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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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せかいのにんきもの①

本日カクヨムにて、誰でも読める制限無しSS『シオのこいあじぱーてぃー』を公開しました。

カクヨムの近況ノートに掲載しておりますので、どうぞお楽しみください!

 配信ブースでは、閉会式開始直後から実況者と特別ゲストが中継を続けていた。


 特別ゲストは、探索者番組にもよく出ている有名俳優らしい。

 俺も名前だけは知っている。

 そしてブース側の音声がイヤホンへ流れてくる。


 『さあ、ここで今回、スペシャルなゲストがアリーナから中継してくれます』


 実況者が、いかにもの定番な煽りで続ける。


 『誰ですかね?』


 特別ゲストが乗る。


 『皆さんご存じの、あの人です』


 コメント欄が一気に流れ始めた。


 『いやもうあの人しかいないだろう』

 『事故配信確定演出』

 『このバレバレの煽りがちょっと恥ずかしい』

 『さすがWEG東京は分かっている』

 『閉会式でも事故配信希望とか中々攻めるな』

 『まさか』

 『いや、まさかじゃない』

 『真壁さんだろこれ』

 『早くシオちゃん映して』

 『公式が最後に爆弾持ってきた』

 『あれっ?』

 『おいやめろそれは呪いのこ…』


 迂闊にもコメント欄を見てしまった特別ゲストの笑い声が、ほんの少し引きつった。


 『え、コメント欄が先に当ててますね』


 『では呼んでみましょう。真壁さーん』


 カメラがこちらへ切り替わった。


 俺とシオは、関係者席脇のアリーナ通路に立っていた。

 シオは小さな台座の上で、スマホを構えている。


 「はい、真壁です」


 自分でも、わかるほどにガチガチで緊張している声だった。

 だがそんなことはお構いなく、特別ゲストがすぐに反応する。


 『わー、シオちゃんがスマホ持ってる!』


 イヤホン越しにADの指示が飛ぶ。


 『その会話、拾ってつなげてください』


 「あ、はい。マイスマホで今日は色々と映すみたいです」


 『シオちゃんのスマホなんですか!?』


 「はい。いつの間にか…こんなゴテゴテとしたスマホまで…」


 特別ゲストが笑いながら続ける。


 『めっちゃ女子高生がデコりそうなスマホ持ってますね!』


 シオは、それを褒め言葉として受け取ったらしい。

 殻から、ぱっと光が弾けた。

 細かい光の屑が、シオの周囲にふわっと舞う。


 『開会式みたい!』

 『シオちゃん光った!』

 『かわいい』

 『スマホデコ見せて』

 『光の屑ミニ版じゃん』


 「シオ、あまり光らせすぎるなよ」


 シオはスマホを構えたまま、触手を一本だけ上げた。


 『それでは真壁さん、アリーナの様子をお願いします』


 実況者が振ってくる。

 ADの声もすぐに重なった。


 『アリーナの状況を伝えてください。予定通りで大丈夫です』


 俺は頷き、アリーナへ視線を向けた。


 「見てください。この観客、そして歓声を」


 俺は確かに定番の台詞を言った。

 だが、その先が出てこなかった。


 客席も歓声も選手も、まとめてすごい。

 ただ、それ以外の言葉が出てこない。


 『はい、事故決定』

 『これは優しめの放送事故』

 『真壁さん、そこで止まるの草』

 『あんたさんざん中継やってるだろ』 

 『小学生の作文みたいになってる』

 『この観客、そして歓声を。完』


 イヤホンの向こうで、ADが少しだけ慌てた。


 『真壁さん、何か言ってください。空が青いでも何でもいいですから』

 

 何でもいい。

 そう言われると、とある言葉が頭の中に浮かび上がってくる。


 「……じゃあ、ここにいるみんなに鑑定かけちゃおうかなぁ…なんて」


 そう言った瞬間、この配信を見ている全ての人たちの時が凍った。

 相馬、AD、支援チーム、近くのスタッフ、護衛まで、見える範囲の全員が首を横に振った。

 さらに両手で大きなバツ印を作る。


 怖いくらい皆同じ動作をしていた。

 配信ブース側も一瞬だけ空気が大きく引いた。


 『きょ、今日も真壁さん、飛ばしますね。あはは』


 特別ゲストの笑いが、かなりかっぴかぴに乾いている。

 コメント欄は、逆に大盛り上がりだった。


 『事故配信の王が事故配信宣言をなさったぞ!』

 『あすのトップニュースはこれだな』

 『さぁ今度は誰が連れていかれるんですか』

 『閉会式で全員鑑定はやめろwww』

 『各国代表、逃げて』

 『どこかの閣下が、お前を何とか人形にしてやろうか、の真壁版だな』

 『なんて恐ろしい言葉だ』

 『今まで生きて来た人生の中でこれだけ恐ろしい言葉はないだろ』


 「冗談です。冗談ですから」


 俺は両手を軽く上げた。

 その時、すぐ後ろから大きな歓声が上がった。


 「ん? まだ何もやってないぞ」


 思わず呟く。

 振り返ると、アメリカチームがすぐ近くまで来ていた。


 さっきまで大型ビジョンに映っていた選手たちが、アリーナ通路をこちらへ向かって歩いてくる。


 俺はここぞとばかりに前を向いた。


 「あ、アメリカチームがすぐ傍を通ります!」


 逃げ切った!

 心の底からそう思った。

 

 閉会式の主役は選手である。

 俺が何か気の利いたことを言えなくても、世界的スターがすぐ近くを通れば映像として成立する。


 ほんの少しだけ、俺にのしかかるプレッシャーが引いていったように感じた。


 その瞬間。


 アメリカチームの列から、一人の女性探索者がこちらを見た。


 ブロンドの髪。

 遠目にも分かる、鮮やかで、そして特徴的な緑の目。

 白と青を基調にしたユニフォームを着ていて、歩くだけで周囲のカメラが追いかける。


 支援チームの担当者が、思わず息を飲み込んだ。

 そしてADがイヤホン越しに選手名を俺に教えた。


 「オリヴィア・グリーン……えっと、有名な人…なんですよね」


 配信ブースにいる実況はようやくまともな答えが返って来たと少しだけ安堵し、その俺の言葉に乗っかっていく。


 『アメリカのS級探索者です。ローガン・ブレイクと並ぶ、アメリカチームの英雄ですよ! 今大会でも金メダルを個人で3つ獲得しています!!』


 「へぇ、そうなんですね」


 『おいっ!なんで知らないんだよ!!』

 『真壁さん相変わらず他の探索者に興味ないな』

 『オリヴィアを前にしてこのテンションの低さよ』

 『これだけ知識が偏っている配信者も珍しいだろ』

 『うぉーオリヴィアだ!!』

 『この配信で近く通るとか真壁さん神がかってるな』

 『なんかアメリカチームがこっち見てるぞ』


 そのオリヴィアが何か騒いで、こっちをチラチラとみていた。

 そしてぴょんぴょん飛び跳ねて、シオを指さした。


 ぱっと表情が明るくなる。

 アリーナ中継のカメラが回っている前で、子供みたいに大きく声を上げた。


 『あーー! シオだ!!!』


 恐ろしい程の速さで、オリヴィア・グリーンがこちらへ駆け寄ってきた。

読んでいただきありがとうございます。

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