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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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条件付きの依頼

 本日カクヨムのほうでサポーター専用SS『WEG東京 鑑定競技を解説します!④』が公開されています!

 本編エピソードに入っていたのですが、長すぎるという理由で泣く泣くカットした真壁のWEG東京鑑定競技のエピソードとなります。全5話形式で、本日は4話目を公開しています。数日後に4話目を公開予定です。

 それから2日後。

 10月30日の朝を迎えた。


 午前10時からは、アメリカダンジョン省との正式な会談が入っている。

 俺は朝から日本側の打ち合わせ室に呼ばれ、支援チームと内閣府特命チーム、それから外務省の担当者に囲まれていた。


 テーブルに置かれた資料には、《フロンティア・コンパス》の写真と、これまでにアメリカ側が行った調査の概要が並んでいる。

 針と核を失った外殻の来歴や、正式会談で依頼される内容について、ひと通り説明を受けた。


 「……という話が、この後行われる予定です」


 外務省の担当者が説明を終えた。


 「なるほど……」


 俺が頷くと、特命チームの担当者が身を乗り出した。


 「真壁さん、これは別に受けなくてもいい依頼の部類です」


 「えっ?」


 てっきり、ここまで説明したのだから受けてほしいと言われるものだと思っていた。


 「最後に、受けてくださいっていう話をされるのかと思ってました」


 特命チームの担当者と支援チームの女性が顔を見合わせ、困ったように笑った。


 「もちろん、我々は国に仕える役人です。国益を第一に考えなくてはならない立場であることに違いはありません」


 「それは、まあそうですよね。そこは俺も理解しているつもりです」


 俺がそう返すと、担当者はアメリカ側の調査結果が載ったページを開いた。


 「ですが、この話はどうにも胡散臭い。表に出ていない事情があるような気がしています」


 「裏、ですか?」


 「そうです。我々も、この話を打診されてから可能な範囲で調べました。アメリカ側が示した来歴も、欠損の記録も、これまでの鑑定で失われた部品を追えなかったという説明も、確認は取れています」


 そこまで話し、担当者は一度言葉を止めた。


 「確認は取れているんです。だからこそ、なぜ、という疑問が残ります」


 外務省の担当者が、その説明を引き継いだ。


 「アメリカは、世界でも群を抜いたダンジョン技術先進国です。技術だけではありません。自国にある豊富なダンジョン資源を有効活用し、経済でもほかの国を大きく引き離している超大国です。そのアメリカが、なぜ自分たちで調べきれなかったのか。そこが、どうしても納得できないんです」


 「ああ……なるほど。そう言われると、おかしいですよね。なんで俺に依頼してくるのか」


 「ただ、それだけで依頼を疑い切れないのが厄介なんです」


 支援チームの女性が、資料に載っている俺の過去の鑑定記録を示した。


 「真壁さんの鑑定能力は、鑑定業界の中でも図抜けています。世界上位の鑑定士でも再現できなかった結果を、何度も出していますから。超大国としてのプライドを曲げてでも依頼することが、そこまで不自然ではないんです」


 アメリカが何かを隠している可能性はある。

 ただ、本当に俺の鑑定能力を必要としているだけかもしれない。


 どちらか一方に決められる材料はなく、誰もすぐには続きを口にしなかった。


 「なるほど……皆さんの言っていることは理解しました」


 「ありがとうございます。では、この話は受けない方向で……」


 「いえ、この依頼を受けようと思います」


 担当者が言い終えるより先に答えた。


 テーブルを囲んでいた3人の動きが、同時に止まった。



 ◇



 午前10時になる少し前に、俺たちは指定された談話室へ向かった。


 今回の会談はアメリカ側の指定により、機械式の通訳機ではなく、人間の通訳を介して行われる。

 外務省が用意した通訳担当も、俺たちと一緒に部屋へ入る。


 円卓の向かいでは、アメリカ側の2人が先に待っている。

 俺たちが入ると、ダニエル・クロフォードは両手を広げながら立ち上がった。


 英語で勢いよく話し始め、通訳が一拍遅れて日本語へ直す。


 「どうも初めまして、ミスター・マカベ! アメリカダンジョン省、国際ダンジョン協力局長のダニエル・クロフォードです!」


 大げさなくらい明るい挨拶だった。


 隣にいたサイラス・グレイも立ち上がり、こちらへ頭を下げる。


 「先日ぶりですね、ミスター・マカベ」


 通訳が2人分の挨拶を訳し終えるのを待ってから、俺も頭を下げた。


 「あ、どうも。真壁です」


 俺の返事も英語へ訳される。

 それを聞いたクロフォードが席を勧め、俺たちは円卓を挟んで向かい合うように座った。


 簡単な挨拶が終わると、クロフォードはすぐに本題へ入った。


 「本日、ミスター・マカベへ正式にお願いしたいのは、《フロンティア・コンパス》の鑑定です」


 通訳の日本語を聞きながら、手元へ配られた資料を開く。

 古びたコンパスの外殻が、大きな写真で載っていた。


 「この遺物は、伝説の探索者アビゲイル・ローワンの死後に回収されました。しかし、その時点ですでに、方角を示す針と中央の核が失われていたのです」


 「回収された時から、2つともなかったんですか?」


 俺の質問が英語へ訳されると、クロフォードは頷いた。


 「はい。外殻には破壊された痕跡がなく、部品が外へ持ち出された記録もありません」


 「それで、アメリカでも2つの行方が分からないままなんですね」


 通訳が伝えると、今度はサイラスが答えた。


 「私を含め、多くの鑑定士が長年調べてきました。ですが、失われた部品が今どこにあり、どんな状態なのかは読み取れませんでした」


 その返答が訳されるのを待ち、クロフォードが依頼内容を続けた。


 「そこで、ミスター・マカベには針と核の所在、そして《フロンティア・コンパス》が本来どのような目的で使われていたのかを調べていただきたいと考えています。可能であれば、完全な状態へ戻すための手掛かりもお願いしたい」


 「直せるなら、そこまで調べてほしいということですか?」


 通訳を介して確認すると、クロフォードは大きく頷いた。


 「そのとおりです。もちろん、未知の遺物ですから、必要な安全対策と調査環境は我々が責任を持って用意します」


 通訳がそこまで訳し終えると、俺は少し遅れて頷いた。

 その反応を見たクロフォードが、改めてこちらへ問いかける。


 「いかがでしょう。どうか、この依頼をお受けいただけないでしょうか」


 返事をする前に、俺は日本側の3人を順番に見た。


 支援チームの女性が、最初に小さく頷いた。

 特命チームと外務省の担当者も、それに続く。


 朝の打ち合わせで、最終的に決めるのは俺だと、改めて確認していた。


 「分かりました。お受けします」


 通訳が英語へ直した途端、クロフォードが椅子から立ち上がった。


 「ありがとうございます、ミスター・マカベ! アメリカダンジョン省を代表して、心から感謝を――」


 「ただし、この条件を飲んでもらえるなら、です」


 通訳が俺の言葉を伝えると、立ち上がっていたクロフォードの動きが止まった。


 俺は、考えていた条件を続けて伝えた。


 通訳がその内容を英語へ直す。

 最後まで聞いたクロフォードは椅子へ座り直し、サイラスと顔を見合わせた。


 クロフォードとサイラスが英語でいくつか言葉を交わしたあと、クロフォードがこちらを向く。


 「その条件を出すということは……我々が望む結果、すなわち《フロンティア・コンパス》を完全な状態へ戻す自信がおありだ。そういうことですか?」


 俺は頷いてから答えた。


 「ええ。もう、なんとなくですけど……できると思っています」


 通訳が、そのまま英語へ直した。


 今度は、クロフォードもサイラスも何も言わなかった。

 日本側の3人だけでなく、通訳担当まで俺を見ている。


 少しして、クロフォードは俺の出した条件をUS-DDA側で正式に確認し、改めて回答すると約束した。

 それを最後に、この日の会談は終了となった。



 ◇



 日本側の部屋へ戻ると、扉が閉まるのを待っていたように3方向から声が飛んできた。


 「ま、真壁さんっ! あの条件はなんなんですか?!」


 支援チームの女性が、俺の正面へ回り込む。


 「そうです。事前の打ち合わせでは、一言もありませんでしたよね?」


 外務省の担当者は、会談中より明らかに早口になっていた。


 「それに、すでに復旧の心当たりがあるとは、どういうことですか? 安全面も含めて、先に確認させてください」


 特命チームの担当者まで続く。


 俺の肩にいたシオが、専用スマホを操作した。

 表示された画面を、こちらへ向ける。


 『おもろ』


 「あはは。いや、まあ、その……」


 助けを求めるつもりで周りを見たが、味方はいなかった。


 会談が終わったと聞き、部屋へ合流していた桐野だけが、少し離れたソファーから口を挟む。


 「まあ、真壁さんのことだからねー。よく分かんないけど、なんかしでかす算段立ててるんでしょ?」


 「しでかす算段って……」


 苦笑しながら返したが、3人からの追及は止まらなかった。


 結局、俺はアメリカ側との正式会談よりも長い時間、いつもの説教を受けることになった。


読んでいただきありがとうございます。

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