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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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昨日までの鑑定位

 2度目の呼び出しが終わっても、その人物は席を立たなかった。


 大型表示盤には、名前が残ったままだ。


 ――――――――――――――――――――

 マルコ・ベルティーニ(イタリア)は、残留再測定の対象です。

 マルコ・ベルティーニの再計算前の鑑定位は1000位でした。

 マルコ・ベルティーニの現在の順位は圏外です。

 ――――――――――――――――――――


 イタリア区画では、白髪の混じった男を囲むように随行員が座っている。

 誰も彼を急かさないまま、3度目の呼び出しを待っていた。


 会場の中央では、進行役も次の案内へ移らずにいる。

 国ごとに区切られた客席から話し声は消え、通訳用のイヤホンを外す者もいなかった。


 新しい鑑定位保持者が生まれた直後に、昨日までの保持者が席から立てなくなっている。

 澪が言っていた順位式の悪趣味さを、俺もようやく実感した。


 その前に、マルコが隣の通訳へ顔を寄せた。

 日本区画まで、その声は届かない。


 「……受けなければ、どうなる」


 通訳は座席の連絡機で進行席へ確認し、返ってきた答えをマルコへ伝えた。


 「残留再測定は強制ではありません。ただし、辞退した場合は現在の順位再計算が最終結果となります。その場合も、鑑定位は失われます」


 返答を聞いたマルコは、前の席へ手をかけて立ち上がった。

 随行員たちは声をかけず、中央へ続く通路を空ける。


 大講堂の観客全員が見ている中を、マルコは1人で測定台まで歩いた。

 客席から中央までは、普通に歩けば1分もかからない距離だ。

 それでも、マルコが《千殻真球儀》の前へ着くまで、進行役以外は誰も話さなかった。


 「それでは、残留再測定を開始します」


 進行役の案内に従い、マルコが《千殻真球儀》へ鑑定を通した。


 ――――――――――――――――――――

 マルコ・ベルティーニの残留再測定を開始します。

 マルコ・ベルティーニの現在の順位は圏外です。

 《千殻真球儀》は、マルコ・ベルティーニが1000位以内に残留できるかを測定しています。

 ――――――――――――――――――――


 大型表示盤の数字が更新されていく。

 今回は希望再測定の時と違い、会場から声は上がらない。


 やがて、数字の更新が遅くなった。

 何度か切り替わったあと、その動きが止まる。


 直後、大型表示盤へ比較結果が加わる。


 ――――――――――――――――――――

 マルコ・ベルティーニは、前回記録に到達できませんでした。

 ――――――――――――――――――――


 前年に読めていたところまで、今回は届いていない。

 イタリア区画の随行員からも声は上がらなかった。


 測定が終わり、順位の再計算が始まる。

 前回記録に到達できなかったという表示は残ったままだった。


 その下へ、順位結果が追加された。


 ――――――――――――――――――――

 マルコ・ベルティーニは、前回記録に到達できませんでした。

 マルコ・ベルティーニの今回の順位は圏外となり、1000位以内への残留は成立しませんでした。

 ――――――――――――――――――――


 「前回の記録にも届かなかったんですね」


 「はい。前年に1000位を取った時より、今回は手前で止まっています」


 名取の説明と同時に、進行役が最終結果を告げる。


 「残留判定は不成立です。世界鑑定士連盟は、マルコ・ベルティーニ氏の鑑定位剥奪を確定します」


 進行役が読み上げたのは、測定結果ではなく、世界鑑定士連盟としての決定だった。


 大型表示盤が、連盟の決定へ切り替わった。


 ――――――――――――――――――――

 世界鑑定士連盟は、マルコ・ベルティーニの鑑定位剥奪を確定しました。

 ――――――――――――――――――――


 マルコは《千殻真球儀》の前に立ったまま、表示を見ていた。

 連盟職員が退出経路を案内しても、すぐには動かなかった。


 「昨日まで、私は鑑定位保持者だったんだ……」


 その言葉は、そばにいた連盟職員にだけ届いた。

 イタリア区画では随行員の1人が通路まで迎えに出たが、マルコへ何を言えばいいのか決められない様子だった。


 マルコは連盟職員に促され、イタリア区画へ戻っていく。

 表示から彼の名前が消えると、進行役は次の新規候補者を呼んだ。


 数分前、澪の名前と622位を映していたのと同じ大型表示盤だ。

 測定した結果を正確に出しているだけなのに、今度は1人の鑑定位を奪ったことまで会場全体へ知らせている。


 「前より読めなかったことまで、みんなの前で出す必要あるの?」


 桐野が進行席の方を見ながら言った。


 「だから、趣味が悪いと言ったんです」


 澪が見ていたのは、マルコが戻ったイタリア区画だった。


 「公開せねば順位の信用は保てん。じゃが、気分のよいものではない」


 澪に続いて、玄斎が答える。

 制度そのものを否定する者はいないが、剥奪の表示を見た直後に次の候補者を応援できる者もいない。


 測定台では、次の候補者が《千殻真球儀》へ鑑定を通していた。

 その結果は、1000位以内へ届かなかった。


 ――――――――――――――――――――

 測定を受けた新規候補者は、1000位以内に入りませんでした。

 世界鑑定士連盟は、測定を受けた新規候補者へ鑑定位を認定しませんでした。

 ――――――――――――――――――――


 候補者は表示を見て唇を結んだものの、自分の足で測定台を下りた。

 先ほどとは違い、失う鑑定位はない。

 認定されなかった悔しさと、持っていた資格を失う重さは同じではなかった。


 続く候補者の測定結果は984位だった。


 新しい鑑定位保持者を迎える拍手が起こり、大型表示盤では順位の再計算が始まる。


 ――――――――――――――――――――

 新規候補者が、鑑定位984位へ登録されました。

 この登録により、再計算前の1000位保持者が順位圏外となりました。

 順位圏外となった保持者は、残留再測定の対象です。

 ――――――――――――――――――――


 今度の旧1000位保持者は、最初の呼び出しで席を立った。

 中央へ出ると、進行役の確認を受けて残留再測定を始める。

 さっきのマルコと同じように圏外へ出た者だが、辞退しても結果が変わらないことは、もう会場の全員が知っている。


 前回記録を越えてからも鑑定は続き、確定した順位は998位だった。


 ――――――――――――――――――――

 残留再測定を受けた旧1000位保持者は、鑑定位998位へ復帰しました。

 ――――――――――――――――――――


 本人が大きく頭を下げ、自国区画の随行員たちが立ち上がって拍手を送った。

 先ほどの剥奪を見た後だからこそ、残れたことへの喜びは大きい。

 998位でも、鑑定位保持者であることに変わりはない。


 だが、998位に1人が戻れば、それまで998位から1000位だった保持者は1つずつ下がる。


 拍手が続く中、大型表示盤は次の内容へ切り替わった。


 ――――――――――――――――――――

 残留再測定者が、鑑定位998位へ復帰しました。

 この復帰により、再計算前の1000位保持者が順位圏外となりました。

 順位圏外となった保持者は、残留再測定の対象です。

 ――――――――――――――――――――


 次の圏外者が表示されると、別の国の区画が静かになる。


 進行役が次の名前を読み上げるより先に、その人物は自国区画の席から立ち上がった。

読んでいただきありがとうございます。

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