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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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天空樹の間

 本日カクヨムのほうでサポーター専用SS【伝説の探索者エリアス外伝】 魔道具に魅せられた日 が公開されています!

 この話は伝説の探索者、エリアス・ヴェインが探索者にどうしてなろうとしたのか、そして鑑定士として名を馳せてからの日常を描いた外伝となります。この外伝は本編ストーリーの進行具合で更新していく予定です。

 探索者とはなにか、鑑定士とはなにか、そしてこの世界にダンジョンがなぜあるのか、そういった本編では描かれない謎を追い求める、そんな話を予定しています。


 ※カクヨムの方ではストーリー進行が遅いですが、専用エピソードを近況ノートの方に掲載していますので、興味ありましたら是非のぞいてみてください(サポーターズパスポート加入などが必要になります)

 沈み始めた石壁は、そのまま壁の奥へ消えていった。


 長方形に縁取られていた光も薄れ、そこだけがぽっかりと暗い入口へ変わる。

 何か部屋でもあるのかと思ったが、見えるのは暗闇だけだ。

 床も天井も、どこまで続いているのかも分からない。


 「暗いですね」


 俺がそう言うと、すぐ後ろにいた名取が前へ出た。


 「真壁さんは、そこで待っていてください」


 名取は入口の内側へ片足を置き、靴底で慎重に足場を確かめる。

 左右へ視線を走らせてから、後ろにいる人たちへ片手を上げた。


 「床はあります。皆さん、まだそのままで」


 その直後だった。

 入口から数歩先で、白い光がともった。

 街灯を細くしたような支柱が暗闇の中に浮かび、その先端が足元を丸く照らす。


 さらに奥でも、同じような光がともった。


 一つ。


 また一つ。


 白い灯りは俺たちを招くように、暗闇の奥へ向かって順番についていく。

 やがて、はるか遠くに淡い光の塊が浮かび上がった。

 距離がありすぎて、それが何なのかまでは分からない。


 「進めってことですかね?」


 名取は返事を待たず、最初の灯りの下まで進んだ。


 足元、支柱、左右の暗がり。

 一つずつ異常がないか確かめていく。

 内閣府の特命チームとドイツ側の警護担当も、入口から確認できる範囲を調べた。

 今のところ、罠らしい反応はないらしい。

 何より、ほかに道らしいものが見当たらなかった。


 「では、私が先に進みます。真壁さんはすぐ後ろへ」


 「分かりました」


 名取に続いて入口を越える。

 シオは俺の左肩に乗ったまま、暗闇の奥をじっと見ていた。

 その後ろへ桐野、御厨家の三人、エリオットとヘルガたちが続く。

 俺たちは、白い灯りの列をたどって歩き始めた。



 ◇



 支柱は数メートルおきに並び、その周りだけ床が白く浮かんでいる。

 灯りと灯りの間は暗いが、次に足を置く場所が見えなくなるほどではない。

 前方には、さっき見えた淡い光が浮かんでいた。

 あそこまで行けば、何があるのか分かるはずだ。

 そう思って進み続けた。


 ところが、数分歩いても、遠くの光は少しも大きくならなかった。

 ずいぶん先にあるんだな。

 俺はそのまま歩こうとしたが、後ろから声をかけられた。


 「ねえ。あの光、さっきから全然近づいてなくない?」


 桐野が足を止めていた。

 名取も片手を上げ、一行を止める。


 改めて前を見る。

 淡い光は、最初に見た時とほとんど変わらない大きさで浮かんでいた。


 「もしかして、この空間そのものがねじ曲がってる?」


 桐野の指摘を受け、名取は後方へ向き、これまで通った灯りの数を数えた。


 「あり得ますね。ダンジョンの空間系トラップに似ています」


 「ああ。なるほど」


 道があるから、そのまま進めば着くものだと思っていた。

 けれど、ここが普通の通路とは限らない。

 俺は遠くの光だけではなく、足元の道と並んだ灯り、その周囲の空間までを一つの経路として捉えた。


 そこへ鑑定を通す。

 視界の中に、鑑定結果が浮かび上がった。


 ――――――――――――――――――――

 対象:《天空樹の間》第一経路

 分類:空間攪乱式通路

 状態:作動中

 現象:視認経路と実在経路が一致しない

 通行方法:《導きのレンズ》を通し、灯火の示す経路を進む

 ――――――――――――――――――――


 「やっぱり空間が歪んでますね。見えている道と、本当の道が違うみたいです」


 「抜けられますか?」


 名取に聞かれ、鑑定結果の最後を見る。

 そこには、俺が今も手にしている魔道具の名前があった。


 「ああ。これを使うみたいです」


 《導きのレンズ》を目の前まで持ち上げる。

 開いた二枚のレンズの片方には、遠くの光が映っていた。

 もう片方を通して見ると、まっすぐ並んでいるはずの灯りの位置がずれている。

 俺は二枚の像が重なるように、レンズの角度をゆっくり変えた。

 遠くの光と灯りが重なった瞬間、景色が切り替わった。

 肉眼では正面へ続いていた道が、レンズの中では途中から左へ曲がっている。

 その先でも何度か向きを変え、遠くの光まで一本につながっていた。


 「見えました。こっちが本当の道みたいです」


 「真壁さん、もっと早く気づきなさいよ。何のために持ってるのよ、そのレンズ」


 「いや、目の前に道があったので。普通に進めば着くのかと」


 左肩から、呆れたような思念が届いた。


 『りょう にぶい』


 「シオまで言うのかよ」


 「シオちゃん、何て言ったんですか?」


 「気づくのが遅い、だそうです」


 「シオちゃん、正解です」


 桐野まで当然のようにうなずいている。

 俺は言い返すのを諦め、レンズの中の道へ向き直った。



 ◇



 ここからは俺が先頭になった。

 名取がすぐ後ろにつき、さらに後ろの同行者へ声を飛ばす。


 「全員、真壁さんが踏んだ場所から外れないでください!」


 レンズの中では、次の灯りが左側にある。

 けれど、肉眼でそちらを見ても暗闇しかない。

 俺が何もない左側へ曲がると、後ろから小さなどよめきが起こった。

 それでも足元には床があり、レンズの中には白く照らされた道が続いている。


 一つ目の曲がり角を越える。

 次は右へ。

 そこから、もう一度左へ。


 肉眼で見える灯りの列からは離れていくのに、レンズの中では遠くの光へ着実に近づいていた。

 全員が俺の足取りをなぞるように、一列になって進む。

 数分後、レンズの中の道が大きく右へ曲がった。


 その角を越えた瞬間。

 ずっと遠くにあった淡い光が、目の前へ現れた。


 「うわ、近っ」


 思わず足を止める。

 道が右へ曲がった先に、遠くの光へ直結する出口があったらしい。

 ただ、近くまで来ても光の輪郭はぼやけたままだ。

 巨大な何かがあるようには見えるが、それが木なのか、建物なのかすら判別できない。


 「ここから先は、また私が見ますね」


 名取が俺の前へ出た。

 光だけに気を取られず、足元と左右、それから頭上へ順番に目を配りながら進んでいく。


 あと数歩で光へ届く。

 そう見えたところで、名取の体が不意に後ろへ押された。


 「あれ?」


 数歩下がったものの、すぐに踏みとどまる。

 目の前に壁はない。

 光の膜のようなものも見えなかった。


 名取は同じ場所へ近づき、今度はゆっくりと手を伸ばす。

 何もない空間で、手のひらが止まった。

 そのまま押し込もうとしても、少しも先へ進まない。


 「見えない壁があります」


 攻撃や負傷がないことを確かめると、名取は重心を落とし、正面からもう一度進もうとした。

 今度も同じ位置で押し返され、靴底が床を滑る。

 少し横へ移動して回り込もうとしたが、見えない境界は左右へ続いているようだった。

 名取は半歩下がると、こちらへ大きく手を振った。


 「真壁さーん、出番です!」


 「はいはい」


 《導きのレンズ》を持ったまま、名取の隣まで進む。

 名取はすぐ俺の後ろへ回り、周囲の警戒へ戻った。

 俺は名取を押し返した見えない境界と、手元のレンズをまとめて鑑定する。


 ――――――――――――――――――――

 対象:《天空樹の間》内郭結界

 分類:完全隔離型防護結界

 状態:認証外対象を遮断中

 通行条件:《導きのレンズ》の正統継承者

 現在認証:真壁 遼

 開放方法:正統継承者が境界へ接近する

 ――――――――――――――――――――


 世界有数の鑑定士であるエリオットでもなく、最初に結界へ触れた名取でもない。

 この結界が通す相手として認識しているのは、《導きのレンズ》の正統継承者だけだった。


 「これ、俺が近づけば開くみたいです」


 俺の説明が同行通訳を介して伝わると、後ろにいたエリオットとヘルガがそろって結界へ目を向けた。


 「私はすぐ後ろにいます。まずは開くところまでで」


 「分かりました」


 名取がついていることを確かめ、一歩前へ出る。

 何もなかった空間へ、縦に白い線が走った。

 線は俺の正面で左右に分かれ、その間だけ見えない抵抗が消える。


 さらに一歩進む。


 今度は押し返されることもなく、境界の向こうへ出られた。

 背後では白い線が開いたまま、細い通路の形を保っている。

 俺は先に振り返った。


 「通れましたよ」


 名取たちが開いた境界の手前にいる。

 これなら、ほかの人も通れそうだ。

 そう伝えてから、改めて正面へ向き直る。


 ぼやけていた光が消えた。

 いや、消えたんじゃない。

 それまで光に隠されていたものが、一気に視界へ飛び込んできた。


 目の前に、巨大な木がそびえ立っていた。


 「えっ?」


 幹だけでも、星門館の建物がいくつ入るのか分からない。

 白い光を帯びた枝は暗闇の高みへ伸び、その先が見えなくなるほど広がっている。


 「真壁さん?」


 声の変化に気づいた名取が、すぐに境界を越えてきた。

 その足が、俺の横で止まる。


 続いて桐野、エリオット、ヘルガ、御厨家の三人が駆け寄り、支援チームと特命チーム、ドイツ側の同行者たちも開いた通路を抜けてくる。


 境界を越えたところで、全員が同じように立ち止まった。

 誰も、すぐには言葉を出さない。


 「ちょっと待って。何よ、これ……」


 桐野だけが、ようやく口を開いた。

 俺にも答えは分からない。


 ただ、その大きさに圧倒されながら見上げていると、木の根元で白いものが動いた。

 根の陰から現れたのは、子狸ほどの大きさをした真っ白な生き物だった。

 生き物は大勢の人間を恐れる様子もなく、まっすぐこちらへ歩いてくる。

 やがて俺の前で足を止め、じっと顔を見上げた。


 「ようやく現れたか。エリアスの意志を継ぐ者よ」

読んでいただきありがとうございます。

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