ進む。


 法律というのはたぶん。


 そのために、損失の置き場所を決めることもあるのです。

 以下に私の作品へのリンク貼ってます。是非、手に取って頂ければと思います。また、ついでに評価ブックマーク頂ければ幸いです。

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