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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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シオとのじゃんけん勝負

 時計塔の調査を終え、俺はシエルの実家へ戻っていた。

 次元針と、塔に残っていた機能を組み合わせれば、今の針の代わりになるかもしれない。

 ただ、それをどうつなぐかは、魔道具に詳しい人たちの仕事だ。

 次に調べてほしいものができるまでは、俺も連絡待ちになる。


 さて、この間に何をしようか。

 そんなことを考えていると、シオが専用スマホを持ってやってきた。


 『りょう こんどは こらぼ!』


 「コラボ? この前も一緒に生配信しただろ」


 『あれは しおの かんこう! りょうは いっしょに いただけ!』


 ずいぶんな扱いだ。

 まあ、あの時の配信はシオちゃんねるだったし、俺は横からあれこれ言っていただけか。

 自分の回収屋チャンネルは、ニューヨークへ行ってからも、ロンドンへ来てからも、あまり更新できていない。

 調査だの呼び出しだのが続いて、配信するつもりで出かける機会が減っていた。


 「じゃあ、今回は回収屋チャンネルでやろう。俺もしばらく配信してないし、シオがゲストで出ればいいだろ」


 『しおちゃんねるで やる!』


 「シオはこの前やったばかりじゃないか。こっちは結構空いてるんだから、今回は譲ってくれてもいいだろ」


 『しおが さそった! しおの きかく!』


 それを言われると弱いが、せっかくの配信の機会だ。

 ここで引き下がるのも惜しい。

 近くで聞いていたシエルが、笑いながら口を挟んだ。


 「どっちでやっても、2人とも出るんでしょ?」


 「それはそうだけど、自分のチャンネルを更新できるかどうかは大きいんだよ」


 「シオちゃんが誘ってくれたんですから、真壁さんがゲストでもいいじゃないですか」


 名取は最初からシオ側らしい。

 支援チームの女性も黙って聞いていたが、助け舟は出してくれない。

 そこへ、シオが新しいメッセージを見せる。


 『じゃんけんで きめよう!』


 「じゃんけん?」


 『かったほうの ちゃんねる!』


 俺はシオの触手を見た。

 先は丸く、人間の手みたいに5本の指へ分かれているわけじゃない。

 グーなら出せそうだが、チョキやパーはどうするんだ?

 ……これ、グーしか出せないんじゃないか。

 だったら、俺がパーを出せば勝てる。


 しめしめ。

 せっかく自分から言い出してくれたんだし、ここは乗ってやろう。


 「いいぞ。勝った方のチャンネルだからな?」


 『いいよ!』


 シオは専用スマホを別の触手で持ち、丸い先端の触手を1本、俺の前へ伸ばした。

 どう見てもグーだ。

 これで久しぶりに回収屋チャンネルを更新できる。

 俺が手を構えると、シエルたちも話をやめて勝負を見ていた。


 「じゃんけん、ぽん!」


 掛け声に合わせ、俺は迷わずパーを出す。

 同時に、シオはもう1本の触手を伸ばし、2本をV字に開いた。


 「……は?」


 開いた俺の手の前に、触手のチョキがある。

 丸い先が2つ、きれいに分かれていた。


 「シオ、グーしか出せないんじゃ!」


 シオはチョキを出したまま、専用スマホを俺へ向ける。


 『まかべくん それは ぶらふ だよ』


 「触手2本でチョキが出せるなんて聞いてないぞ!」


 『ぐーしか だせないとは いってない』


 確かに言っていない。

 勝てると思ったのは俺だ。

 こいつは普段から何本もの触手でスマホを持ったり、文字を打ったりしているのに、なんで1本でやると思ったんだろう。

 シエルがとうとう声を上げて笑った。


 「真壁さん、自分で受けたんだから。今さら文句を言っても駄目よ」


 「シオちゃん、おめでとうございます!」


 名取はもう勝者を祝っている。

 支援チームの女性まで、笑いをこらえながら判定した。


 「チョキはちゃんと出ていましたね」


 「……はいはい。俺の負けでいいよ。今回はシオちゃんねるでやろう」


 シオの殻が得意げに揺れる。

 あれだけ勝てると思っていたのに、ずいぶんあっさり決まってしまった。

 ただ、回収屋チャンネルの方も、このまま放っておきたくはない。


 「じゃあ、その代わり、今回撮った映像を俺のチャンネルでも別編集で載せていいか?」


 シオはすぐに文字を打たず、俺の方を向いている。

 負けたくせにまだ言うのか、ということだろうか。


 「生配信はシオのチャンネルでいいって。同じものをそのまま載せたいわけじゃなくて、俺が見たり話したりしたところを中心に編集して、別の動画にしたいんだよ。せっかくコラボするんだから、こっちにも残したいだろ」


 そこまで言うと、シオは専用スマホへ文字を打った。


 『まかべくん ひっしだね』


 「そりゃ必死にもなるだろ。こっちは最近サボり気味なんだから」


 シエルたちがまた笑う。

 シオはしばらく俺へその画面を見せていたが、やがてメッセージを変えた。


 『いいよ げすとだからね!』


 「そこは忘れないんだな」


 まあ、俺のチャンネルにも動画を載せられるなら、それでいいか。


 「で、何を配信するつもりなんだ?」


 『ろんどんの おみやげ!』


 「お土産か。そういや、まだちゃんと探してないな」


 時計塔へは何度も行ったが、お土産を選ぶために出かけたことはない。

 シオも前回とは別の場所へ行きたいようで、さらに文字を続ける。


 『しおは りょうのを えらぶ! りょうは しおの!』


 「お互いのを選ぶのか?」


 『さいごまで ひみつ!』


 シオが何を持ってくるのか、ちょっと気になる。

 いや、俺も人のことばかり考えていないで、シオが喜びそうなものを見つけないといけないのか。


 「買い物なら、コヴェント・ガーデンへ行ってみましょ。お土産や雑貨のお店もあるし、歩いて回るのも楽しいわよ」


 シエルの提案に、シオは早速スマホを向けた。


 『そこに いく!』


 「じゃあ、まずはそこからだな。ほかに寄れそうな場所も見ながら、日本に持って帰る分も探そう」


 シオが相馬へ連絡し、支援チームに撮影できる範囲と護衛の確認をしてもらった。

 準備が整ってから、俺たちは出かけた。



 ◇



 コヴェント・ガーデンは、前に歩いた時計塔の周りとはまた違う場所だった。

 古い建物の間に店が並び、買い物をする人たちが行き交っている。

 シエルに教えてもらったマーケット・ビルディングには、柱に支えられたガラスの屋根があり、その下にも店が続いていた。

 ここなら、見て回るだけでも結構時間がかかりそうだ。


 名取は俺の近くにつき、支援チームの女性やほかの護衛も同行している。

 シエルの案内で撮影場所へ着くと、シオはバッグから撮影用スマホを2台出した。

 俺の肩から降り、1台を前へ伸ばして、自分と後ろに立つ俺が映る向きにする。

 もう1台は、マーケットの建物へ向けていた。

 専用スマホで打った文字を字幕へ出すのも、前回と同じだ。


 俺も自分のスマホでシオちゃんねるを開き、音を消してコメントを見られるようにした。

 今回はゲストなので、配信を始めるのもシオに任せる。

 シオが配信を始めると、俺のスマホにも、ロンドンの街並みを背にした俺たちが映った。


 『きょうは りょうと おみやげえらび!』


 字幕が出ると、コメントが続けて流れてきた。


 『シオちゃんねるの生配信また来た!』

 『今日は真壁さんも一緒か』

 『回収屋チャンネルじゃないの?』

 『2人でお土産選びって珍しいな』

 『今日はダンジョンじゃなくて普通に買い物か』

 『シオちゃんが何買うのか気になるw』


 「どうも。今日はシオのゲストです。お互いに似合うお土産を選んで、最後に見せ合おうってことになりました」


 俺たちを映すスマホへ話しかけると、シオも専用スマホへ文字を打つ。


 『じゃんけんで しおが かった!』


 「おい、その話はもういいだろ!」


 『じゃんけんで決めたのかよw』

 『真壁さん、負けてゲストになったの?』

 『何があったんだww』

 『シオちゃん、じゃんけんもできるのか』

 『回収屋チャンネル、また更新の機会を逃したのかw』


 そこへ食いつくのか。

 画面の中で、シオは触手を2本、V字に伸ばしていた。

 俺はさっき負けた時の手を思い出す。


 「後で俺のチャンネルにも、別編集の動画を載せる予定だから。更新の機会は逃してないぞ」


 『負けた方の主張が必死w』

 『そっちの動画も待ってる』

 『とりあえず今日はシオちゃんについていこう』


 シオは満足したのか、景色用のカメラをマーケットの方へ向けた。

 通行人の顔を追わず、建物と店先を映しながら、専用スマホへ次の文字を打つ。


 『おみやげ さがしに いこう!』


 「はいはい。ついていきますよ」


 今日はすっかりシオのペースだ。

 こいつに似合うお土産って、なんだろうな。

 シオが俺を画角に入れたまま歩き出したので、俺もシエルたちと一緒に、店の並ぶ方へ向かった。

読んでいただきありがとうございます。

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