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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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シオの食レポin世界鑑定学会(後編)

 2店目で、店主が2つの品を見せた。


 1つは、透明度の高い青色の魔石。

 きれいに磨かれた規格品で、値札は450ドルだった。


 その隣には、青い加工端材をまとめた90ドルの袋がある。

 大きさは不揃いで、表面も白く曇っていた。


 名取が、シオが触れてよいかを尋ねる。

 店主が頷いてから、シオは2つを見比べた。


 最初に450ドルの魔石へ触手を伸ばす。

 けれど、持ち上げずに触手を戻した。


 次に、90ドルの袋へ触手を移す。

 取り出したのは、割れ口の奥だけ濃い青色が残る小さな欠片だ。


 俺は店主の許可を得て、450ドルの魔石と90ドルの加工端材を別々に鑑定した。


 高い方は、表示どおり品質のよい魔石だった。

 加工端材も同じ鉱脈から切り出された物で、内部の純度は大きく変わらない。


 ただし、小さくて形も揃っていない。

 決まった寸法の部品を作れないため、商品としての価値が下がっていた。


 だが食べ物として魔石をシオ基準で考えると、その価値もかなり変わってくる。

 シオが1欠片を取り込むだけなら、形の違いは問題にならない。


 「高い方も、ちゃんといい魔石です。でも、シオが食べる分には、こっちの端材でも中身はあまり変わりません」


 名取が英語へ訳す。

 店主は、規格品を切り出した時に出た端材だと認めた。


 俺は90ドルを支払った。

 その後で、シオは選んだ欠片を胴体へ押し当てる。


 青い光が殻の内側を走った。

 専用スマホに感想が出る。


 『こいあじ』


 桐野が450ドルと90ドルの値札を順に映した。


 「それなら安い方でいいよね。シオちゃん、高い物に飛びつくわけじゃないんだね」


 『450ドル回避した!』

 『中身ほぼ同じで90ドルならそっちだわ』

 『食用だと形を整える必要ないのか』

 『予算無制限でも450ドルは回避』

 『大将より財布に優しい』

 『ませきまいすたー、財布にも優しい』

 『シオちゃんは高い順に食べてるわけじゃないんだな』


 予算無制限と言い切った直後なのに、450ドルを選ばれなかったことへ、少し安心した。


 「予算無制限の大将、今、本気で財布の方を心配したでしょ」


 「……してません」


 『した顔だった』

 『大将、財布は正直』

 『店主から450ドルの魔石を渡された時手が震えてたの見たぞ』


 3店目からも、手順は変えなかった。

 名取が試食の許可を取り、店主の説明を訳す。

 シオが候補を選び、俺が安全性と魔力の入り方を鑑定する。代金を支払ってから、買った袋の中の1つだけをシオが試す。


 3店目に並んでいたのは、外側が淡い緑色で、割れた中心だけ色の濃い小粒魔石だった。

 外と中の出力差が大きく、魔道具の材料としては規格外になっている。


 シオは何袋かを見比べ、中心の濃い粒が多い袋を選んだ。

 俺が安全を確かめて120ドルを払い、一番小さな1粒だけを渡す。


 緑色の光が殻の中心へ集まった後、専用スマホに感想が出た。


 『うむ こいあじ よきよき』


 4店目は、灰色の筋が入った乳白色の薄片魔石だった。

 魔道具の核にするには薄すぎるが、灰色の筋に残った魔力が少しずつほどける。


 シオは筋の本数を見比べて1袋を選んだ。

 鑑定の許可を取り、安全を確かめて160ドルを支払う。


 小さな薄片を1つ取り込むと、シオの殻に弱い光が長く残った。


 『ながもち』


 「食レポの語彙が増えた」


 桐野が嬉しそうに言う。


 5店目でシオが選んだのは、紫色の平たい欠片だった。

 大きな魔石を切り分けた時に出た薄い端材で、部品にするには厚みが足りない。


 それでも、紫色の細い筋には魔力が濃く残っていた。


 シオは並んだ袋を1つずつ見て、220ドルの袋を選ぶ。

 この日、魔石に払った中では一番高い。


 店主の許可を得て鑑定し、有害な鉱物も汚染もないと確かめる。

 220ドルを支払ってから、端の小さな欠片だけをシオへ渡した。


 紫色の光が殻の内側を強く流れた。

 シオはすぐに専用スマホへ入力する。


 『いちばん こいあじ』


 『シオ、世界の魔石を食べ比べ』

 『30、90、120、160、220ドルか』

 『ちゃんと少しずつ上がってる笑』

 『1店1個だから食べ放題ではないな』

 『残りは全部お持ち帰りだから今夜はパーティーだな』

 『シオちゃんの魔石たべてるとこ見たこと無かった』

 『たしかにこれレア映像じゃね?』

 『シオちゃんの魔石を食べている姿……尊い……』

 『よきよき、こいあじ、なかこいあじ、ながもち、いちばんこいあじ』

 『ませきまいすたーの世界大会だった?』


 5店目の試食を終えたシオは、買った魔石が入っている俺の買い物袋を見た。

 専用スマホへ最後の感想を表示する。


 『よきよき ろうどうたいか』


 その場で食べたのは、各店で小さな1粒か1欠片だけだ。

 残りは全部持ち帰る。


 「合計は……620ドルか……」


 「予算無制限の大将、620ドルでちゃんと止まったね」


 「シオちゃんの方が、真壁さんより堅実ですねー」


 「最初からシオを信用してましたから」


 「450ドルを選ばなかった時、安心してましたよねー」


 「……そんなことはないです」


 桐野が撮影用スマホを買い物袋へ向ける。

 画面には、赤褐色から紫まで、色の違う5つの袋が入った。


 「魔石代は620ドルでした。昨日買ったランタン60ドルと、今日の杖80ドルを足して、今回のフリーマーケットでの購入総額は760ドルです」


 コメントの流れが、また一段速くなった。


 「今回は、壊れた道具だけじゃなくて、シオの食事も買いました」


 『大将、本当に620ドル払った』

 『予算無制限を620ドルで止めるませきまいすたー』

 『回収屋がシオちゃんのために金を使ったぞ』

 『シオちゃんの労働対価、無事支給』

 『フリマで760ドル使って、道具2つだけで再評価15,000ドルか』

 『食べ放題じゃなくて5袋購入です』

 『それを世間では食べ歩きと言います』

 『明日からまた壊れた物しか買わなそう』


 最後のコメントは否定しなかった。


 桐野が撮影用スマホをシオへ向ける。

 シオは専用スマホへ文字を打ち、配信画面へ見せた。


 『ごちそうさま』


 「それじゃ、今日はここまでにします。見てくれてありがとうございました」


 桐野が終了操作を行い、配信が切れた画面を俺にも見せた。


 配信を終えた後も、俺たちは同じ共用サロン前の庭園にいた。

 白い石畳の後ろには、魔石店の色布と、色とりどりの魔石が並ぶ木箱が見える。


 「せっかくなので、ここで写真を撮りませんかー?」


 名取が最初の30ドルの魔石を売った店主へ、写真を頼めるか英語で尋ねた。

 店主は笑って引き受け、桐野からスマホを受け取る。


 俺と桐野と名取が、白い石畳の中央へ並んだ。

 シオは俺の肩へ戻り、最初に買った赤褐色の魔石の袋を触手で持っている。


 背後へ魔石店が入る位置だった。

 店主の合図に合わせて、4人で写真に収まった。


 桐野が返してもらったスマホで画像を開く。

 中央で魔石の袋を掲げるシオを見て、名取がすぐに同じ写真を送ってほしいと言い出した。


 「後で送る。シオちゃんにもね」


 3人が画像を見ていると、名取が思い出したように俺を見た。


 「真壁さん。さっきから、明日は自分たちが値段をつけた品も見てほしいって頼まれてるんですよー」


 「今日みたいに、その場でですか?」


 「はい。勝負というより、自分の見立てと真壁さんの見立てがどこまで同じか、比べたいみたいです」


 桐野は周囲の店を見て頷いた。


 「今日の鑑定を横で見てたら、試したくなるよね。枠とガラス板みたいに、自分が値段をつけた範囲の外まで見られるかもしれないし」


 その会話を聞いていたシオが、専用スマホへ文字を出した。


 『あしたも くる』


 俺は、シオが持つ赤褐色の魔石の袋を見た。


 「明日は食べ放題じゃないからな」


 シオは魔石の袋を持ったまま、いつもよりもご機嫌な素振りをみせていた。

読んでいただきありがとうございます。

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