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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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減ったダンジョン

 お土産交換の翌日、俺はシエルの実家の居間で、時計塔の件について次の連絡を待っていた。

 シオはテーブルにロンドンバスのレゴの箱を置いて、完成写真を眺めていた。

 俺がもらったモノポリーも、まだ遊んでいない。


 時計塔の調査では、針の代わりになりそうな組み合わせまでは見つかった。

 ただ、実際につなぐ方法を考えるのは魔道具の専門家だ。

 次に何を調べるかが決まるまでは、こちらから塔へ行っても仕方がない。

 昨日はその時間を使ってシオと出かけたが、時計塔の方はどうなっているんだろう。


 そんなことを考えていると、支援チームの女性が居間へ来た。


 「真壁さん、時計塔の件でご連絡です」


 「何か進展があったんですか?」


 「はい。アレクサンダーさんから連絡がありました。真壁さんが見つけた時計塔の機能と次元針を連携させる方法を、専門家の方々が引き続き調べているそうです。それで、いくつか案が出てきたと」


 「おお。少しずつ進んでるんですね。もう、塔で試すところまで来たんですか?」


 「いえ、まだ実際に組み込んだわけではありません。候補の方法で使えるかどうか、確認が必要な段階です。接続できそうな箇所も含めて、真壁さんに改めて鑑定をお願いすることになると思います」


 前の調査では、次元針から塔へどう情報を渡すかまでは分からなかった。

 それを調べる場所や、試せそうな方法が出てきたということか。

 どこへつなぐかも決まらないまま塔を見るより、確かめるものがある方が俺も調べやすい。


 「分かりました。必要になったら呼んでください。鑑定で分かることなら協力します」


 「ありがとうございます。調査の日時は、まだ決まっていません。正式な依頼が来たら、こちらからお伝えします」


 近くで話を聞いていたシエルが、俺に尋ねた。


 「もう次の調査の話なの?」


 「まだ準備中らしい。実物を確かめる段階になったら、また呼ばれるみたい」


 「そう。伯父さんの方でも、使えそうな方法を探してるのね」


 時計塔を改修する道具も技術も、俺にはない。


 時計塔の話を聞いていたシオが、レゴの箱から離れて専用スマホを俺へ向けた。


 『また とけい?』


 「まだ決まってないけど、また調べに行くことになりそうだ」


 今のコンパスの針は、まだ時計塔に入ったままだ。

 候補の方法が見つかったからといって、すぐに取り外せるわけじゃない。

 俺は次の連絡を待つことにして、支援チームの女性へ改めて礼を伝えた。



 ◇



 ロンドン市内のWBの臨時拠点で、ノアはタブレットに届いた監視報告を読んでいた。

 教会を逃げ出した後、身を隠している部屋だ。

 左腕を伸ばすと肩の刀傷が引きつるので、タブレットは右手で操作していた。

 爆発で負った脚の傷は消せても、この傷は【天術】で消せなかった。


 真壁遼が時計塔へ入った後の動きを追わせているが、本人はしばらく塔へ戻っていない。

 昨日はシオと買い物をしていた。

 公開された生配信では、玩具を作ったり、お土産を交換したりしていた。

 あれだけ警戒されている時計塔を調べた本人とは思えないほど、楽しそうだ。


 ノアはスマホでHagalazへ連絡した。


 「真壁、昨日も観光してたぞ。シオと一緒にさ。今すぐ針が欲しいって感じには見えないけど」


 『それでも、ロダン家の動きは止まっていないのでしょう?』


 「ああ。時計塔の警備は相変わらず厳しい。関係者の出入りも増えてる。真壁が中を調べた後からな」


 『彼が現場にいなくても、作業は続けられます。何をしているかは分かりましたか』


 「そこまでは無理。塔の中で何を見たのかも、外からじゃ分からないよ」


 真壁の配信にも、時計塔の調査の話は出てこない。


 『ロダン家が、あの針を手放そうとしない理由も気になりますね』


 「ただの宝物なら、ここまで時計塔ごと守るか? 針を別の場所に隠してもよさそうだけど」


 『だからこそ、今の動きを確かめる必要があります』


 ノアはタブレットで、WBが以前から集めていたロンドンの調査記録を呼び出した。

 今の監視だけでは、警備の内側で何が起きているかは分からない。

 ロダン家が昔から何を守ってきたのか、古い記録に手がかりがないか探してみる。


 資料には、ダンジョンの探索や討伐についての報告が残っていた。

 古いものから内容を確かめていくと、街中に突然ダンジョンが発生した事案も何度も出てくる。

 前からあった入口を探索者が発見した話ではない。

 人が行き来していた場所に新しく入口が開き、周囲を封鎖することになったという報告だ。


 ノアは、その種類の報告を後の時期まで追ってみた。

 すると、ある時期を境に見つかるものが大きく減っている。

 探索者が入った既存のダンジョンや、魔物の討伐についての記録は、その後も続いていた。


 「……おかしいな」


 『何かありましたか?』


 「昔のロンドンって、こんなに突然ダンジョンができてたんだな。それが、途中から急に減ってる」


 『討伐体制が整ったのではありませんか』


 「いや、討伐した数じゃない。そもそも発生した数の話だよ。新しくできたって報告が減ってるんだ」


 その後も報告が残っている以上、資料が途切れただけとは考えにくい。

 ノアは報告の表題だけでなく、発見時の状況まで読み直す。

 新たに発生したのか、既存のダンジョンを見つけただけなのか、表題では区別できないものもあった。


 『記録の取り方が変わった可能性はあります。手元の資料が、当時の報告の全てとも限りません』


 「そりゃそうだけどさ。中身を読んでも、前と同じような発生の報告が少ないんだよ。探索の話は残ってるのに、こっちだけ減ってる」


 『減っているとして、原因はまだ分かりませんね』


 「うん。そこをもう少し調べてみる」


 欠けた資料もあり、報告によって書き方も違う。

 正確にどれだけ減ったかを、この記録だけで決めることはできないが、ノアは発生当時の対応にも目を通した。

 ダンジョンの周囲を封鎖し、探索者を送った記録に、ロダン家の名が出てくる。

 別の時期の報告にも、ロンドン周辺の防衛や対処を担った家として記されていた。


 「ロダン家、昔からずっと対応してたんだな」


 『今も、ロンドンの防衛に関わっています』


 「それで、あの針も渡さない。時計塔の警備だって、真壁が調べた後も緩んでないんだよな」


 ノアは針の取り合いとしか考えていなかったが、ロダン家は別の理由で守っているのではないか。


 「ロダン家が守ってるのは、針だけじゃないのかもしれないな。時計塔か、あの家が持ってる何かで、ダンジョンができるのを抑えてるとしたら?」


 『それなら、針を渡さない理由にはなります。ただ、発生が減ったことと時計塔を結びつける証拠は、まだありません』


 「分かってるよ。昔の記録にも、時計塔がどう働いてるかなんて書いてないしな。でも、ただ針を隠してるだけってわけじゃなさそうだ」


 『針がその仕組みに必要なら、取り外せば何が起きるかも調べる必要がありますね』


 ノアは、いま届いている時計塔周辺の監視報告へ戻った。

 厳しい警備を抜けて侵入できたとしても、何に使っているか分からない針を、その場で引き抜くことになる。

 それでロンドンに何か起きれば、針を持ち出す前に対応の人間まで集まってくるかもしれない。


 「じゃあ、今すぐ塔へ入るのはやめとくとして、どうする? あいつらが守ってる限り、針には近づけないぞ」


 『真壁遼が調べた後で、ロダン家の動きが増えているのでしょう。彼らが針を取り外す方法を探している可能性もあります』


 「針が必要なら、外せないんじゃないの?」


 『代わりになる方法を見つければ、取り外せるかもしれません。実際にそうするかは分かりませんが、備えておく価値はあります』


 針を求めてロンドンへ来た真壁が、ロダン家の手放せない理由を見つけたのなら、次に考えるのは取り外す方法だろう。

 彼らが自分で外すなら、こちらが時計塔の中で仕組みを探る必要もなくなる。


 「……なるほど。ロダン家に外してもらってから狙うわけか。でも、外したら別の警備場所へ持っていくだろ。塔から出たって、俺たちにくれるわけじゃない」


 『ええ。ですから、取り外す前後に誰が警備に当たり、どこへ移すかを確かめてください。今のうちに、移送先になりそうな場所や経路を調べておきましょう』


 「じゃあ、そっちも見させる。まだ外すって決まったわけじゃないから、時計塔の方も続けておくよ」


 『それと、過去に突発的なダンジョンが発生した地域も調べてください。その時、ロダン家や英国側がどう戦力を動かしたかも』


 「針の移送先は分かるけど、昔のダンジョンの場所まで? 警備の動きを知るためか?」


 『それもあります。時計塔がロンドンの安全と関係しているなら、有事の対応を知っておく必要があります』


 Hagalazは、そこから先の方法までは話さなかった。

 ノアの手元には、発生地域や対応まで詳しく残った報告もあれば、その部分が抜けたものもある。

 ここで探した記録だけでは、警備がどう動くかまでは調べきれない。


 「分かった。今ある資料だけじゃ足りないし、調査の方にも集めてもらうよ」


 『忘れないでください。我々の目的は、《フロンティア・コンパス》の針です。あなたが、無理に現場へ出る必要もありません』


 「分かってるよ。俺だって針を諦めたわけじゃない。今すぐ時計塔へ突っ込むつもりもないから」


 通信を終えたノアは、引き続き真壁とロダン家、時計塔周辺を監視するよう、担当へ連絡した。

 関係者の出入りと警備の変化に加え、針を取り外した場合の移送先になりそうな場所と、そこまでの経路も調べさせる。

 まだ取り外すと決まったわけではないことも、依頼に添えた。


 続いて、ロンドンの古い記録を調べている担当へ、新たな用件を送る。

 突発的にダンジョンが発生した地域と、その時のロダン家や英国側の対応を知りたい。

 どこから戦力を動かし、どこの警備が変わったのか、発生の記録と一緒に集めるよう書き加える。

 ノアは、いま読んでいた報告を調査依頼に添付して送信した。

読んでいただきありがとうございます。

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