↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
182/265

回収屋チャンネルinモニュメントバレー③

 赤土と、何もない荒野だけがどこまでも広がっている。


 「なので、ここでは護衛はもちろんついていますけど、イレギュラーはなさそうです」


 「モンスターが出ないって聞いてはいたけど、ほんと気配ないわ。逆に変な感じね」


 桐野が辺りを見回した。

 確かに、周囲から聞こえるのは乾いた風の音と、俺たちの足音や話し声くらいだ。


 「そして、向こうが学会の行われる星門館ですね」


 俺が後方を指さすと、シオが撮影用スマホをそちらへ向けた。


 最初に映ったのは、少し離れて歩いていた支援チームと内閣府特命チームだ。

 さらにその後ろには、近くの岩山に迫るほど巨大な枠状の構造物が立っていた。


 荒野の中に、薄い建築物を一枚だけ立てたようにも見える。


 支援チームと特命チームが、一斉に両腕で大きなバツ印を作った。


 「真壁さん、あれ撮っちゃ駄目だ!!」


 大声まで飛んでくる。


 「あぁ。あれも撮ってはいけないようです。シオ、画面戻して」


 シオはすぐに撮影用スマホを動かし、画面を俺と桐野へ戻した。

 その横で専用スマホを操作し、完成した文字を見せてくる。


 『とき すでに おそし』


 「もう撮っちゃったしねぇ……。説教2時間コースかしら」


 「ちょ、ちょっと桐野さんまで脅かさないでくださいよ……」


 『なんかすげぇ建物? あれ建物なのか? なんかあったな』

 『凄まじい違和感あったなぁ』

 『荒野にあんな巨大な構造物が建ってたけど、なんか薄い建築物みたいだったな』

 『あれが会場??』


 「ははは。みんな、いまのは忘れてください」


 『しっかりと動画に残ってるぞ』

 『凄まじく今さら』

 『シオちゃんじゃないけど、時すでに遅しだぞ』

 『シオちゃんのツッコミ尊い……』

 『なんでも尊くて草』


 コメント欄の反応を見なかったことにして、俺は進行方向へ身体を向けた。


 「さぁ、進みましょう!」


 「はぁ。これが事故配信者の実力……恐るべし」


 桐野が呆れた声で言いながら、俺の隣を歩き始める。


 それからもしばらく、景色はほとんど変わらなかった。

 足元には赤土。

 遠くには赤い岩山。

 その間に、背の低い灌木がまばらに生えているだけだ。


 「ほんと、荒野を進んでいるだけですね」


 「ここがダンジョンって言われないと分かんないよ」


 『ここがダンジョンって言われても誰も信じないよなぁ』

 『ってことはお宝配信はなしか。残念』

 『魔物も何も出てこないんだろ?』

 『それどころかダンジョン由来物の一切が出ないんだと』

 『これがダンジョンとはいかに』


 「多分、見ている人の方が詳しいと思うんですけど、オープンワールド型ダンジョンの成れの果てっていうんですかね。なり損ないのダンジョンみたいです」


 「周りには探索者……の影も見えないしね」


 桐野の言う通り、前にも後ろにも俺たちの関係者以外の姿はない。


 「そして今日のゴール地点なんですけど、この先に唯一のダンジョン建造物でもある《センター》という場所があります。そこを見に行きましょう、という配信です。退屈かな?」


 『いや、こういう配信も悪くないな』

 『WEG東京はある意味コメディ配信みたいなもんだったし』

 『たまには、あの深夜の浅い階層でのゆっくりした配信みたいなのも悪くない』

 『知ってるか? 人はそれをフラグが立ったという』

 『普通なら笑い話なんだけど真壁配信は、なぁ……』

 『我らが王は天から愛されておるのだっ!』


 「なんという不吉なコメント……」


 桐野がコメント欄を覗いて呟いた。


 「い、いや、さすがに事故は起こりようがないでしょ?! 見てください、この何もない荒野をっ!」


 俺は両腕を広げて、周囲を示した。

 どちらを向いても、赤土と荒野しかない。


 『なんか似たようなコメント聞いたことあるような』

 『閉会式での逃げコメントみたいだな』

 『あぁ、事故配信者が事故配信にやられたアレだろ』

 『事故配信者という世界でもまれな配信称号で草』


 「……くっ! お前ら見てろよっ! 今日は何もない、安全な配信だということを証明してみせますっ!」


 「はぁ。普通に配信すればいいのよ、普通に」


 シオも専用スマホを掲げる。


 『これを ふらぐ という』


 それから少し歩くと、平らだった地面が途切れた。


 赤土の中に、一辺が20メートルほどの正方形の空間が、一段低く作られている。

 縁には下へ降りるための階段が設置され、その中央に黒い球体が浮かんでいた。


 「あそこがセンターか。真ん中にあるのが、唯一のダンジョン構造物ですね」


 「へぇ……大きいね。球形で、あれ何メートルあるんだろ。直径で2、3メートルはありそうね」


 「見てください。あれ、浮いてますよ。っていうか、ダンジョンコアにめっちゃ似てますね……」


 口に出してから、少しだけ嫌な記憶を思い出してしまい、表情が曇る。

 だが、気持ちをすぐに切り替えた。


 「とりあえず降りてみましょう」


 俺と桐野は階段を下りた。

 シオも撮影用スマホをこちらへ向けたまま、俺の肩についてくる。


 正方形の空間へ立つと、黒い球体は上から見た時よりも大きく感じた。

 俺たちの頭より高い位置で、支えもなく静止している。


 「真っ黒……。大きいね……」


 「想像以上に大きくて、いかにもダンジョンにありそうな感じですね」


 『くろい しんじゅ みたい』


 『これがセンターか』

 『これだけしかないダンジョン、なんて不気味だ』

 『真壁さん、鑑定してみてよ!』

 『確かに。唯一の鑑定ポイントだな』

 『うーん、このパターン……』

 『あぁ、分かるぞ。事故配信の前触れ的な……』


 「でも、これ鑑定通るの? 随分と調べ尽くされたものだけど」


 「そうですね……。鑑定してみましょうか」


 俺は黒い球体へ意識を向けた。


 鑑定は、抵抗もなくあっさりと通った。


 ――――――――――――――――――――

 対象:未成立ダンジョン核

 分類:ダンジョン形成残滓

 状態:安定

 残存機能:自己存在の維持

 備考:ダンジョン形成に至らなかった核の残骸。

 周辺領域を拡張する機能を失い、現在は自身の存在を維持するだけの魔力循環を続けている。

 ――――――――――――――――――――


 表示された内容を、そのまま読み上げる。


 「どうも、ダンジョンになれなかった残骸、と出ますね。この辺りは予想通りでしょうか」


 「そうねぇ。それっぽいし、驚きはないかな」


 『意外と地味な鑑定結果』

 『まぁ、妥当と言えば妥当』

 『これ見るとそれしか感想ないよなぁ』

 『うーん、このパターン……』

 『あぁ、分かるぞ。事故配信のリーチかかったこの感じ』


 確かに、表示された内容におかしなところはない。

 周囲にモンスターも資源もなく、黒い球体以外にダンジョンらしいものは何もない。


 それでも、鑑定結果を消す気にはならなかった。


 何かが引っかかる。


 表示された情報の表面だけを、別の何かで覆われているような感覚があった。


 シオを見る。

 シオも俺を見返し、わずかに頷いた。


 俺は黒い球体へ向ける鑑定の深度を、もう少しだけ上げた。

 目の前に浮かぶ鑑定結果が、ジジジ、と障害が入ったようにちらついた。


 「……は?」

【新作のお知らせ】

新作『人間嫌いのハイエルフ、父になる』の連載を開始しました!

※ハイファンタジーです。要注意!


人間を嫌っていた長命種のハイエルフが、ひょんなことから人間の赤ちゃんを拾い、慣れない子育てに奮闘するお話です。


本作とはまた少し違った、ほのぼのとした子育てファンタジーになっています。

楽しんでいただけましたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。