↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
161/265

鑑定学会と休暇交渉(後編)

 「開催は10月27日から10日間です。開催地は国外になります。世界鑑定学会は、世界ダンジョン学会、世界魔法学会と並ぶ世界三大学会の一つです」


 「三つもあるんですか」


 「あります。そして世界鑑定学会は、招待状制です。参加者本人に鑑定士スキルが求められます」


 「俺、研究者じゃないですよ」


 「そこが誤解です。世界鑑定学会は、大学の先生だけが集まる場ではありません。鑑定士本人が審査と発表の対象になります」


 「でも学会ですよね」


 「名称はそうです。ただ、実態は鑑定士本人を国際的に扱う場です」


 「じゃあ、確実に場違いです」


 担当者の返事が一瞬だけ遅れた。

 支援チームの女性が、横から補足する。


 「真壁さん。今回の招待は、御厨家の招待とは別枠です。世界鑑定士連盟が、真壁さん個人を指定しています」


 「俺を指定してなんの意味があるのか…」


 「鑑定位の審査対象になった可能性があります」


 「かんてい、い?」


 「鑑定士の国際順位です。世界的な鑑定士ランキング、と考えてください」


 「ああ、ランキングですか」


 そこで少し分かりやすくなった。

 配信サイトにもランキングはある。

 探索者にもランキングはある。

 たぶん、鑑定士にもそういうものがあるのだろう。


 「国内では御厨玄斎氏が83位です。御厨宗一郎氏が782位。御厨澪氏が822位。日本の鑑定士で国際順位に入っているのは、この三名です」


 「御厨さんたちでもそんな感じなんですか」


 「はい。ですから、真壁さんが順位を得れば、日本国内の鑑定結果を国外へ出しやすくなります」


 「俺、順位とかいらないんですけど」


 「真壁さん個人としては、そうだと思います」


 担当者は、そこを否定しなかった。


 「ですが、国としては違います。鑑定結果は、誰が鑑定したかで国際的な信用度が変わります。低い順位の鑑定士による鑑定は、海外との取引や共同調査では認められないことがあります」


 「つまり、俺に順位が付くと、日本の立場が良くなる、と?」


 「そう捉えてもらってもいいかと」


 「俺の仕事が増える案件では?」


 担当者が黙った。


 「今、否定しませんでしたよね」


 「増えないとは言えません」


 「…ですよね」


 俺はソファーの背もたれに体を預けた。

 この話、聞けば聞くほど危ない。


 学会に出るため国外へ行き、世界の鑑定士に囲まれ、ランキングと日本の国益の話まで背負わされる。

 どう考えるまでもなく、俺の望む普通の休暇から随分と遠い話だ。


 「真壁さん」


 特命チームの担当者が、改めて言った。


 「もちろん、国外へ出ていただく以上、警備体制はこちらで最大限用意します。移動、滞在先、会場内外の安全確保、同行者の調整、すべて政府側で対応します」


 「……それだけ必要な場所に行く時点で、すでに嫌なんですが」


 「お気持ちは分かります」


 「分かってくれるなら、このまま欠席で」


 「ただ、真壁さんの鑑定能力が世界にどう扱われるかは、今後の安全にも関わります」


 「厄介ごとを増やす可能性もありますよね」


 担当者が答える前に、支援チームの女性が額に手を当ててため息をついた。


 「……それは、たしかにそうです」


 「ほら」


 俺は思わず支援チームに指を指した。


 「今、そっちが俺の意見に寄りましたよ」


 「寄ってはいません。ただ、リスクがあることは事実です」


 「リスクがあるなら行かない方が安全では?」


 「短期的にはそう見えます。ですが、招待を無視した場合、世界鑑定士連盟が真壁さんをどう扱うか分かりません」


 「それって、行っても行かなくても厄介じゃないですか」


 「はい」


 「はいじゃないんですよ」


 シオが台座の上で、動画を一時停止した。


 『おしごと』


 「シオまで敵側に行かないで」


 『ろうどうたいか』


 そういうとシオの手元には、朝にはなかった明らかに高純度の魔石が握られていた。 


 「……お、お前はなんてチョロいんだ…」


 支援チームの女性が、ここで切り札らしき話を出した。


 「真壁さん。休暇についてですが」


 「……そこだけは聞きます」


 「正式に調整します。WEG東京関連の対応が一区切りついたことも踏まえ、まとまった休暇を取れるようにします」


 「そこは本当に重要です」


 いい響きだった。

 長期休暇…学会よりずっといい。


 「ただし」


 「はい、ただし、出ました~」


 「世界鑑定学会に参加する前提の相談とセットになります」


 「……こんな見え透いた罠に俺がハマりに行くとでも?」


 「…交渉材料です」


 「言い方が違うだけですよね」


 「その通りです」


 また否定しなかった。

 この人たち、最近だんだん正直になってきている。

 正直と言うよりも、遠慮がかなりなくなってきているような…


 「でも十日間も国外に行くんですよね…」


 「学会は10月27日から10日間です。ただし、全日程に出るかどうかは調整可能です。学会初日、審査関連日、真壁さんに関係する日程だけに出る案もあります」


 「それでも、行ったら絶対何か起きますよ」


 「…起きないようにします」


 「そう言って、何も起きなかったことあります?」


 担当者二人が、同時に答えに詰まった。


 俺は勝った気がした。

 いや、これは勝っても何も解決していない。

 むしろ勝利の数だけ別の何かが減っていく気がする。


 話はそのまま平行線になった。

 向こうは、国益と安全と国際的な信用を説明する。

 俺は、休暇と平穏と面倒ごとの回避を主張する。

 どちらも間違っていないせいで、決定打がない。


 その時だった。


 ローテーブルに置いていたスマホが鳴った。


 支援チームの女性が反応し、特命チームの担当者も会話を止める。

 こんなタイミングで鳴る私用電話は、だいたいろくなことにならない。


 そう思いつつスマホを見ると画面には、桐野シエルの名前が表示されていた。


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。