↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
215/238

エリアスの家(後編)

 ――――――――――――――――――――

 対象:《天空樹》

 分類:移動型高位生命体/浮遊樹

 希少度:SSS


 契約主:エリアス・ヴェイン

 契約状態:終了/死別


 状態:長期休眠/エネルギー残量低下

 現在地:次元間退避領域《天空樹の間》

 原座標:ナバホダンジョン中心領域


 主機能:長距離飛行/内部居住空間維持

 退避機能:《異界退避》継続中

 登録補給先:ナバホ補給基点《センター》

 補給接続:切断/待機


 継承状態:正統継承者認証済み

 正統継承者:真壁 遼

 起動状態:停止

 ――――――――――――――――――――




 最初の2行を読み直す。


 「……あ、この木、生き物みたいです」


 名取の靴が床をこすり、後ろにいた鑑定士の何人かも片足を上げかけた。


 「この木そのものが?」


 桐野が聞いてくる。


 「はい。名前は《天空樹》。移動型高位生命体で、浮遊樹って出てます」


 「ちょっと待って。浮遊って、まさか……」


 「空も飛べるみたいですよ」


 俺が説明し終えると、海外側の鑑定士たちからも声が上がった。

 エリオットとヘルガは床や壁を見直し、何人かの鑑定士はもう一度鑑定を試している。

 それでも、《天空樹》という名前を口にする者はいなかった。


 「つまり、空を飛ぶ木の中に家があるってこと?」


 「鑑定結果では、そうなってます」


 「家ごと飛ぶの……?」


 名取が天井を見上げる。

 左肩にいるシオが専用スマホを取り出した。

 触手の先で文字を打ち、画面をこちらへ向ける。


 『そら とぶ?』


 「飛ぶみたいだぞ」


 俺が答えると、シオはスマホを下ろし、足元を見た。


 その中で、玄斎だけは《天空樹》という名前を聞いてから動いていなかった。

 やがて、自分の胸元にある学会の参加証を手に取る。

 そこには、一本の木とレンズを組み合わせた、世界鑑定士連盟の紋章が入っていた。


 「まさか……この木か」


 その参加証を、俺たちへ向ける。


 「世界鑑定士連盟の紋章に刻まれておる、一本の木じゃ」


 宗一郎と澪が参加証を確かめ、エリオットたちも自分の胸元へ手を伸ばした。


 百年以上、世界中の鑑定士が使ってきた紋章。

 その木が、今も生きて俺たちの足元にいる。


 「それと、もう一つあります」


 俺は鑑定表示の下側を見た。


 「《天空樹》は、俺を正統継承者として認証してるみたいです」


 日本側から先に声が上がる。


 「やっぱり真壁さんだったんですね!」


 名取が真っ先に喜ぶ。


 「レンズも入口も、今度はこの木までか……」


 桐野は足元の床を見た。


 「エリアス・ヴェインが遺したものが、すべて真壁へつながっておるということか」


 そう言って、参加証を握り直した。

 エリオットは、先ほどまで触れていた椅子へ目を戻した。

 曾祖父の家であり、ヴェイン家へ残されたレンズが導いた場所でもある。

 それでも、《天空樹》が認証した名前は俺だった。


 エリオットが英語で話す。


 『《導きのレンズ》が真壁氏を選び、外門も真壁氏にしか開けられなかった。ここで別の名が出る方が、不自然だったのでしょう』


 エリオットの表情は変わらなかった。

 俺が何か答えるより先に、ミルが鼻を鳴らす。


 「当然じゃ。そうでなければ、わしがここまで通しておらん」


 ミルも《天空樹》も、俺がここへ入った時点で答えを出していた。


 「ナバホ補給基点《センター》……」


 その名前を口にした瞬間、赤土の中央に浮いていた黒い球体が頭に浮かぶ。


 俺が配信中に鑑定した時、《センター》は未成立のダンジョン核ではなく、大型移動型ダンジョン由来生命体へエネルギーを供給する施設と出ていた。

 あの時点では休止中で、供給対象とはつながっていない。


 「もしかして、あの《センター》が待ってたのって、この木だったんですか?」


 ミルが満足そうに頷く。


 「ようやくそこまでつながったか。そうじゃ。《センター》は、この者へ力を戻すために、エリアスが設けた場所じゃ」


 支援チームと特命チームの人たちも、あの時の配信記録を確認していた。


 「でも、《センター》は供給対象未接続になってましたよね」


 「この者が異界へ退避した時に、送り先を見失ったからの」


 そこで、《センター》に表示されていた別の項目を思い出す。

 供給源は、周辺異界領域に蓄積した魔力だった。

 ナバホダンジョンの中には、魔物もダンジョン資源もない。

 世界で唯一、魔物が出ないダンジョンと呼ばれている。


 「じゃあ、ナバホダンジョンに魔物が出ないのって、《センター》が周りの魔力をずっと集めてたからですか?」


 「そのとおりじゃ」


 「供給先がいなくても、集める方だけは止まってなかった?」


 「うむ。魔物や資源を形作るほどの力が、あの地には残らん。《センター》へ集められたまま、使われずに溜まり続けておる」


 ミルの説明が全員へ届くと、海外側から出ていた声が止まっていく。


 世界で唯一、魔物が出ないダンジョン。

 異界領域だけを残して死んだダンジョン。

 ナバホの奇跡。


 そう呼ばれていた場所は、《天空樹》へ力を送るための設備が、百年以上も動き続けていた場所だった。


 「百年余り、誰もダンジョンの成り立ちを見抜けなんだということか……」


 玄斎が、参加証を握ったまま呟いた。

 ヘルガが英語で尋ねた。


 『《センター》に蓄積した魔力は、今も《天空樹》へ供給できるのですか?』


 「つなぎ直せばよい。そのために、この男を待っておった」


 ミルが俺を示す。

 鑑定表示では、《天空樹》の状態は長期休眠で、エネルギー残量も低下している。


 「でも、どうやって《センター》まで運ぶんですか?」


 俺は足元から、壁と天井へ目を移した。


 外から見た幹は、建物よりも大きい。

 空を飛べるとしても、この隔離された場所からどうやって出るのか分からなかった。

 名取も同じところが気になったらしい。


 「《天空樹》をここから出して、ナバホダンジョンまで飛ばすということですか?」


 ミルは、不思議そうに名取を見た。


 「何を言っておる。ここは、とうにナバホじゃぞ」


 今度は、全員がミルの言葉を受け取ったまま動かなかった。


 「でも、ここって《天空樹の間》でしょ? 私たちは星門館の奥にあった壁から入ってきたんだけど」


 桐野が周囲を見回す。


 「《天空樹の間》は、ナバホダンジョンの中心から、この者ごと次元の狭間へ退避させた領域じゃ」


 ミルは前脚で床を軽く叩いた。


 「星門館の外門は、ここへ入るための道にすぎん。この者の《異界退避》を解けば、飛んで向かう必要などない」


 俺は鑑定表示の原座標を見た。

 ナバホダンジョン中心領域。

 どこまでを「中心領域」と呼んでいるのかまでは、表示から読み取れない。


 「元の場所って、どこですか?」


 ミルは前脚を床へ置いたまま、俺を見上げる。


 「おぬしらが《センター》と呼んでおる、ナバホダンジョンのど真ん中じゃ」

小狐:一本の木とレンズについては159話を読んでみよう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。