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5話 首狩りの狂犬

 神聖ヴェルディア王国、王都セレスティア。


 夜明けとともに、王都南西部の旧市街《灰色区》に重々しい軍靴の音が響き渡った。


「王国軍だ! 全員、建物から出ろ!」


 黒銀色の甲冑をまとった兵士たちが、狭い路地へ次々と押し寄せる。


 肩には王国軍の紋章。


 手には槍や長剣。


 その後方には、巨大な魔導砲を載せた軍用馬車まで並んでいた。


「何をするんですか!」


「黙れ! 犯罪組織への協力容疑で捜索する!」


 兵士が民家の扉を蹴破った。


 食器が割れ、悲鳴が響く。


 昨日まで食料配給所に並んでいた住民たちは、突然の出来事に怯えていた。


「お前たち、悪の晩餐会から食料を受け取っているな?」


「そ、それは……子どもたちに食べさせるためで……!」


「犯罪組織への協力行為だ!」


 兵士は女性の抱えていた食料袋を奪い、地面へ投げ捨てた。


 乾いたパンが泥に転がる。


「やめて!」


 小さな少女が泣き叫んだ。


 兵士がその腕を掴もうとした瞬間。


「――おい」


 低い声が響いた。


 振り返った兵士の前に、巨大な男が立っていた。


 ザイラス・グレイヴ。


 三十二歳。


 身長百九十四センチ。


 短く切り揃えた黒灰色の髪に、鋭い琥珀色の瞳。


 左頬から顎へ走る古傷が、その凶暴な顔立ちをさらに際立たせている。


 黒い厚手の戦闘服の上には、鈍い銀色の胸当てと肩当て。


 両腕には黒革の手甲を装着し、腰には革製のベルト。


 背中には、身の丈ほどもある大剣《グレイブ・ハウンド》を背負っていた。


「朝っぱらから、人んちで何してやがる?」


「き、貴様……何者だ!」


 ザイラスは獰猛に笑った。


「悪の晩餐会《ノクス・バンケット》戦闘隊長」


 そして、大剣の柄に手をかける。


「ザイラス・グレイヴだ」


 兵士たちの顔色が変わった。


「首狩りの狂犬……!」


「知ってんなら話が早え」


 ザイラスは少女を庇うように立った。


「その汚え手を離せ。用があるなら俺が相手してやる」


     *


 数分後。


 灰色区の広場では、悪の晩餐会の構成員たちが慌ただしく動いていた。


「西側の住民を地下通路へ誘導しろ!」


「診療所の患者を優先だ!」


「逃げ遅れた奴がいないか確認しろ!」


 ザイラスは次々と命令を下す。


 普段の粗暴な態度とは異なり、その指示には一切の迷いがなかった。


 かつて王国騎士として戦場に立っていた経験が、今も身体に染みついているのだ。


『ザイラス! 聞こえる!?』


 耳元の通信魔導具から、フィンの声が響く。


「ああ。どうした?」


『東側からも王国軍が来てる! 確認できただけで百人以上!』


「百人?」


『しかも魔導砲まで持ち込んでるよ!』


 ザイラスは舌打ちした。


「チッ。ずいぶん大盤振る舞いじゃねえか」


『ふざけてる場合じゃないって!』


「大将には連絡したか?」


『とっくに! 今こっちに向かってる!』


「そうか」


 ザイラスは広場を見渡した。


 怯える住民。


 子どもを抱きしめる母親。


 足の悪い老人を支える若者。


 その光景に、彼の表情がわずかに曇る。


「……フィン」


『何?』


「避難路を隠せ。こっちの連中が逃げきるまで、絶対に見つけさせるな」


『分かった。でもザイラスは?』


 ザイラスは大剣を肩へ担いだ。


「俺が時間を稼ぐ」


『……まさか、一人で?』


「こういう仕事は俺が一番向いてんだよ」


 通信の向こうで、フィンが何か言いかける。


 しかしザイラスは一方的に通信を切った。


「さて……」


 琥珀色の瞳が、街の入口へ向けられる。


「久しぶりに暴れるか」


     *


 灰色区の大通り。


 そこには、整然と並ぶ王国軍の兵士たちがいた。


 その先頭に、一人の軍人が立っている。


 三十五歳ほどの男。


 短く整えられた暗褐色の髪。


 冷たい灰青色の瞳。


 黒銀色の軍服には赤い肩章が飾られ、胸元には王国軍の勲章。


 腰には細身の軍刀《シュトルム》が下げられていた。


 ガルディオ・シュヴァルツ。


 王国軍大佐。


「……久しいな、ザイラス」


 その声を聞いた瞬間、ザイラスの表情から笑みが消えた。


「……ガルディオ」


 ガルディオは冷たく微笑む。


「随分と落ちぶれたものだ。かつて王国騎士だった男が、今では犯罪組織の犬とは」


「てめえこそ、まだあのクソ野郎の首輪をつけてんのか」


「総司令官閣下への侮辱は許さん」


「ハッ。相変わらずだな」


 二人の間に、重苦しい沈黙が落ちた。


 十年前。


 二人は同じ王国軍に所属していた。


 同じ軍服を着て、同じ旗の下で戦っていた。


 だが、ある事件を境に、その道は完全に分かれた。


「お前は十年前、軍の命令に背いた」


 ガルディオが告げる。


「命令に従っていれば、今頃は将軍になれていただろう」


「……将軍?」


 ザイラスは低く笑った。


「女やガキを見殺しにして手に入れる地位なんざ、こっちから願い下げだ!」


「軍人は命令に従うものだ」


「……また、それかよ」


 ザイラスの拳が握りしめられる。


 その言葉が、嫌でも十年前の記憶を呼び起こした。


     *


 十年前。


 エルムガルド。


 夜空は、炎で赤く染まっていた。


『助けて!』


『誰か、子どもだけでも!』


 逃げ惑う住民たち。


 崩れ落ちる建物。


 燃え上がる家々。


 若き日のザイラスは、王国騎士として住民の避難誘導を担当していた。


『こちらです! 急いでください!』


 しかし、出口には王国軍の兵士たちが立ちはだかっていた。


『何をしている!? 早く門を開けろ!』


『民間人の退避は認められない』


『……何だと?』


『上官命令だ。区域内の住民は全員、待機させろ』


 ザイラスは耳を疑った。


『このままじゃ全員死ぬぞ!』


『命令だ、ザイラス!』


『ふざけるな!』


 彼は命令を無視し、門へ駆け寄った。


 だが、次の瞬間。


 凄まじい爆発が起きた。


 炎が街を呑み込む。


『騎士様!』


 瓦礫の向こうから、小さな子どもが手を伸ばしていた。


『助けて!』


 ザイラスは駆け出す。


『待ってろ! 今行く!』


 しかし。


 崩れ落ちた建物が、二人の間を遮った。


『――あっ!』


 伸ばした手は、届かなかった。


     *


「……ザイラス?」


 ガルディオの声で、意識が現実へ戻る。


 ザイラスは奥歯を噛みしめた。


「……てめえらは、何も変わっちゃいねえ」


「何?」


「十年前も今も、命令、命令、命令……そればっかりだ!」


 ガルディオは軍刀を抜いた。


「犯罪組織の構成員を全員引き渡せ。協力者も拘束する」


「協力者?」


 ザイラスは背後の住民たちを指差した。


「腹減ったガキがパン一個貰っただけで、犯罪者扱いか?」


「犯罪組織に協力した者は調査対象となる」


「……本気で言ってんのか?」


「我々は命令に従うだけだ」


 ザイラスは大剣を引き抜いた。


「上等だ」


 巨大な刃が、朝日を受けて鈍く輝く。


「十年前の続きといこうじゃねえか!」


     *


「攻撃開始!」


 ガルディオの命令と同時に、兵士たちが突撃した。


 槍を構えた十数人が、ザイラスへ一斉に襲いかかる。


「遅え!」


 ザイラスは大剣《グレイブ・ハウンド》を横薙ぎに振るった。


 ガキィンッ!


 槍が砕け、兵士たちが吹き飛ばされる。


「ぐあっ!」


「何だ、この怪力は!?」


 続く兵士が背後から斬りかかる。


 ザイラスは振り返ることなく大剣を回転させ、相手の武器を弾いた。


 そして、鎧の胸元へ蹴りを叩き込む。


「ぐはっ!」


「どうした! その程度か!」


 獰猛な笑み。


 しかし、敵の数は減らなかった。


 さらに奥から、巨大な魔導砲が運び込まれてくる。


「魔導砲、発射準備!」


 ザイラスが顔を上げた。


「……チッ!」


 砲口の先には、まだ逃げ遅れた住民たちがいた。


 母親に抱かれた幼い子ども。


 歩くこともままならない老人。


 ザイラスの瞳が鋭くなる。


「……やらせるかよ」


 彼は大剣を地面へ突き立てた。


 そして、左手首を刃で浅く切る。


 鮮血が滴り落ちた。


 その瞬間。


 赤黒い魔力が、全身から噴き上がった。


「《狂血装甲》――ブラッド・アーマー!」


 流れ出た血液が魔力と反応し、漆黒と深紅の装甲へ変化していく。


 肩には鋭い棘。


 両腕には獣の爪を思わせる装甲。


 胸元には赤黒い紋様が浮かび上がり、琥珀色の瞳が獣のように輝いた。


「さあ……」


 ザイラスは大剣を持ち上げる。


「ここからが本番だ!」


「発射!」


 魔導砲が轟音とともに放たれた。


 巨大な光弾が、広場へ迫る。


「おおおおおっ!」


 ザイラスは真正面から飛び込んだ。


 大剣と血の装甲が、砲撃を受け止める。


 ドォォォン!


 衝撃で石畳が砕け散った。


「ぐっ……!」


 口元から血が流れる。


 それでも、ザイラスは倒れない。


「……そんなもんかよ!」


 彼は地面を蹴った。


 一瞬で魔導砲へ接近する。


 そして、大剣を振り下ろした。


 ガァァンッ!


 砲身が砕け散り、魔導砲が沈黙した。


「ば、化け物だ……!」


 兵士たちが後ずさる。


「首狩りの狂犬……!」


 ザイラスは荒い息を吐いた。


「ハッ……まだまだ、こんなもんじゃねえぞ」


 だが、その言葉とは裏腹に、身体は悲鳴を上げ始めていた。


 《狂血装甲》は自身の血液を魔力へ変換する能力。


 使えば使うほど、肉体は消耗する。


 すでに視界の端が霞み始めていた。


 そのとき。


「……お母さん!」


 小さな泣き声が聞こえた。


 ザイラスが振り返る。


 瓦礫の陰に、幼い少女が取り残されていた。


「……っ!」


 その姿が、十年前の記憶と重なる。


『助けて!』


『お願い、騎士様!』


 炎の中で伸ばされた、小さな手。


 掴めなかった手。


「……くそっ!」


 ザイラスは敵兵を押しのけ、少女へ駆け寄った。


 しかし。


「戦場で背を向けるとは、愚かな!」


 ガルディオの軍刀が閃く。


 ザシュッ!


 ザイラスの肩が斬り裂かれた。


「ぐあっ……!」


 鮮血が飛び散る。


 だが、彼は止まらなかった。


 少女を抱き上げ、瓦礫の向こうへ跳ぶ。


「おい! 誰か、このガキを連れてけ!」


 近くにいた構成員が駆け寄る。


「隊長!」


「いいから早くしろ!」


 少女は泣きながら、ザイラスの服を掴んだ。


「……ありがとう」


 その言葉に、ザイラスの表情がわずかに揺れた。


「……おう」


 そして、小さく呟く。


「今度は……間に合ったな」


     *


 しかし、戦況は悪化していた。


 ザイラスの《狂血装甲》が、徐々に崩れ始める。


 肩の装甲に亀裂が入り、赤黒い魔力が霧となって消えていく。


「……くそっ」


 膝が震える。


 視界が霞む。


 それでも、背後には避難途中の住民たちがいた。


 ガルディオが軍刀を構える。


「終わりだ、ザイラス」


 兵士たちが一斉に武器を向けた。


「……まだだ」


 ザイラスは大剣を地面へ突き立てる。


「こいつらが逃げきるまでは……」


 歯を食いしばり、大剣を持ち上げた。


「俺は、倒れねえ!」


 ガルディオが軍刀を振り上げる。


「ならば、ここで死ね!」


 その瞬間。


 ――ジャラリ。


 黒い鎖が、石畳を這った。


「……何!?」


 ガルディオの足元から、漆黒の鎖が伸びる。


 そして、低くよく通る声が響いた。


「随分と楽しそうだな」


 兵士たちが振り返る。


 石畳の道の向こうから、一人の男が歩いてきた。


 銀白色の長い髪。


 血のような深紅の瞳。


 漆黒の軍服風ロングコート。


 高い襟元には銀糸の刺繍が施され、胸元では細い銀鎖が揺れている。


 腰には黒剣《レクイエム》。


 ヴァレイン・クロイツ。


 悪の晩餐会《ノクス・バンケット》首領。


 黒冠の悪魔《ノクス・レガリア》。


「……大将?」


 ザイラスが顔を上げる。


 ヴァレインは彼の傷を見て、小さくため息をついた。


「お前は一人で戦うのが好きだな」


 ザイラスは血のついた口元を拭う。


「大将が遅えんだよ!」


 ヴァレインは笑った。


「悪かったな」


「ったく! 次はもっと早く来い!」


「善処しよう」


 軽口を叩きながらも、ヴァレインの瞳は冷たく光っていた。


「ザイラス」


「ああ?」


「後ろへ下がれ」


「……何?」


「住民の避難は、もうすぐ終わる」


 ヴァレインは黒剣を抜いた。


「ここからは俺が相手をする」


 ザイラスは何か言いかけた。


 しかし、ヴァレインの表情を見て口を閉じる。


「……分かったよ、大将」


     *


 ヴァレインの足元から黒い霧が広がった。


 《罪喰い》。


 罪を具現化する鎖が、兵士たちへ伸びていく。


「なっ……!?」


 民間人への暴力。


 違法な拘束。


 略奪。


 実際に罪を犯した兵士たちの身体へ、漆黒の鎖が絡みついた。


「ぐあっ!」


「何だ、これは!?」


 一方、罪を犯していない若い兵士には、鎖が反応しない。


 ヴァレインは彼を見て、冷たく告げる。


「剣を捨てろ。ここで死にたくないならな」


 若い兵士は震えながら武器を下ろした。


 ガルディオがヴァレインを睨む。


「黒冠の悪魔……!」


「初めまして、王国軍の諸君」


 ヴァレインは優雅に一礼する。


「随分と手荒い挨拶をしてくれたようだな」


「貴様を捕らえる!」


「やってみろ」


 深紅の瞳が細められる。


「ただし、後悔するなよ」


 ガルディオが軍刀を振るった。


 しかし、ヴァレインは黒剣で軽々と受け止める。


 ガキンッ!


「……遅いな」


 刃を受け流し、相手の懐へ踏み込む。


 剣の柄がガルディオの腹部へ叩き込まれた。


「ぐっ……!」


 ガルディオが後退する。


「貴様……!」


「王国軍大佐にしては、少々物足りない」


 ヴァレインは皮肉げに笑う。


 そのとき、通信魔導具が震えた。


『ボス! 避難完了!』


 フィンの声だった。


「……そうか」


 ヴァレインは剣を下ろす。


「なら、ここまでだ」


 ガルディオが目を見開く。


「逃げるつもりか!」


「逃げる?」


 ヴァレインは笑った。


「勘違いするな。俺たちの目的は、お前たちを殺すことじゃない」


 そして、静かに告げる。


「守るべきものを守った。それだけだ」


 ヴァレインはザイラスへ視線を向けた。


「撤収するぞ」


「……おう!」


 二人は路地の奥へ歩き出す。


 ガルディオは追撃を命じようとした。


 しかし、足元に残る黒い鎖が、それを許さなかった。


     *


 夕方。


 王都地下の避難施設。


 住民たちは、無事に避難を終えていた。


 エドガーはザイラスの傷を治療しながら、深いため息をついた。


「……馬鹿か、お前は」


「ああ? 何だよ、いきなり」


「血を失いすぎだ」


 エドガーは包帯を巻き直す。


「あと少し《狂血装甲》を使っていたら、命に関わっていたぞ」


「へいへい」


「返事は一度でいい」


 ザイラスは顔をしかめた。


 そのとき。


「……お兄ちゃん」


 小さな声がした。


 振り返ると、先ほど助けた少女が立っていた。


 少女は、小さな白い花を握っている。


「助けてくれて、ありがとう」


 そう言って、花を差し出した。


 ザイラスは一瞬、固まった。


「……あ?」


「これ、あげる」


 少女が笑う。


 ザイラスはぎこちなく花を受け取った。


「……おう」


 その様子を、ヴァレインが眺めていた。


「随分と似合わないものを貰ったな」


「うるせえよ、大将」


「大事にしろよ」


「……分かってる」


 ザイラスは花を見つめる。


 十年前。


 自分は、あの子どもの手を掴めなかった。


 だが、今日は違う。


 小さな命を、一つ守ることができた。


「……今度は」


 誰にも聞こえないほどの声で呟く。


「守れたな」


     *


 その後。


 ミレーヌ・カーヴェルが一枚の軍事資料を持って現れた。


 赤褐色の短髪に、鋭い金色の瞳。


 黒い革製の戦闘服をまとい、腰には二振りの短剣。


 《紅月の蜘蛛》と呼ばれる諜報部隊長だった。


「大将。ちょっと面白いものが見つかったわ」


「何だ?」


「今日の強制捜索を指揮していたガルディオ・シュヴァルツ大佐についてよ」


 ミレーヌは資料を広げた。


『王国軍特務鎮圧部隊』


『指揮官――ガルディオ・シュヴァルツ』


『直属上官――王国軍総司令官ヴォルフガング・アイゼン』


 ザイラスの表情が変わる。


「……やっぱり、あの野郎か」


 ヴァレインは資料を見つめた。


「偶然ではないな」


「ええ」


 ミレーヌが頷く。


「どうやら、総司令官閣下は私たちを本気で潰しに来たみたい」


 ヴァレインは小さく笑った。


「望むところだ」


 深紅の瞳が、冷たく細められる。


「ヴォルフガング・アイゼン」


 その名を静かに呟いた。


「お前のほうから、俺たちの晩餐会へ足を踏み入れてくれるとはな」


 ザイラスは拳を握る。


「大将。次は俺も行くぜ」


「ああ」


 ヴァレインは頷いた。


「お前には、見届ける権利がある」


 ザイラスは静かに笑う。


「……ありがとよ」


 ヴァレインは資料を閉じた。


 そして、黒いロングコートを翻す。


「さて……」


 その口元に、悪魔のような笑みが浮かんだ。


「英雄様には、次の招待状を届けてやらないとな」


 赤い魔導灯が、深紅の瞳を妖しく照らす。


 悪の晩餐会《ノクス・バンケット》。


 その復讐の刃は、ついに王国軍総司令官へと向けられた。


――第5話「首狩りの狂犬」完。

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