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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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真壁とエリオット①

 翌日、10月28日。


 眠りの底へ、聞き慣れた声が飛び込んできた。


 『あさー!』


 頭のすぐ横からである。


 布団を引き上げても、声は頭の中へ直接届く。


 『あさー!』


 「……分かった。起きる」


 しぶしぶ目を開けると、枕元でシオが殻から身を乗り出していた。


 「最近、お前、その起こし方だな……」


 『まいぶーむ』


 「……そうですか」


 スマホを手に取って画面を見る。

 午前6時だった。


 昨日は早朝の配信に始まり、世界鑑定学会から予定外の聴取まで受けている。

 もう少し寝かせてほしかったが、起きてしまったものは仕方がない。


 シャワーを浴びて部屋へ戻り、ソファーへ座る。

 備え付けの冷蔵庫から水を出し、スマホで今日の予定を開いた。


 午前中は、支援チームと内閣府特命チームとの打ち合わせだけだった。

 昨日の聴取内容と、センター配信後の情報管理について確認するらしい。


 世界鑑定学会では今日も研究発表と討議が続くが、俺に登壇予定はない。

 アメリカダンジョン省との正式面会は10月30日なので、まだ2日ある。


 「今日はゆっくりできそうだな」


 独り言を聞いたシオが、専用台座の上からこちらを向いた。


 台座の隣には、高純度魔石が4個並べてある。

 シオはそのうち1個へ触手を添え、専用スマホを横向きに立てて動画を見ていた。


 魔石をつまみながらソファーで動画を見る。

 やっていることだけなら、休日の人間とあまり変わらない。


 「ずいぶんと人間じみてきたよなぁ」


 『おやの えいきょう』


 「俺のせいかよっ」


 シオは否定せず、動画へ意識を戻した。


 俺もソファーへ深く座り直したところで、客室のチャイムが鳴った。


 こんな朝から誰だと思いながら扉を開ける。


 「朝ごはんいこー!」


 扉の前に立っていたのは桐野だった。


 「元気ですね……」


 「昨日、ずっと難しい話に捕まってたんでしょ? 今日はちゃんと朝から人間らしい生活をしないと」


 部屋の奥で、シオが専用スマホと高純度魔石を持ち上げた。

 食事へ行く気はあるらしい。



 ◇



 日本側逗留施設を出て、星門館の中央にある共用サロンへ向かった。

 庭園の白い石畳を3分歩くと、共用サロンへ着いた。


 「そういや、今日はここで朝食なんですね」


 「ここに来てから部屋食ばっかりだったからね。たまにはいいでしょ」


 桐野が後ろを振り返る。


 少し離れたところでは、名取がシオを頭へ載せ、笑顔でスマホを操作していた。

 シオも専用スマホを抱え、頭の上から返事を打ち込んでいる。


 隣にいるのに、相変わらずメッセージで会話していた。


 「後ろは放っておいて、行きましょう」


 「そうね。あの2人、待ってたらいつまでも終わらないし」


 白い石畳を進むと、庭園の中央に大きな建物が見えてきた。


 共用サロンは、星門館の事務局や運営職員の宿泊区画も兼ねている。

 人と話すための会談室、軽く体を動かすための施設、飲食物を提供する区画が集まり、庭園側にはカフェも併設されていた。


 昨日、アメリカ側と日本側が朝食会談を行った個室も、この建物にあるらしい。


 朝食会場は、正面入口から入ってすぐの1階にあった。

 受付で人数を伝えると、庭園へ面したテラス席へ案内される。


 低い生け垣と色の違う花が区画ごとに整えられ、芝生の向こうには小さな噴水がある。

 英国式の庭園らしく、荒野の赤土はどこからも見えなかった。


 「ここだけ見ると、モニュメントバレーにいるとは思えませんね」


 「ほんとほんと。なんか、この庭を見てると実家を思い出しちゃう」


 桐野は生け垣の向こうへ目をやり、懐かしそうに噴水を眺めた。


 「そういや桐野さんって、イギリスと日本のハーフでしたっけ?」


 「ママが日本人で、パパが英国人よ」


 英国の名門ロダン家は、桐野の父方に当たるらしい。


 「へぇ。でも桐野さんって、どっちかというと日本寄りというか、そんな感じします」


 「ママ似なのよ。目はパパと同じ青灰色だから、こういうところは日本人っぽくないけどね」


 桐野が顔を近づけ、両目を大きく開いて見せた。

 朝の光を受けた瞳は、青に薄い灰色を混ぜたような色をしている。


 「はは。俺の倍くらい大きい目ですよね」


 「私、真壁さんみたいな塩顔、嫌いじゃないよ」


 「ほぉ?」


 いつの間にか追いついていた名取が、シオを頭へ載せたまま反応した。


 『りょうは しおがお しおのかお』


 「シオの顔ってなんだよ」


 シオは答えず、名取の頭の上で殻を揺らした。


 席へ着き、テーブルのメニューを開く。

 俺と桐野と名取は、3人とも朝のスペシャルブレックファストを選んだ。


 シオは持ってきた高純度魔石をテーブルへ置き、専用スマホで料理の写真を見始める。


 注文を終えて少し雑談していると、隣のテーブルに1人の男が案内されてきた。


 昨日の非公開聴取で、円卓の向かい側に座っていた人物である。

 目が合ったので、軽く頭を下げた。


 「あ、どうも」


 俺の反応で、桐野と名取も隣の席へ気づいた。


 「Good morning (おはようございます)」


 桐野が英語で声をかけると、男も足を止めて会釈を返した。


 「だれ? 知り合い?」


 桐野が日本語へ戻して俺に聞く。

 答えたのは名取だった。


 「エリオットさんです。現在の鑑定位で最高位にいる鑑定士で、昨日の査問相手ですよ」


 「ああ、あの人がエリオット・ヴェインか。伝説の6人の1人、エリアス・ヴェインの末裔ね」


 桐野は、俺よりもエリオットの肩書に驚いていた。


 「桐野さんは知ってるんですね」


 「探索者なら、名前くらい知ってて当然の人よ。しかし、彼がそうなんだ」


 桐野は空いている椅子の背を軽く叩いた。


 「Would you like to join us for breakfast? (よかったら、一緒に朝食をどうですか?)」


 エリオットは俺たちのテーブルを見て、少しだけ考えた。

 それから給仕へ何かを伝え、隣の席へ置きかけた荷物を持ち上げる。


 「Then, if you don't mind (では、お言葉に甘えて)」


 まさかの4人と1体で朝食を取ることになった。


 給仕が席を整え、4人分のスペシャルブレックファストを運んできた。

 シオの前には、持参した高純度魔石が並んでいる。


 ここから先、桐野たちは英語へ切り替えた。

 もちろん、俺には内容が分からない。


 『あなたがエリオットね。噂は聞いているわ。私は桐野シエル。アルビオン・ナイツ所属の探索者です』


 『あなたがミス・キリノでしたか。私も噂は聞いています。同じ英国人同士、仲良くしていただければ』


 エリオットの挨拶を受け、名取も英語で自己紹介を始めた。


 『私は日本の八咫烏に所属している名取芽衣です。S級探索者で、今回は真壁さんの護衛として参加しています!』


 名取は、普段と変わらない明るさで英語を話していた。

 途中で言葉を探す様子もなく、エリオットの返答にもすぐ反応している。


 『その若さでS級ですか。それも八咫烏所属となれば納得です。よろしくお願いします』


 エリオットは笑みを浮かべて挨拶を返した。


 「えっ? 名取さん、めっちゃペラペラ……」

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