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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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シオとハムリーズでお土産交換

 シエルの案内でリージェント・ストリートを歩いていくと、シオは通りの建物へ撮影用スマホを向けた。

 もう一台には俺たちが映っていて、手元のスマホでも生配信が続いている。

 やがてハムリーズの看板が見えてきた。

 写真で見るより、ずっと大きい店だ。


 「これ、上まで全部おもちゃ屋なのか?」


 「そうよ。地下も合わせて七フロアあるの。ロンドンでも有名なお店なのよ」


 シオは外観を撮り終えると、さっそく入口へ向かった。


 「シオ、ずいぶん楽しみにしてるな」


 『おもちゃ いっぱい!』


 「ほら、やっぱり自分が欲しいんじゃないか」


 『りょうの おみやげ!』


 「さっきからそればっかりだな」


 『シオちゃん、自分のお土産探しだろw』

 『真壁さんへのプレゼントは口実説』

 『シオちゃんが楽しそうだから問題なし』


 俺のスマホにも、入口を撮っているシオとコメントが出ている。

 本人は訂正するより先に、中の玩具へカメラを向けた。


 移動中に店へ相談していた支援チームの女性が、入口で担当者との確認を終えて戻ってくる。


 「撮影できる場所は確認できています。ご案内した範囲でお願いします」


 シオは教えてもらった売り場へカメラを向け、ほかの客や店員を映さないようにする。

 名取と護衛も一緒に入り、俺たちは玩具の並ぶ方へ進んだ。


 店内には色鮮やかな箱が並んでいる。

 シオは動く玩具を見つけると、すぐに立ち止まった。

 車が走ればカメラで追い、別の棚に乗り物を見つけると、今度はそちらへ近づいた。


 「そんなに気になるなら、自分の分も欲しくなるんじゃないか?」


 『りょうの おみやげ!』


 「はいはい。俺のだな」


 ここまで楽しそうにしていると、俺へのお土産がなくても本人は満足しそうだ。

 まあ、まだ何も選んでいないんだし、好きに見てもらおう。


 「レゴは五階よ。そっちも見てみましょ」


 シエルについて上階へ進むと、組み立てセットの箱や完成した見本が並ぶ売り場に着いた。

 小さなブロックで作った乗り物や建物を、シオが近くから撮っていく。

 窓や車輪まで組んであるところが気になるようで、カメラを寄せては、別の部分も確かめていた。


 「これ、全部ブロックなんだよな。細かいところまで作れるもんだな」


 『しおも やりたい!』


 店員に確認して、試遊用のブロックがある組み立て台を使わせてもらえることになった。

 撮影は台とその周りだけなので、シオもスマホを俺たちと手元へ向けている。


 『りょう つくって!』


 「何を?」


 『しお!』


 「シオをレゴで作れって? 難しくないか?」


 丸い胴体に、細長い触手。

 形は分かるが、四角いブロックでどこまで似せられるんだろう。

 なるべく丸く見えるように胴体を組み、その両側へ細いブロックを伸ばしてみた。

 先も丸くしたかったが、そこまでやると触手ばかり太くなってしまう。


 「……まあ、こんなもんかな。ほら、シオ」


 短い時間で作ったにしては、それなりに形になっていると思う。

 台へ置いて見せると、シオはカメラを近づけ、しばらく俺の作品を眺めていた。


 『これ かに?』


 「シオだよ!」


 『しお もっと かわいい!』


 「一生懸命作ったのに、ひどい言われようだな!」


 『真壁さんのシオちゃん、カニで草』

 『いや、言われると確かにカニw』

 『シオちゃんから作り直し要求w』

 『シオ神をカニにするとは……』

 『しおかわいい』

 『信者、まず真壁さんを許してやれw』


 横に伸ばした触手が、足に見えるのか。

 そう言われると俺にもカニに見えてくるが、最初からカニを作っていたわけじゃない。


 「触手の表現が難しいんだよ。これをもっと長くしたら……」


 「長い足のカニになるんじゃない?」


 シエルまで笑っている。

 俺がブロックを足すか迷っていると、シオが専用スマホを向けた。


 『しおも つくる!』


 「じゃあ、やってみてくれ。結構難しいぞ」


 シオは何本もの触手でブロックを選び、台の上で組み合わせ始める。

 スマホを操作する時も思っていたが、こういう細かな作業は得意なんだな。

 シオの手元を見ているうちに、頭と胴体、手足のある人形ができあがった。

 その隣へ、黒いブロックもどんどん積んでいく。


 「……これ、俺か?」


 『りょう!』


 「こっちの黒いのは?」


 『ごみぶくろ!』


 「俺よりゴミ袋の方が大きいじゃないか!」


 黒い塊は人形の頭より高く、横幅もある。

 シオは人形の片手をそこへくっつけると、二つまとめてカメラに収めた。


 『回収屋の再現度高いw』

 『真壁さんよりゴミ袋が目立ってる』

 『袋でかいけど、ちゃんと回収中なの分かるな』


 「仕事してる俺の方も見てくださいよ」


 『しお じょうずに できた?』


 字幕で聞いた途端、コメントが増える。


 『シオちゃんの方がうまい』

 『ちゃんと真壁さんの仕事を理解してるw』

 『カニと回収屋なら回収屋の勝ちだな』

 『しおかわいい』

 『さすシオ!』

 『シオ神がお作りになられた作品を拝みたい』

 『急に信者が湧いたなw』


 「カニじゃないって」


 シオは満足そうに殻を揺らし、俺の作った方まで並べて撮った。

 人形の隣に大きなゴミ袋、その横にはカニみたいなシオ。

 並べられると、俺の方は何を作ったのか説明が必要だ。


 「……なんか納得いかないな」


 「シオちゃん、上手にできましたね」


 名取が褒めると、シオは自分の作品をもう一度カメラへ近づけた。

 いや、楽しんでくれたならいいんだけどな。


 工作が一段落しても、シオは使わなかったブロックを触っている。

 完成見本より、自分で作る方が気になるのかもしれない。

 これなら、シオへのプレゼントにもよさそうだ。


 ニューヨークで黄色いタクシーのキーホルダーを買った時も、袋の中を何度も見ていたっけ。

 ロンドンなら、赤い二階建てバスだろう。

 本人に聞いたら、また秘密にならないので、俺はシエルへ小声で相談した。


 「ちょっと一緒に選んでくれる?」


 「うん。行きましょ」


 シオは名取たちと試遊台に残り、撮影用スマホも二台ともそちらにある。

 俺とシエルは護衛の一部と離れ、声もカメラへ届かない売り場で、赤いバスの箱を手に取った。


 「またロンドンバスなの?」


 「いや、今回は布巾じゃないから!」


 「ふふ、分かってるわよ。さっき楽しそうに作ってたものね。これも気に入りそう」


 「だよな。自分のを組み立てられるし」


 箱の写真には、ブロックでできた赤い二階建てバスが載っている。

 シオがこれを作るところもちょっと見たい。

 会計を済ませ、中身が見えないように包んでもらって、俺は袋を持って戻った。


 『りょう かった?』


 「買ったけど、最後まで秘密だからな」


 袋はカメラに出さず、俺の手元に置いておく。

 シオは覗こうとするより、自分のスマホへ文字を打った。


 『しおも かう!』


 「分かった。じゃあ今度はシオの番だな」


 シオは俺たちの作品を崩して試遊用のブロックを片付け、撮影用スマホを一台ずつ俺たちへ渡した。

 俺が人物用を持ち、もう一台は支援チームの女性が許可された玩具へ向けた。

 専用スマホだけを持ったシオは、名取と護衛に付き添われて売り場を離れる。

 こちらにも護衛が残り、俺とシエルはそのまま五階の撮影できる場所で待つことになった。


 「というわけで、しばらく俺がお相手します」


 自分とシエルを映しながら、自分のスマホでコメントを見る。


 『真壁さん、チャンネル奪還w』

 『シオちゃんねるの主役がいなくなった』

 『ゲストが乗っ取ってて草』


 「乗っ取ってないから! 戻ってくるまでの代役ですよ」


 「せっかくだから、さっきのカニの作り方でも教えてあげたら?」


 「シエルまで。俺はシオを作ったんだって」


 『説明書の名前だけシオにすればいける』

 『ゴミ袋の作り方の方が知りたいw』

 『あれ?真壁さんシエル呼び??w』

 『ニヤニヤ』


 「確かに、シオの方がうまかったけど」


 俺が認めると、シエルが横で笑った。

 こんな工作まで配信に残るとは思わなかったな。



 ◇



 『りょう おまたせ!』


 しばらく視聴者と話していると、戻ってきたシオが専用スマホを見せた。

 名取が持っている袋には、包まれた箱が入っている。


 「もう買えたのか?」


 『かんぺき!』


 「自信満々だな……」


 シオが撮影用スマホを二台とも受け取ったので、俺は臨時の進行役を終える。

 支援チームの女性の案内で、俺たちはほかの買い物客を映さずに済む、撮影許可をもらった場所へ移った。

 名取と護衛も同行し、シオは俺たちを映すカメラと、品物用のカメラをそれぞれ構える。


 『おみやげ こうかん!』


 『やっと本命発表だ!』

 『真壁さん、今度は布巾じゃないよな?』

 『シオちゃんが何を選んだのか気になる』


 「じゃあ、俺からな」


 包装を開いて箱を出すと、シオがすぐに近づいてきた。


 「シオ、これ。ロンドンバスのレゴ」


 箱の絵を撮った後、シオはカメラを少し離して、完成写真を眺めている。


 「さっきレゴ、楽しそうに作ってただろ。こういうの好きそうだなって」


 『しおの れご!』


 「そう。シオへのお土産だよ」


 シオは箱を受け取り、触手で抱えた。

 正面のバスを見て、箱の向きを変え、別の写真を見つけるとまた近づく。


 『りょう ありがとう!』


 『しおかわいい』

 『シオ神がお喜びになられている!』

 『真壁さん、よくやった!』

 『信者の上から目線で草』

 『真壁さん、今回はちゃんとしてる!』

 『レゴのロンドンバスいいね』

 『布巾じゃなくてよかったw』


 「いつまで布巾のこと言ってるんですか!」


 「よかったわね、真壁さん。気に入ってもらえて」


 シエルが笑う横で、シオは箱を手放そうとしない。

 これにしてよかった。


 「作るのは後でな。今はシオが選んだのも見せてくれよ」


 シオはレゴの箱を俺のそばへ置くと、名取の袋から包まれたプレゼントを自分で取り出した。


 『りょうの おみやげ!』


 「ありがとう。何を選んだんだ?」


 差し出された箱の包装を開くと、モノポリーの名前が出てくる。


 「モノポリー? へえ、こっちにもあるんだな。でも、どうしてこれを?」


 『りょうと しょうぶ!』


 「……ああ、なるほど。これで一緒に遊ぼうってことか」


 『しおが かつ!』


 「もう勝つつもりなのかよ!」


 『プレゼントが勝負の申し込みw』

 『真壁さん、じゃんけんの再来』

 『次はモノポリーで負けるのかw』


 「まだやってもいないのに、俺の負けにしないでくださいよ」


 シオは得意げに殻を揺らし、箱へカメラを向ける。


 「しかも、イギリスのモノポリーにはロンドンの通りが出てくるのよ。今いるリージェント・ストリートもあるわ」


 シエルが箱に載った盤面の写真を示すと、確かに見覚えのある通りの名前があった。


 「えっ、本当だ。さっきから歩いてた通りじゃないか」


 『しお ここ かう!』


 「いや、まだゲーム始まってないから!」


 『もう購入予約してるw』

 『真壁さんが通ったら家賃取られるぞ』

 『モノポリー配信やってほしい』


 「今度、一緒にやろうな」


 『やくそく!』


 シオは俺へその文字を見せたまま、箱のリージェント・ストリートをもう一度指した。

 そこは譲るつもりがなさそうだ。


 『みんな ありがと!』


 最後の挨拶の字幕が出たので、俺も人物用のカメラへ向く。


 「今日はシオちゃんねるのコラボに付き合ってくれて、ありがとうございました。俺のチャンネルでも後日、別編集版を公開するつもりなので、そっちもよろしくお願いします」


 『そっちも待ってる!』

 『カニのところは残してw』


 「……そこが一番見たいんですか。シオ、次のコラボは回収屋チャンネルでやろうな」


 『じゃんけん!』


 「またじゃんけんかよ!」


 『しお つよい!』


 『またかw』

 『次もシオちゃんねるになりそう』


 「今度はそう簡単に負けないからな」


 『またね!』


 『シオ神、今日もありがとうございました!』

 『次の配信まで待機します』

 『信者はまた橋で待ってるのかw』


 シオが終了の操作をすると、俺のスマホでも生配信が終わった。

読んでいただきありがとうございます。

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