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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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前より読めても

 立ち上がった人物は、そのまま自国区画の通路へ出た。


 進行役が名前を読み上げる前に、中央の測定台へ向かって歩き始める。

 先ほど998位へ復帰した保持者への拍手は、もう止んでいた。


 進行役は呼び出しを繰り返さず、測定台へ着いた人物へ本人情報と意思を確認した。


 「残留再測定を受けます」


 会場の通訳設備を通した返答が、俺のイヤホンにも届く。

 その人物は《千殻真球儀》の前へ立つと、すぐに鑑定を通した。


 大型表示盤では、氏名と所属国の下で数字が更新されていく。

 数字は、測定開始直後から速く更新されていた。

 すでに1度、自分が圏外になった表示を見ているからか、測定台の人物は《千殻真球儀》へ向いたまま姿勢を変えない。


 しばらくして、現在の到達値が前回記録を越えた。

 大型表示盤へ、測定中の数字と並んで比較結果が加わる。


 ――――――――――――――――――――

 残留再測定を受けた旧保持者は、前回記録を上回りました。

 ――――――――――――――――――――


 自国区画で、随行員の何人かが拍手を始める。

 前年の記録は、本人が鑑定位を得た時の結果でもある。

 そこを越えたのだから、俺もこれなら残れるのだと思った。


 だが、《千殻真球儀》の測定は、その少し先で止まった。

 前回記録を越えたという文章が残ったまま、世界鑑定士連盟による順位の再計算へ切り替わる。


 追加されたのは、1000位以内へ戻ったという表示ではなかった。


 ――――――――――――――――――――

 残留再測定を受けた旧保持者は、前回記録を上回りました。

 旧保持者の今回の順位は圏外となり、1000位以内への残留は成立しませんでした。

 ――――――――――――――――――――


 始まったばかりの拍手が途切れた。


 「前回より深く読めたのに、駄目なんですか?」


 「前回の自分を越えたかどうかと、現在の1000位以内へ入れるかどうかは別なんです」


 名取は大型表示盤を見たまま答えた。


 「下の順位は、今日だけでも何度か動いていますからねー。今の1000位保持者の結果へ届かなければ、残留は成立しません」


 「前の自分に勝っても、残れないことがあるんですね」


 前年より読めなくなったマルコとは違う。

 今の測定者は、昨日までの自分より先へ進んでいる。

 それでも、今日の新規登録や残留成功で動いた1000位の位置には届かなかったらしい。

 順位式で比較される相手は、自分の過去だけではなかった。


 進行役が、世界鑑定士連盟としての決定を読み上げる。


 「残留判定は不成立です。世界鑑定士連盟は、対象者の鑑定位剥奪を確定します」


 ――――――――――――――――――――

 世界鑑定士連盟は、残留再測定を受けた旧保持者の鑑定位剥奪を確定しました。

 ――――――――――――――――――――


 旧保持者は表示が切り替わるまで《千殻真球儀》の前に立ち、連盟職員の案内を受けて測定台を離れた。

 これで、998位への復帰から続いた順位の押し出しは止まった。


 進行役は、次の新規候補者を呼ぶ。


 そこから数人は、1000位以内へ届かなかった。

 測定結果と認定なしの決定が出るたびに、自国区画から小さな拍手が送られ、次の候補者へ替わっていく。


 その中で、1人の暫定順位が900位より上へ進んでも止まらなかった。

 確定した順位は887位だった。


 ――――――――――――――――――――

 新規候補者が、空位だった鑑定位887位へ登録されました。

 この登録による順位圏外者はいません。

 ――――――――――――――――――――


 新しい保持者へ向けた拍手が、大講堂に広がる。

 大型表示盤が次の呼び出しへ替わっても、今度の拍手はしばらく続いた。


 「誰も落ちないこともあるんですね」


 「887位は空いていましたから。上の方に空位が多いというのは、こういうことです」


 967位や984位へ新規候補者が登録された時は、900位から1000位までが埋まっていたため、旧1000位保持者が圏外になった。

 だが、今回は空位だった887位へ入ったので、順位の押し出しはそこで止まり、残留再測定も発生しない。

 拍手のあとに誰の名前も圏外対象として表示されないことが、その違いをはっきり示していた。


 887位の保持者が自国区画へ戻ると、進行役は次の候補者を呼んだ。


 今度の候補者は956位へ登録された。

 900位から1000位まではすべて埋まっているため、大型表示盤ではすぐに順位の再計算が始まる。


 ――――――――――――――――――――

 新規候補者が、鑑定位956位へ登録されました。

 この登録により、再計算前の1000位保持者が順位圏外となりました。

 順位圏外となった旧保持者は、残留再測定の対象です。

 ――――――――――――――――――――


 進行役が、表示された旧保持者の自国区画へ残留再測定の意思を確認する。


 返答は、国別区画に備えられた連絡機から進行席へ届き、会場通訳設備を介して全区画へ流れた。


 「残留再測定を辞退します」


 「辞退された場合、現在の順位再計算が最終結果となり、鑑定位は失われます。意思に変更はありませんか」


 「意思は変えません」


 進行役は説得せず、返答の確認が完了したことを告げた。

 大型表示盤に、残留再測定の辞退と世界鑑定士連盟の決定が続けて表示される。


 ――――――――――――――――――――

 順位圏外となった旧保持者は、残留再測定を辞退しました。

 世界鑑定士連盟は、旧保持者の鑑定位剥奪を確定しました。

 ――――――――――――――――――――


 「なんで辞退するんですか? 1度だけなら、受けた方がいいと思いますけど」


 「自信がないんでしょうねー」


 名取は、辞退した旧保持者の国別区画を見ながら答えた。


 「ここまでの残留再測定を見た後ですよ? 前回記録を越えられないか、越えても今の1000位以内へ戻れないと思ったのかもしれません」


 「でも、受けなければ確実に剥奪ですよね」


 「結果は同じでも、測定台に立てば、どこまで読めなかったのかまで全員の前に表示されちゃいます」


 少し後ろの席から、真壁専属支援チームの女性担当者が答えた。


 「各国の鑑定機関や行政関係者も見ています。本人にすれば、あの場で笑いものにはされたくない、ということなのでしょう」


 「笑う人はいないと思いますけど」


 「実際に笑う人がいるかどうかではなく、本人がどう感じるかの問題です」


 本当にそう考えて辞退したのかは、本人にしか分からない。

 その国の区画から中央へ出る者はおらず、956位の登録処理だけが終わった。


 進行役は次の名前を読み上げ、新規候補者の測定を続けた。


 1000位以内へ届かない者がいれば、800位台の空位へ入る者もいる。

 900位台へ登録された時は、圏外となった旧保持者の残留再測定まで終えてから、次の候補者が呼ばれた。

 新しい保持者への拍手が終わると、圏外となった旧1000位保持者が別の区画から測定台へ向かう。

 それが何度か続くと、大型表示盤に圏外者の名前が出ても客席はざわつかず、進行役による残留再測定の意思確認を待つようになった。


 何人か進んだところで、名取が手元の進行表を確認した。


 「新規候補者は、あと3人です。その後が特別招待枠ですねー」


 ようやく、俺の番が来る。


 50人近い候補者と、その間に挟まる残留再測定を見続けてきた。

 だが、今は待ち時間が終わることより、中央の《千殻真球儀》へ鑑定を通した先を確かめたかった。


 《導きのレンズ》の備考欄に増えていた一文を思い出す。


 『深淵を読む者よ、千殻真球儀の深淵を暴き見ろ』


 あの球体の奥に、何が書かれているのか。

 エリアスは、そこまで辿り着いた鑑定士へ何を伝えようとしていたのか。


 俺が知りたいのは、もう自分の順位だけではなかった。


 残る3人の測定も、1人ずつ進んだ。

 最後に発生した順位の再計算と残留再測定が終わり、大型表示盤から旧保持者の名前が消える。


 進行役は測定台が空いたことを確認し、新規候補者と残留再測定の終了を告げた。


 大講堂の大型表示盤が切り替わる。


 ――――――――――――――――――――

 特別招待枠――真壁遼。測定台へ。

 ――――――――――――――――――――

読んでいただきありがとうございます。

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