予定外の招集②
本日カクヨムのほうでサポーター専用SS『WEG東京 鑑定競技を解説します!①』が公開されています!
本編エピソードに入っていたのですが、長すぎるという理由で泣く泣くカットした真壁のWEG東京鑑定競技のエピソードとなります。全5話形式で、本日は1話目を公開しています。数日後に2話目を公開予定です。
カクヨムの方ではストーリー進行が遅いですが、専用エピソードを近況ノートの方に掲載していますので、興味ありましたら是非のぞいてみてください(サポーターズパスポート加入などが必要になります)
「はい。聞こえます」
事務局員は頷き、円卓から離れた。
俺の正面には、七鏡座の議長を務めるコンラート・ベルンハルトが座っていた。
「真壁遼氏。急な呼び出しに応じていただき、感謝します」
「あの、最初に聞きたいんですけど、これは説教ですか?」
円卓の何人かが顔をしかめた。
澪は口元を押さえ、玄斎は声を出して笑っている。
ベルンハルトは真面目な顔のまま答えた。
「配信に関する責任を追及する場ではありません」
「よかった……」
「まだ何もよくありません」
後ろから、支援チームの女性に小声で注意された。
ベルンハルトの前には、何冊もの分厚い資料が積まれている。
一番上は、先ほど行ったセンター配信の記録だった。
「本日、あなたはナバホダンジョンの中心領域で、これまで誰も確認できなかった情報を読み取りました」
「あ、はい。すいませんでした…」
「設置者は、エリアス・ヴェイン」
その名前が出ると、会議室の視線がエリオットへ集まった。
だがその視線を気にすることもなく、エリオットは沈黙を貫いていた。
「その情報を、どのような手順で読み取ったのですか」
「最初の鑑定結果が、どうも上から別のもので隠されてる感じがしたので、もう少し鑑定の深度を上げました。そこに、多層鑑定偽装って出てましたけど……」
俺の言葉が通訳機を通して各国語へ変換されるまで、機器の仕様上、わずかな遅れがあった。
そのため、誰もすぐには質問を返さなかった。
通訳された内容が各席へ届くと、円卓の全員が目を見開いた。
それまで沈黙していた七鏡座の一人が口を開く。
「センターに多層鑑定偽装が施されていた……?」
会議室がざわめいた。
ベルンハルトが続けた。
「多層鑑定偽装は、世界鑑定士連盟の創始者が設計した技術です。現在の鑑定士が、容易に見抜けるものではありません」
「でも、見えましたけど」
「その深さを、具体的に説明できますか?」
「ええと……最初に見えた結果の上に、何かが重なっている感じがしたので、まず、それを越えるところまで深度を上げました」
「数値か、層の数で答えてください」
「数値は分かりません。層も数えてないです。一枚ずつ確認したというより、その向こうに本当の結果がありそうだったので、そこが見えるところまで一気に……」
通訳機が俺の説明を各国語へ変えていく。
訳が届くたびに、円卓の鑑定士たちの顔が険しくなった。
「使用した鑑定術式は?」
「いつもの鑑定です」
「鑑定中の負荷は?」
「特にはありませんでした」
ベルンハルトが黙った。
澪は片手で額を押さえている。
シオが専用スマホを掲げた。
『りょう せつめい へた』
会議室にいる何人かが、その表示を読んだ。
「くっ…シオにまでそう言われるとは……」
『じじつ』
「その程度の説明で済む問題ではありません」
七鏡座の一人が口を挟んだ。
「多層鑑定偽装が施されていたのなら、センターを調査してきた鑑定士は誰一人、その存在さえ見抜けていなかったことになります。数値も層数も分からず、見えるところまで深度を上げた。それでは学術的な検証にならない」
その七鏡座の一人は、沈黙を続けていたエリオットへ視線を向けた。
「ヴェイン殿。あなたも、これまでセンターの調査に関わっていたのですか」
名を呼ばれたエリオットが静かに答える。
「正確には、私はセンターを深く鑑定したことがありません。あの場所が祖先の遺産だという事実も、本日まで知りませんでした」
ヘルガだけが、何も言わずエリオットを見ていた。
ベルンハルトはセンターの資料を閉じ、その下にある報告書を円卓へ出した。
「我々も当初は、本日の鑑定だけを確認するつもりでした」
報告書の表紙には、大阪ダンジョン博覧会事件・特別鑑定記録と記されている。
その下には、WEG東京での鑑定記録、ダンジョン管理コンソール、魂魄偽装層、画面越しの鑑定に関する資料まで重ねられていた。
「しかし、センターの件だけを単独で調べることはできないという結論になりました」
「どうしてですか?」
「同じ人物が、過去にも同様の鑑定を繰り返しているからです」
ベルンハルトは、資料に並ぶ案件を一つずつ読み上げた。
大阪ダン博事件に始まり、その最中には、アンデッドグランドドラゴンへ重ねられた外部術式を見抜いたうえで、ダンジョンコアと制御盤へ接続している。
WEG東京では、潜入した偽装人物を判別し、その魂魄層の奥へ隠された闇属性加護まで見抜いた。
競技用ダンジョンを画面越しに鑑定した際には、管理者権限へ接続している。
さらに、今日もナバホ補給基点から、これまで誰にも見つけられなかった情報を読み取った。
読み上げられるたびに、俺の顔が引きつっていく。
「そんなにありましたっけ……?」
「全部あなたの記録よ」
澪が即答した。
シオも専用スマホを向けてくる。
『りょう やらかし きろく』
「や、やらかしとはなんだ、やらかしとは…」
玄斎が報告書を一冊持ち上げた。
「わしは以前、真壁を既存の鑑定士と比べること自体が難しいと説明した」
「御厨玄斎。あなたの個人的評価を確認する場ではありません」
「ならば記録を見ればよかろう。ここには全部残っておる」
「だからこそ、本人から説明を求めるのです」
ベルンハルトが俺を正面から見た。
「センターだけではありません」
円形会議室が静かになる。
「ダン博事件以降、あなたが何を見て、どこまで鑑定を通してきたのか。順に説明していただきます」
ベルンハルトは最初の報告書を開いた。
「では、大阪ダン博事件から始めましょう」
最初のページには、ダンジョン化した会場と、その中央に設置されたコアの記録が載っている。
「真壁遼。あの日、あなたには何が見えていたのですか」
読んでいただきありがとうございます。
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