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ミッドガー戦記  作者: 清水涼
一章 ミッドガーの空の下
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1 ――聖教暦1247年花月19日 ポーランタル辺境伯領、ランバート修道院―― 突然過ぎる歓迎

仁の魔法【魂の絆】が発動した直後、周りの風景はいきなり変わってしまった。教室の天井と壁は綺麗さっぱり消えて、目の届ける内に真っ黒な空間だけが広まている。突然この空間に投げられた人達は、皆何もない空中の様な所に浮かばている。


奇妙なのは、一見光のない空間ですが、相手の姿は丸ごと見えるという事だ。


(世界の隙間(すきま)に入ったな)


仁はそう思いながら、慌てて生徒達の様子を確認する…


「何で…重力がない…」


宗一はちょっとずれた突っ込みを呟いてる。普段は一番落ち着いてる人でも、こういう状態になったら、やはり動揺する。だが、するべき事はきちんと理解されたみたい――見た所、彼は手足を伸ばして必死に体のバランスを維持している。


「春子、俺の手を取って!」


「はい、雅之」


仁から最も離れた場所に、雅之は春子の手を取て、自分へ引っ張ってくる。その勢いに乗って、二人は遂に抱き合う状態に成た。相変わらず熱々ですね。


「高橋君…」


「亀みたい…」


「そんなこと言ってる場合か?! 笑えねよ…」


双子のKYな皮肉を無視し、邦光はバランスを維持すると同時に、双子を自分の腕の中に固定した――まるで小鳥を守る親鳥の様。一方、言ってる事は緊張感なさそうだが、邦光に抱かれる時、双子は普段思わないほど大人しい。


「久美ィィィ、助けてェェェェ!」


美倉はちょっと鈍いから、教室にいる時にもう倒れそうだ。なので、世界の隙間に入った後、体はずっと縦にぐるぐる回っている。


「ちょっと待て…今た、あたいの靴を掴まれ!」


「は…はい! ちょ…あ…待て…………やった!」


自分の体勢も何が危なっかしいでも、久美は右足を美倉へ必死に伸ばす。何回も試した後、美倉はやっと久美の靴を掴まて、体の回転を止めた。だか、その同時に彼女達二人揃って変な体勢に成た。


(はあ、良かった、無事に発動したようだ)


仁はほっと長い息をつく。


混乱しているですが、誰も精神崩壊の様な感じではない。絶対安全とは言えないけど、何とか最悪な状態を避けたみたいだ…


まるで仁の思考を読んだの様に、黒い空間は来る時と同じ突然さで去っていた。


そう明るくないけど、光はやっと戻って来て、周囲の物を照らし出す。


狭い部屋は約六坪て、ちょっと濡れた壁は灰色の大きな煉瓦に作られた。生徒達の正面には三階ぐらい小さな階段で、その上に一つ大きな両開きがある。薄暗い部屋の中に、電灯みたいな物は一切ない、唯一の光源は地面にばら撒いた蝋燭。更に、青い大理石の床には、細い銀色のラインで何がの大きくて複雑な模様が描かれて、蝋燭の火に照らされている――何処の地下室の様だが、この部屋の全ては不思議で危険な匂いに包まれている。


同時に戻ったのは重力だ…


「「「アアアアーー」」」


いきなり戻った重力によって、先まで空中に浮いてる人達は、一気に地面へ落ちていく。誰の悲鳴なのは、もう分からない。だって、二三秒後――一連のパタパタの後――生徒達はもう全員床で苦しんで転がっている。


雅之と邦光は自分をマットにして、春子と双子を守った。なので、彼女達は衝撃を受けたが、怪我はなさそうだ。逆に、小型ですが二人の体重も支えたせいで、邦光の右肘に擦り傷が出来た。幸い、邦光は普段から力仕事をしているため、こんな軽い怪我はなんの影響もない。


一方、宗一と久美と美倉はばらばらで落ちていた。宗一と久美に大した怪我はないが、美倉は鈍いから、左膝が地面と激しくぶつけ合って、今強い痛みが走ている。


こんな事が来るかとを思ったから、仁は柔軟な動きで体勢を整くと、両足で軽く地面に降りていた。普通に考えれば、そういう動きはとても不自然だが…この場に居る人達は、半分床で寝ていると、残りの者達は未だ驚きから落ち着いていない…


そう、仁達やっと着いたこの場所には、もう先客がいる――十人程の重武装した男達は壁の近くに立って、仁達を囲んでいる!


男達は皆全身被る鉄の鎧を着て、長い槍を持っている。その様子を見ると、何がを警戒しているしか思えない。


「…な…何者…」


真っ先に混乱から回復した宗一は、直ぐに周りの状況を理解した。敏捷な動きで床から立ち上げると同時に、彼は固く拳を握ている…だが、早めにも諦めた――鎧を着てる人間相手に、自慢な空手も通じないでしょう。


宗一の後、他の生徒達も次々と周りの男達を認識した。彼等の目の中に、驚き・疑い・恐怖などの様々の感情が篭っている。だが、皆まるで約束したの様に、部屋の中心へ集中していた。男子達は女子を背中に庇いながら、武装した男達に向かって警戒している。女子の中にもただ一人の例外がある――久美は美倉を背にして、男達を睨みながら、一番前の所に立っている。あの凶悪な視線を浴びると、訓練を受けた兵士達も思わず動揺した。


生徒達の反応を見ると、仁は微笑んで頷いた。気づかれないために、彼は緩々と生徒達の近くに移動する。だが、最後も子供の集団に混ぜたりしていない。


『突然の召喚に申し訳ございません。我々は貴方達を害する様な行為を絶対致しませんから、どうかご安心なさってください』


その緊張の中に何分が過ぎたのかとは、もうわからなくなった時、天から降りた様な美しい女声が聞こえた。


驚きながら見上げると、開けた扉から一人の女性がゆっくりと生徒達の元へ歩いてくる。全身包む白いローブはキリストの祭服に良く似てって、上に金色の糸で贅沢な飾りを刺繍した。スカーフに被られで、僅かしか見えない白い肌と金色の長髪は、西洋の人しか見えない。だが、その端麗な容姿の何処から、生徒達は思わず日本を連想した…不思議だな。


『驚かせて済みませんでした、でもあたくし達は誠に悪意がありませんから…』


出た女性はそう言っながら、両手を広げて生徒達に軽く近づいてくる。これは多分、自分の無害さを証明するためでしょう。


結果的には、成功だ。生徒達は近づく女性を見て、最初は未だ疑っている様ですが、その後警戒心は見る見る下がってる――男子達は次々と構えを解いていくと、女子達の表情も段々楽に成た…宗一以外ね。


クラスメイト達は緩めていくと同時に、宗一も拳を下ろした…だが、その眼の中には全く安心感が見えない。彼は密かに隊列の前に移動し、何時でも近づく女性を捕まえるように控えている。


「失礼ですが、今の状態を詳しく説明させて戴けませんか?」


決めてはいないが、この時真っ先に相手と接触するのはやはり委員長の雅之だ。


彼はクラスメイト達と謎の女の間に立って、恥じない声で自分達の一番関心する事を問う。一見平然の様に見えるが、あの強く握られた拳は彼の緊張を裏切った。


『貴方達はあたくし達の召喚によってこの世界に来る事になりました。勝手な事をして、本当に申し訳ございませんでした』


女性は頭を下げて謝っている。彼女の声はとても誠実と聞こえるが、言ってる事は生徒達にとっては衝撃的だな。


『あたくし達の世界、このミッドガーは今危機な状況に成ってしまいました。その危機を乗り越えるために、あたくし達の神「光母聖神(こうぼうせいしん)」から、神託(しんたく)が降されました、「異世界にいる我が御使(みつかい)を召喚せよ」と』


自分勝手な説明をした後、女性は謝意を篭って再び頭を下げた。


「…」


召喚とか神託とか異世界とかはともかく、女性の話から、生徒達は真っ先に一つの事実を理解した――彼等は何がの理由でこの人達に拐われた、そして家に帰る事は簡単に出来ないの様だ!


驚きと悲しみ…そして何も比べられない強烈な怒りは一時的に彼等から言葉を奪った。重い沈黙がこの大きくない部屋の中に広がっている…


「そんな、横暴な…」


美倉の低い呟きは皆の思考を現実に向けた。


見合いながら、生徒達はやっとするべき事を思い出す――


「この理屈は通じないですよ! お前等がした事は、完全に誘拐じゃないか!」


『その…本当に申し訳ございませんでした』


堂々と雅之の隣に行くと、邦光は大きな声で反論を言い渡す。その上、わざと雅之の様な丁寧な言葉使いを避けて、でっかい体を利用し、相手に圧力を与える。


邦光の言った事は尤もの上に、生徒達はほぼ皆同じ事を考えている。だが、他の生徒は誰一人も「そうだ」とか「誘拐犯」とか言ってない――宗一と久美は黙てて周りの「兵士」達の様子を観察している、春子は大人しく雅之の決断を待てる、そして双子は水が入ったの様に耳を掻いている…


その中に、美倉は唯一仁に振り向いた生徒だ。


ずっと昔から、彼女はやけに仁を意識しているの感じでした。だが、自身はもう四十歳超えたおっさんだから、仁はこの女の子とどう接触すれば良いのは、よく分からない。


二人の目が会った時に、仁は仕方なく笑顔を送った。仁の笑顔から何を読み取ったのは知りませんが、美倉は直ぐに安心な表情をした、まるで危険な状態を完全に忘れたの様に。


(俺にとって、この子こそは一番手強い敵かもな…)


親指でこめかみを押しながら、仁はこんなどうでもいい事を考える。


その同時に、雅之達と謎の女の交渉は続いている。


「…だ・か・ら、俺達はただの高校生だし、お前等に従う義理も責任もない筈。さっさと開放してくれません? 家に心配する家族がいるんだ」


『貴方様の言う事は誠に正しいでしたが、我々は今もう絶望な状態でございます、最後の希望を捨てるのは…本当に申し訳ございませんでした』


女性の答えに、邦光の顔は段々青く成てきた。いくら正論で相手を責めるでも、返事はただ謝りの繰り返し、なんの進展も出来ていない。


ずっと隣に見てる雅之も、この会話は何処にも辿り着けないと意識し始めた。


(こちらこそ絶望な状態だ! 力で勝てそうもないしな)


控える兵士達をちらりと見て、邦光は思わず溜め息を吐いた。説得出来ないなら、せめて…


「そう言えば、『御使』と言つでも、本当にこんな沢山が必要ですが? なるべく女子達を先に開放しだらどうだ? あいつ等は何も出来ないでしょう」


まるで自分の有用性を強調しだいの様で、邦光は一歩進んでこの強健な肉体を女の前に晒す。彼の意図を完全に見抜いたから、後ろに立ってる雅之は必死に笑いを抑えている。


目の前の女性もその考えを分かっている様だ。邦光の質問は結局答えられていなかった、その代わりに彼女は微笑んで右腕を上げると…


『その前に、この儀式の()はちょっと暗いですので…(あけぼの)聖母(せいぼ)の名において、光の元素に命じる――漂う優しい光によって、我が前路を照らせ…【漂う(フローティング)(ランタン)】』


詠唱に応じて、女性の手のひらに突然光の玉が現れて、緩々で上てくる。その光球はあんまりにも明るくて、元々大きくない部屋は隅々まで照らされている。


「こ…これは…」


「マジックが?!」


「きれいーー…」


「すごい!」


目の前の光景は急に幻想的と成たため、生徒達は誰でも自分の驚愕を抑えきれなかった。でも同時に、本当の魔法みたいな物を見ると、わくわくと興奮する者も少なくない、特にあの子供ぽい双子。


美倉はあの詠唱を聞くと、ふいと仁に振り向いた。あの丸くなた目に、疑いがはっきり見える。口も半分開けて、何が言いそうに成ると思う…


だが最後に、彼女は何も言わずに視線を女性へ戻した。


生徒達の反応を見ると、白衣の女性は密やかに微笑んていた…


『遅くて済みませんが、貴方様は怪我したみたいですので…』


「そんな大した事ない…」


『失礼しました、曙の聖母の名において、水の元素に命じる――清らかな水によって、不幸の傷を癒やせ…【治し(ヒーリング)】』


邦光は何がを言いそうですが、女性はもう勝手に詠唱し始めた。先と違って、今回彼女の両手も空中に振って、何がを描いてるの様だ…


突然、邦光の体に淡い青光が出てくる。


「あ!」


自分の身に異変が起こると、流石に邦光も叫びたくなた。でも、落ち着いた後、彼は直ぐ気付いた、先までずっと痛い肘はもう平気に成た。


驚いて肘を検査する邦光を放ておいて、女性は美倉に向かった。


『こちらのお嬢さんも…【治し】』


詠唱も手の動きも除いて、女性はただ術の名を呼んてると、美倉の体も青光が出てた。そして、膝の痛みは段々遠くなる。


(「連続発動」も出来るとは、中々の手ですね)


ずっと黙て見てる仁は頷いた。


だが、生徒達にとって、そんな不思議な事が簡単に受けられないのは無理もない。


「治た?」


雅之の慎重な質問に、邦光はただ頭を縦に軽く振った。


ずっと周囲に警戒する久美と宗一も、一時危険を忘れて、魔法を受けた仲間達を見ている。


「美倉、大丈夫か?」


「え…」


邦光と違って、美倉は確信出来ないの様な表情がする。でも、傍から見ると、彼女はなんの異変もないだ。


仲間の無事を確認したから、生徒達の雰囲気は一気に変えてしまた。警戒は未だ残るが、「誘拐犯」達に対する敵意は驚く程下がってる。無理もない、相手は仲間の怪我を治したから、善意は未だ言えないが、少なくとも直ぐに危害を加える様な事はないでしょう。


そんな生徒達を見ると、仁の顔に微妙な微笑みが浮かべる。


「仲間の治療に感謝します。でも、俺達は本当にただの高校生ですので、貴女達の役に立てるのは思いません。それに、その…『御使』は俺達という証拠はあるでしょうか?」


邦光の次に、雅之は交渉を続ける。彼は相変わらず丁寧な言葉を使うが、女性の話の抜け穴を鋭く刺した。


確かだ、女性の話は最初から一方的な物に過ぎない。ただ召喚を応じたという理由で、雅之達を「御使」と認識するのは説得力がなさすぎる。それに、これは彼女の要求の基礎でもある。潰せば、生徒達を留める理由も自然と消えていく筈。


だが、雅之の思う儘に成ってなかった。


『それなら、少しお待ちください…祭器を持って来い!』


女性は自信な笑顔で雅之の質問を返事ながら、後ろに居る修道女の様な人達に命令する。彼女の表情を見ると、雅之は嫌な予感がした。


間も無く、修道女達は帰ってきた。その同時に、彼女達は何がの大きなボウルみたいな物を持っている。このボウルは全体金色の上に、表面に刻んた装飾も細かくて美しい、明らかに貴重な物。


(あれは…「受洗(じゅせん)(はち)」…か)


持たれたボウルを直ぐ見分けて、仁は「やばい」と思いながら、他人に気づかれずに生徒達の集団から離れた。


一方、生徒達は皆困惑な視線でボウルを見上げて、どう使うと推測している。


白衣の女性は又微笑むと、ボウルの中から同じ金色の粉を握り出して、突然生徒達に振ってくる。敵意と警戒心はもう随分下がった生徒達は、避ける事もなく、上から降りてくる粉を全身で受けていた…


奇妙な事は直ぐ発生した――元々金色な粉は、生徒達に触れると同時に一気に輝かしくなる。間も無く、生徒全員はまるで仏の様な円光に包まれていると成た。


だが、誰も雅之と比べられない。彼の身にはあんまりにも多くな粉が付いているため、その光が上に漂う光球まで吸い込んだ!


――パタ、パタ、パタ…


白衣の女性も含めて、周囲の人間は皆雅之に向かって平伏した。


『『『御使様の御降臨に、心の底から感謝申し上げます』』』


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