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【書籍化&コミカライズ決定】会社をクビになった俺、深夜ダンジョンでゴミ拾いしてたら【鑑定】が覚醒して配信界のトップになった  作者: 小狐


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ダンジョン調整入ります!②

 競技用コースの入口は、通常のダンジョン入口とはかなり違っていた。


 ダンジョンは形状は異なれど、基本的な形として横型エントリー形式と立坑型エントリーに分けられている。

 簡単に言うと、横穴になっているか、落とし穴のようになっているかの違いだ。

 このコースは横型で、直径はおよそ10メートル程度の大穴があるのだが、そこを全て金属で塞ぐ形で覆っており、その最底辺部に人間用の入口が設けられている。


 その入口の見た目は、幅の広い金属ゲートに近い。

 何枚もの金属板が層になり、その奥に黒い開口部がある。

 何重もの金属ゲートになっているのだろうが、いちいち全部を毎回開けるわけにもいかないだろうから、最後の1枚だけを開け閉めしているのだろう。


 入口周辺には、競技運営の職員や技術管理が周囲のスタッフとこれからの話を調整しており、そこに支援チームと護衛を引き連れた俺がダンジョンゲートに近づいていた。

 さらに遠巻きに、各国代表チームの関係者がこちらを見ている。


 ただの確認作業ではないと、もう全員分かっている。

 そんな中で俺は金属ゲートの前で足を止めた。


 「これ、ただの入口じゃないですよね」


 技術管理の女性が反応する。


 「分かりますか」


 「鑑定してみます」


 金属板の表面に、意識を向ける。

 普通の金属ではない。

 魔力を通しにくい層と、逆に一定方向だけ流す層が組み合わさっている。


 すぐに鑑定結果が出た。


 ――――――――――――――――――――

 名称:競技用隔離入口外装

 対象:WEG競技用コース入口

 分類:逆侵食遮断用複合封印フレーム

 状態:稼働中

 機能:ダンジョン領域の外部侵食抑制、競技用回廊の境界固定

 備考:一般公開対象外。外装パネル内側に管理系統接続反応あり。

 ――――――――――――――――――――


 「逆侵食遮断用の複合封印フレーム。ダンジョン側から外へ広がる反応を抑えて、競技用回廊の境界を固定しているみたいです」


 言ってから、周囲の反応に気づいた。

 技術管理の女性が資料を持つ手が若干震えていた。


 「ほ、ほんとに鑑定しちゃうなんて…なんて不用心なことを言ってしまったのか…」


 それを見ていた名取が技術管理の女性の肩に、ぽんっと手を置いた。


 「真壁さんはそういう空気が一切読めない人よ? 不用心に鑑定できますか? なんて言ってはダメ。フラグが立っちゃう」


 「は、はい。以後気を付けます…」


 支援チームの担当者が、ほんの少しだけ小さな声で俺に伝える。


 「真壁さん。その機能、表に出していない情報です」


 「……あ」


 名取だけが、分かりやすく前のめりになっていた。


 「でもすごいですね! さっきの鑑定なんて入口をちらっと見ただけで、そこまで出るんですね」


 空気の読めない人って、果たして1人だけなのだろうか。

 

 「…この程度ならまぁ」


 支援チームの担当者が、そこで言葉を止めた。


 「名取さん」


 「あ、すみません」


 そして舌を出して笑う、

 短い付き合いだが、これは分かる。

 確実にあまり反省していない返事だった。


 競技責任者が気を取り直して周囲を見渡した。


 「ここからは特別な通行権限が必要なエリアです。本来であればここから先は選手、競技運営、指定関係者のみですが、今回は皆さんも一緒に入ることを許可します。中に入っても不用意に触れないでください」


 「分かりました」


 皆、一様に頷いた。

 そして何かしらの手順を踏んだ後にゲートがゆっくりと開いた。


 「うわ…こうなってるんだ…」


 いつも見ていたあの品川ダンジョンとは比べようがない程に、様々な機器が所狭しと設置されていた。


 床と壁の一部に金属パネルが設置され、ダンジョンの岩肌とは別の回廊が作られている。

 選手が通る導線を、なるべくダンジョン本体に触れさせないための構造に見えた。


 それでも、奥へ進むほど、空気はダンジョンのものに近づいていく。


 競技責任者が俺の横に来た。


 「どこで確認しましょうか」


 「ちょっと待ってください。鑑定をかけてみます」


 俺は回廊の先を見る。

 見える範囲の床、壁、天井。

 そして、その奥に続く、競技用コース全体。


 普段の鑑定なら、対象を一つ決める。

 だが今回は、対象が大きすぎる。


 ダンジョンそのもの。

 それも、競技用に隔離された回廊と、奥の本来の領域が重なっている。


 意識を広げた瞬間、シオが動いた。


 『こうせいの ほうじゅ』


 小さな光の玉が一つ、二つ、三つ、四つと浮かぶ。

 淡い光を帯びた宝珠が、俺の周囲に間隔を空けて並んだ。


 名取が声を弾ませる。


 「シオちゃんが何か変な玉出してる。かわいい!」


 「名取さん」


 支援チームの担当者が即座に注意する。


 「はい。業務中でした」


 シオは気にしていない。

 宝珠はゆっくり回りながら、俺の視界の端で光を発している。


 その瞬間、鑑定の感覚が変わった。


 いつものように対象の表面を読むのではない。

 深い穴に向かって、底の方へ視線を向けるような感覚だった。


 通常は見通せない。

 けれど、優しく光る四つの光が、周囲を僅かに照らしていく感覚を覚える。


 競技用コースの表層を超え、金属パネルの下の境界も更に超える。

 その奥にある、本来のダンジョン領域。


 更に下へ、もっと内側へ。

 そこで、引っかかるものがあった。


 細いな…これは何かに繋がっている?

 

 そこから更に鑑定を深く、浸透させていった。


 「……ありました」


 「何がですか」


 相馬が小声で聞く。


 「たぶん、管理系統の接続ラインです」


 そこへ意識を集中する。

 視界の奥に、さっきのHARDモード表示とは違う形式の画面が開いた。


 ――――――――――――――――――――

 接続先:ダンジョン管理コンソール

 対象:東京ダンジョン・有明臨海ゲート/WEG競技用コース

 状態:管理権限照会中

 要求:管理者コード

 備考:ダンジョンコア本体への直接接続は未確認

 ――――――――――――――――――――


 「あ、コンソール画面までいけました」


 「は?」


 今度は、周囲のほぼ全員が言った。


 「え? 真壁さん…いま何と??」


 「ちょっと待っててください」


 鑑定結果には管理者コードを要求している記述がある。

 まさしく、あの時と同じだ。


 ダン博で、ダンジョンコアを扱った時も、最初は権限の壁があった。

 ただし、あの時はコア本体が目の前にあった。


 今回は違う。

 ここにダンジョンコア本体はない。


 「管理者コードが必要か…」

 

 俺は鑑定結果を見ながら、あの時のことを一つ一つ思い出していく。

 

 「ダンジョンを制御するためのコードみたいなのですが…」


 相馬がこのタイミングで口を挟んでくる。


 「ちょ、ちょっと真壁さん! ダンジョン制御までいけるんですか??」


 「うーん。ダンジョンコアと接触できる何かを見つければなんとか…」


 あの時の感覚を、再度思い返す。

 コードを探すというより、ダンジョンコア側に残っている管理用の特徴をもう一度脳裏に浮かべる。

 

 そして俺は、このコンソール画面を直接触ることが出来るものはないかと考えながら、もう一度ダンジョンに対して鑑定を通し始める。


 宝珠の光が、その想いに応えたのか、少しだけ強くなる。

 シオは声を発することはなく、ただ見守っていた。


 数秒後、視界の端に短い表示が浮かぶ。

 ただし、それは管理者コードそのものではなかった。


 ――――――――――――――――――――

 管理者コード:入力待機

 接続状態:未接続

 要求:ダンジョンコア接続端末経由の認証

 備考:現位置からのコード入力不可。近傍に接続端末反応あり。

 ――――――――――――――――――――


 俺は鑑定結果に表示されていた、接続端末反応に注目した。


 「近くに接続端末があるみたいなんですが…」


 すぐに鑑定スキルが接続端末の場所を示した。

 

 「おっ! やっぱりありました!!」


 相馬は恐る恐る尋ねる。


 「あ、あの? 真壁さん、何がですか??」


 「ダンジョンコア接続端末です。だよなぁ…これ、フロアごとにないと管理が難しいですよね」


 周囲は、誰も返事をしなかった。


 俺はその反応を追って、選手用の動線として用意された回廊を見回した。

 競技用に作られた動線は、なるべくダンジョン本体に触れないようになっている。

 ただ、一部だけ点検用で降りられる階段があり、そこから下りられそうだった。


 「ちょっと下ります」


 「ま、待ってください!」


 相馬の声より先に、名取が動いた。


 「追って! 先回りするのよ!」


 護衛が一斉に散る。

 支援チームの担当者も、俺の後ろへついた。


 俺は階段を使って、ダンジョンの岩肌に近い場所へ下りる。

 足元は平らではないが、歩けないほどではない。


 壁の前で止まった。


 見た目には何もない。

 ただの岩壁だ。

 端末らしい物は見当たらない。


 「ここです」


 「……何もありませんが」


 追い付いてきた技術管理の女性が、覗き込み、そして怪訝な表情を見せつつ呟いた。


 「外装で隠れています」


 俺は壁に手を添えた。


 冷たい岩の感触がある。

 その奥に、明らかに別のものがある。


 意識を一点に合わせる。


 ――――――――――――――――――――

 名称:ダンジョンコア接続端末

 状態:外装封鎖中

 位置:競技用回廊外壁内

 機能:管理者コード認証用接続、階層管理系統への限定接続

 備考:管理者コード入力待機。外装開放可能。

 ――――――――――――――――――――


 「開けられそうです」


 「開けられそう、とは?」


 周囲に集まって来た全員が、まだこの状況に追いついていなかった。


 俺は答える前に、表示に従って外装開放を選んだ。


 壁の一部が、音もなく四角く浮き上がる。

 だいたい60センチ四方。

 その正方形の岩壁が、左右に分かれて観音開きのように開いた。


 奥には、黒い端末が埋め込まれていた。

 金属とも石ともつかない素材の盤面に、細い光の線が走っている。


 競技責任者も、技術管理も、安全監査も、支援チームも、そして名取も。

 全員が、それを見ていた。


 「「「「は?」」」」

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