回収屋チャンネルinモニュメントバレー②
本日カクヨムのほうでサポーター専用SS『小森千尋は、真壁遼の普通が分からない!』が公開されています!
カクヨムの方ではストーリー進行が遅いですが、専用エピソードを近況ノートの方に掲載していますので、興味ありましたら是非のぞいてみてください(サポーターズパスポート加入などが必要になります)
「かなりご無沙汰の配信になりました。皆さん、お元気でしたでしょうか」
俺がそう続けた途端、コメント欄が一気に流れ始めた。
『おおおおお!!! 回収屋チャンネルきたぞぉぉぉぉい』
『まさかの配信! ……ってあれ? ここどこ?』
『久々の回収屋チャンネルと思って画面映ったら野外で草』
『こんなとこ品川第七ふ頭ダンジョンにあったっけ??』
『しししし……シオちゃん!!』
『相変わらずシオは尊い……』
『最近シオ宗教はやってんなぁ』
予告から待っていた人が多かったのか、コメントがほとんど読めない速さで増えていく。
シオは撮影用スマホをこちらへ向けたまま、もう1本の触手で自分のスマホを操作した。
流れているコメント欄を開き、その画面を俺の目の前へ差し出してくる。
「はははは……」
予想以上の盛り上がりに、乾いた笑いが出た。
『シオちゃんがADやってて草』
『このシオの万能さよ』
『それと比べて真壁さんの配信者としてのスキルの未熟さといったら……』
『まぁそれが魅力でもあるしな』
『我らが王は特出したスキル【事故配信王】をお持ち故』
『事故配信王スキル草』
「相変わらずの盛り上がりっぷりね。さすが事故配信王……」
画面の外から、桐野の声が入った。
「事故配信王じゃないですからっ!」
すぐに否定すると、シオが俺へ見せていたスマホを操作する。
『じこはいしんおう まかべ』
完成した文字を、わざわざ撮影用のスマホへ向けて見せつけた。
「シオまで何を書いてるんだよ」
『え? 誰だこの声』
『聞いたことあるような……』
『シオちゃん相変わらずスマホ使いこなしてるっ!』
『コメント確認しながら即レスまでできるのか』
『撮影しながら別のスマホ操作してるの器用すぎるだろ』
『我らがシオ神なら造作もないこと……』
『うわぁ……やっぱりシオちゃんは尊い……いや、尊すぎる……』
『まぁ真壁さんだし、で最近通じる不思議』
桐野の声が気になる人と、シオの文字入力に驚く人と、いつもの調子で拝み始める人が一度に書き込んでいる。
このままだと話が進みそうにない。
「あー、皆さんに少し訂正があります。配信予告に場所を書いてなかったんですが、品川第七ふ頭ダンジョンではないです」
『そうだよな』
『どう見ても野外』
『じゃあ品川じゃなくて、どこかの階層のオープンフィールドか』
『東京湾岸ダンジョンか? あそこの10階層は確かそうだろ』
『こんな赤土だったっけ? あそこ森と湖の場所だったような』
画面の後ろには、朝日に照らされた赤い岩山と荒野が広がっている。
確かに日本のダンジョンには見えないだろう。
「日本ではないんです。いま実はアメリカに来てまして」
コメントの流れが、一瞬だけ止まったように見えた。
「有名なモニュメントバレーにある、ナバホダンジョンに来ています」
次の瞬間、さっきまでよりも速く画面が埋まった。
『はぁぁぁ? アメリカ?!!』
『え? 真壁さん、アメリカいるの??』
『なんでまた……』
『まさかの海外で草』
『ナバホダンジョンって、確かオープンワールド型ダンジョンだったはず……』
俺は頷きながら話を続ける。
「結構有名なダンジョンみたいで、ここは一切モンスターが出ないオープンワールド型ダンジョンになっています。今日はここで、緊急ですけどダンジョン配信をしたいと思います」
「ちょっと真壁さん、私の紹介まだ?」
また画面外から桐野が声をかけてきた。
「あ、すいません。忘れてたわけじゃなくて、タイミングが……」
『さっきから声してるけど誰かいるのか?』
『この声……まさか……』
『え???』
「はい。本日のゲスト? ですかね。探索者の桐野シエルさんです」
桐野が待ちかねたように画面へ入ってくる。
「ようやく呼び込みとか遅いっつーの! あ、皆さんどうも! 桐野シエルです!」
『うぉぉぉぉぉ!! マジか???』
『えーーーー! 桐野シエルいつの間にか復帰してる!』
『おおお! 退院おめでとうございます!!!!』
『ダン博の英雄がそろうとかマジか!!』
『相変わらずシオちゃんは尊い……』
『おまえらのコメントほんとブレないな』
コメント欄は、さらに訳の分からない勢いで盛り上がっている。
桐野は満足そうに手を振り、俺の隣に立った。
「それで、今日は何でここに来ているかというと、えー、世界鑑定学会に呼ばれてまして。その開催地がモニュメントバレーなんですよ」
視界の端で、支援チームと内閣府特命チームが急に動いた。
何人かが両腕で大きなバツ印を作っている。
「今日から始まっているみたいなんですけど、まだ俺の出番じゃないので、今日はここから配信しようかと思って、緊急配信をやってみました」
バツ印がさらに大きくなった。
だが、何を伝えたいのか分からない。
それを見たシオが、自分のスマホへ文字を打ち込む。
『ばしょとか そういうの いっていいのか?』
「あぁ、みんながジェスチャーしているのって、そういうことか……」
俺は隣の桐野を見る。
桐野は支援チームの様子を見てから、呆れた顔で肩をすくめた。
「あーあ。真壁さん、これ終わったらまた説教行きだね」
『マジかよっ!! 世界鑑定学会??』
『有識者っ! 世界鑑定学会ってなんだ???』
『はぁ。お前ら世界鑑定学会も知らんのか。世界三大学会の一つだぞ』
『毎年開催されてるけど、場所は終了後まで非公開だったはず』
『おー、さすが野生の有識者。分かりやすい』
『なるほど。また配信でポロリしたんか』
『さすが我らが王!! さらりと事故配信、まずは一つっ!!』
『お前らのノリ、俺は好きだぞ』
『また説教草』
「ははは。まぁまぁ。と、とりあえず、このダンジョンの特徴を説明しますね!」
『逃げたな』
『分かりやすいくらいの逃げっぷり』
『WEG東京を通じてそういう部分は磨きかかってるよなぁ』
『しれっと軽い事故配信する癖もついたな』
俺はコメントを見なかったことにして、撮影用スマホの向こうに広がる景色を手で示した。
「ナバホダンジョンには、一般的なダンジョンみたいな入口や地下階層がありません。見ての通り、赤い荒野に異界領域が重なっているオープンワールド型です」
シオが撮影用スマホをゆっくり動かし、周囲の赤土と遠くの岩山を映していく。
「こういう場所が長期間安定していて、人が普通に入れるのはかなり珍しいそうです。それと、このダンジョンには資源も地下階層もなくて――」
俺は一度言葉を切り、何もいない荒野へ目を向けた。
「モンスターが一切出ないダンジョンとしては、世界で唯一とされています」
【新作のお知らせ】
新作『人間嫌いのハイエルフ、父になる』の連載を開始しました!
※ハイファンタジーです。要注意!
人間を嫌っていた長命種のハイエルフが、ひょんなことから人間の赤ちゃんを拾い、慣れない子育てに奮闘するお話です。
本作とはまた少し違った、ほのぼのとした子育てファンタジーになっています。
楽しんでいただけましたら嬉しいです!




