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家系ラーメンが好きすぎて、擬人化してしまった!?  作者: 源三郎


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第14話 ライス無料の女神

券売機の前で、俺は次の休日の分まで食券に縛られそうになった。


メンちゃんは半分の食券を重ねて、それを止めてくれた。


けれど、次の危機は紙じゃない──と、この時の俺は思っていた。


米である。


今回の舞台は、ライス無料でおかわり自由の家系ラーメン屋。


スープ海苔ライス、豆板醤ライス、チャーシュー飯。


うまいからこそ危ない一杯が始まる。

ライス無料。


おかわり自由。


その二つの言葉は、家系ラーメン好きの心をかなり雑に揺らす。


ラーメンにライス。


スープ海苔ライス。


ピリ辛の豆板醤トウバンジャンをちょっと乗せた白飯。


チャーシューを乗せれば、もう別の一品になる。


理屈では分かっている。


危険だ。


食べすぎのツケは、あとで必ず体に来る。


それはもう、身にしみて知っている。


無理して食べる一杯は、「美味しい」を少しずつ嘘にする。


それも分かっている。


だが、ライス無料。


おかわり自由。


人間は、分かっていても米に負けることがある。


目的地は「横浜家系 米乃家」。


名前からして米だ。


店の前には大きな看板。


ライス無料。


おかわり自由。


学生歓迎。


腹ペコ歓迎。


大盛り無料、特盛りも無料、山盛りは応相談。


「山盛りに相談窓口がある」


メンちゃんが立ち止まる。


「歓迎されすぎてる」


「いい店だろ」


「いい店と危ない店は、時々同じ顔をする」


「名言が重い」


「米の重さ」


思い返すのは、ここへ来るまでの道中だ。


「ご主人様」


メンちゃんがノートを閉じた。


「今日は先に約束」


「何だ」


「おかわりは一回まで」


「まだ店にも着いてない」


「だから今言うの」


彼女は真剣だった。


券ノ助で、俺は次の休日の食券まで買いそうになった。


それを止めたのは、メンちゃんの半分の食券だった。


今日は、たぶん食券では止まらない。


米は強い。


しかも無料だ。


そういえば、朝から上着の右ポケットが、ほんのり温かい。


カイロは入れていない。


日なたを歩いたからだと思うことにした。


「一回までか」


「一回まで」


「半ライスなら?」


「一回まで」


「大ライスなら?」


「最初から大にしない」


「厳しい」


「ご主人様の胃袋を守る家系ヒロインなので」


メンちゃんは胸を張った。


「家系法度、第十四条。『まだいける』は胃袋ではなく妖精の声と心得よ」


「条項が急に核心を突いてきた」


前なら、冗談に聞こえたと思う。


今は少し違う。


彼女は本気で、俺の胃袋を守ろうとしている。


愛情の形としては、かなり現実的だ。


──で、いま、この看板の前に立っている。


店に入ると、炊きたての米の匂いがした。


家系ラーメン屋なのに、最初に米が来る。


これは危ない。


券売機の横には、セルフライスコーナーの案内。


炊飯器。


茶碗。


しゃもじ。


豆板醤。


きゅうりの漬物。


完璧な布陣だった。


いや、完璧すぎた。


炊飯器が、二台あった。


いや、よく見ると三台あった。


「ご主人様」


「何だ」


「敵陣が整ってる。炊飯器が、さっき二台じゃなかったか」


「増えた」


俺が目をこすっている間に、四台目がぽんと湯気を上げた。


券売機でラーメンを買う。


今日はトッピングを増やさない。


その代わり、ライスは無料。


つまり、券売機で止まっても、炊飯器で始まる。


カウンターに座ると、店主が言った。


「ライス、セルフです」


「はい」


「盛りは、お好きなだけ。みんな、最初はそう言うんですよ」


その一言が、妙に不穏に残った。


正直に言うと、俺には自覚があった。


ここ最近、何かがたまっている。


伊東の海辺で、足が軽くなりすぎた。


券ノ助では、ボタンの増え方が前より速かった。


あの帰り道、俺の足は一瞬だけ、勝手に店の方へ向いた。


どれも、メンちゃんには全部を話していない。


心配させるだけだと思ったからだ。


だが、言わなかった分は、消えたわけじゃない。


メンちゃんが俺を見る。


「一回まで」


「分かってる」


「盛りすぎない」


「分かってる」


「山にしない」


「ここは峠じゃない」


「うまいこと言った顔しない」


俺は茶碗を取り、ライスをよそう。


普通盛り。


普通盛りのつもりだった。


メンちゃんが横から見る。


「それ、普通よりちょっと多い」


「誤差だ」


「米の誤差は積もる」


「重い」


「米だから」


席へ戻る。


ラーメンが来るまでの間、俺は白飯だけを見ないようにした。


だが、白飯のほうが見てくる。


炊きたての湯気で。


メンちゃんはそれを察して、茶碗を少し遠ざけた。


「待て」


「犬扱いか」


「ご主人様、米の前ではだいたい犬」


「否定しきれない」


丼が置かれた。


豚骨醤油のスープ。


太麺。


海苔。


ほうれん草。


チャーシュー。


王道。


だが、横に白飯があるだけで、景色が変わる。


「一口目は」


「スープ」


俺はレンゲを取る。


一口。


うまい。


米を呼ぶスープだった。


最初から、米に合うように醤油が少し強めに立っている。


鶏油も、米に絡むように甘い。


「うまい」


その瞬間、四台の炊飯器が同時にぱかっと蓋を開けた。


白い湯気が四本、天井へ立ちのぼり、中央で一つの細い柱になる。


白い湯気の柱の中から、少女が現れた。


髪は白飯みたいな淡い白。


目は海苔みたいな深い黒。


服は白いエプロン。


胸元には、豆板醤色の小さな赤いリボン。


手にはしゃもじ。


メンちゃんが小声で言う。


「武器がかぶった」


少女はにこにこ笑った。


「米乃家の家系妖精、こめりです」


「名前が米」


「米は偉大ですから」


こめりは、俺の茶碗を見た。


「いい盛りです。でも、まだいけますね」


「始まった」


メンちゃんが低く言う。


こめりは悪気なく続けた。


「まずはスープ海苔ライス。海苔を軽くスープに浸して、白飯を抱かせる。豆板醤は少しだけ。次にほうれん草ライス。スープを吸ったほうれん草を米に乗せる。最後にチャーシューを崩して、即席チャーシュー飯」


「流れるような提案」


「米は流れを作りますから」


こめりが軽くしゃもじを振ると、セルフコーナーの炊飯器が、また一台増えた。


「感情で厨房を増設するな」


メンちゃんが少し悔しそうな顔をした。


「海苔の沈め方は分かってる」


「もちろんです。沈めすぎれば崩れます。乾いたままでは抱けません」


「分かってるじゃん」


「米に関わる海苔ですから」


二人がまた通じ合いかけた。


だが、今回は危険の種類が違う。


海苔で通じ合うと、今日は比喩じゃなく本当に米が増える。


俺は麺をすすり、海苔をスープに浸した。


白飯を巻く。


食べる。


うまい。


完全にうまい。


「うまい」


こめりの輪郭が少し濃くなった。


茶碗の湯気が、彼女の髪に絡む。


そして、うれしさのあまり、彼女はしゃもじで宙をひとすくいした。


何もない空間から、ほかほかの白飯が一膳ぶん、ぽんと現れる。


それがカウンターの上に、ぽすっと落ちた。


「今、米が湧いた」


「サービスです」


「頼んでない」


「気持ちです」


こめりの気持ちは止まらず、宙から白飯が次々に湧いて、茶碗の横に小さな山ができはじめた。


「ありがとうございます。おかわり、どうぞ」


「早い」


メンちゃんが言った。


「まだ一杯目の途中」


「先に道を示すのが米の役目です」


「道を示すな。炊飯器へ導くな。あと、勝手に空から米を降らせるな」


俺は食べ進めた。


スープ海苔ライス。


ほうれん草ライス。


豆板醤を少し。


チャーシューの端を乗せる。


危険なほど進む。


気づけば茶碗は空だった。


そして気づけば、カウンターの端の白飯の山は、俺の顔の高さまで積み上がっていた。


炊きたての湯気が頂きから立ちのぼる、まるで小さな富士山だった。


「米が、峠になってる」


「峠にしたのはお前だ」


「愛です」


こめりがにこっと笑う。


「おかわりですね」


メンちゃんが俺を見る。


「一回まで」


「分かってる」


俺は茶碗を持って立つ。


炊飯器の前へ行く。


しゃもじを持つ。


普通盛り。


普通盛りのつもりだった。


「ご主人様」


背後からメンちゃんの声。


「分かってる」


「今の一しゃもじ、多い」


「米が軽かった」


「米のせいにしない」


「家系法度、第十四条」


「覚えてたのか」


「自分で作ったので」


こめりが横でほほえむ。


その目に、ふっと必死さがにじんだ。


「うちの米を好きになってくれる人がいると、私はちゃんと立っていられるんです」


俺はしゃもじを止めた。


メンちゃんも黙る。


妖精たちは、ただ誘惑しているわけじゃない。


自分の店の一杯を、本気で好きでいてほしい。


その願いが、彼女たちの輪郭を濃くする。


けれど、その願いが強すぎると、店ごと米の匂いに沈んでいく。


気づけば、店内が変わっていた。


天井から白い湯気が降り、床には米粒が雪みたいに舞い、壁ぎわには白飯の山がいくつも並んでいる。


換気扇が悲鳴を上げ、米乃家という店が、まるごと米の異空間になっていた。


「理不尽だ」


「米の楽園です」


「同じ意味か」


こめりは、悪意なくそう言った。


彼女は敵じゃない。


ただ、米が好きすぎて、その好きが店ごと世界を塗りつぶすほど強いだけだ。


「だから、もう一杯」


必死さと圧が同時に来て、米の山がしずかににじり寄ってくる。


メンちゃんがすぐに言う。


「そこが危ない」


俺は二杯目を持って席へ戻った。


一回まで。


約束は守っている。


二杯目のライスで、残ったスープを受け止める。


うまい。


こめりの輪郭がさらに濃くなる。


足元に、薄い影が落ちた。


峠子の時よりも、はっきりしている。


なぜなら俺は今、食べる量で彼女を支えているからだ。


そして、もう一つ。


さっきから、右ポケットが熱い。


朝の「ほんのり」じゃない。


淹れたての湯呑みくらいの熱が、布ごしに伝わってくる。


だが、それを確かめる余裕は、もうなかった。


「ご主人様」


メンちゃんの声が硬い。


「分かってる」


「まだ分かってない」


こめりが茶碗を見ている。


「三杯目、いけますよ」


宙から、また一膳ぶんの白飯が湧いた。


湯気が、俺の顔にかかる。


甘い。


砂糖なんて一粒も入っていないのに、炊きたては甘い。


その匂いを吸い込んだ瞬間、右ポケットが、かっと熱を上げた。


布ごしに、赤い光が透ける。


ぽつ。


ぽつ。


券売機のボタンが点滅する、あの音がした。


この店のどこにも、赤く光るボタンなんてない。


なのに、耳のすぐ内側で、押せ、押せ、と点滅する。


米の匂いと、紙の声が、俺の中で重なった。


伊東で軽くなりすぎた足。


券ノ助で増え続けたボタン。


勝手に店へ向いた、あの半歩。


言わずにためてきたものが、全部いっぺんに、底から口を開けた。


視界が狭くなる。


丼と、茶碗と、白飯の山。


それしか見えない。


店の音が遠い。


メンちゃんの声が、厚いガラスの向こうから聞こえる。


「ご主人様、だめ」


俺の手は、三杯目の茶碗を取っていた。


自分で取った、という感覚が半分しかない。


海苔を沈める。


白飯を抱かせる。


食べる。


うまい。


うまい、しかない。


「ご主人様」


メンちゃんの手が伸びて、茶碗にかかった。


強く奪うのではない。


ただ、そっと下げる。


赤い食券の夜と、同じ手だった。


あの夜は、それで止まった。


今日は、止まらなかった。


俺の手が、下がっていく茶碗を追いかけた。


自分の手なのに、知らない手みたいだった。


メンちゃんの目が見開かれる。


「戻って。お願い」


声が震えていた。


彼女は胸元の半分の食券を握って、俺と茶碗の間に重ねた。


こはく色の光が、ふっと灯る。


だが、ポケットの赤が、その光を上から塗りつぶした。


「ご主人様、聞いて。それは、ご主人様の『うまい』じゃ──」


「うるさいな。今、うまいんだ」


言った。


自分の声だと気づくまでに、一秒かかった。


その一秒のあいだに、店の音がぜんぶ消えた。


宙を舞っていた米粒が、止まる。


炊飯器の湯気が、止まる。


こめりの笑顔が、止まる。


ポケットの熱が、すっと引いていく。


紙の声も、消えた。


我に返った。


遅かった。


メンちゃんは、俺を見ていた。


怒っていなかった。


怒ってくれた方が、ずっとましだった。


彼女はゆっくりと手を引いた。


茶碗は、カウンターに残った。


引いていく、その手の指先。


湯気を混ぜたみたいに、薄かった。


爪の向こうに、カウンターの木目がうっすら透けている。


中伊豆の夜、一瞬だけ透けて、瞬きの間に戻った指先。


今は、何度瞬きをしても、戻らなかった。


「メンちゃん」


彼女は首を横に振った。


小さく、一度だけ。


「……ゆっくり、食べて」


それだけ言って、彼女は席を立った。


怒鳴らなかった。


泣かなかった。


暖簾が揺れて、戸が静かに閉まった。


静かなのが、いちばん重かった。


「あ……」


こめりが、しゃもじを取り落とした。


からん、と乾いた音がした。


白飯の山が、端からほどけて、湯気に戻り始める。


彼女はそれを、呆然と見ていた。


「私だ」


声が、白かった。


「私の願いが、引き金……」


「違う」


「違わないです。お客さん、ポケット」


言われて、俺は右ポケットに手を入れた。


指先に、紙が触れた。


一枚の食券だった。


券ノ助の、白い食券。


「限定燻製チャーシュー」の文字の端が、こはく色とも赤ともつかない色で、弱々しく光っていた。


いつからあったのか、分からない。


いや、たぶん、あの日からだ。


けん子の店を出た、あの日からだ。


こめりは青ざめたまま、その紙を見た。


「券の子の『来てほしい』と、私の『食べてほしい』が、重なったんです。お客さんの中にたまってた分と、三つで、一つの声になった」


「たまってた分」


「ずっと、我慢の底に、ためてたでしょう」


図星だった。


伊東の足も、券売機のボタンも、勝手に向いた半歩も。


言えば心配させると思って、言わなかった。


言わなかった分は、消えていなかった。


丼の底にたまって、今日、あふれた。


「でも、最後の一言は」


俺は言った。


「券のせいでも、米のせいでもない」


言ったのは、俺だ。


こめりは、何度も首を横に振った。


「私の店で、私の米で、起きたことです」


彼女はしゃもじを拾い、宙に浮いたままの三杯目に、そっとかざした。


白飯が、ほどけて湯気に戻っていく。


「これは、湯気に返します」


店内が、ゆっくりと元の店に戻っていく。


天井の湯気が晴れ、床の米粒が消え、炊飯器の数も、いつのまにか二台に戻った。


丼には、スープが少しと、海苔が一枚、残っていた。


俺はそれを、ゆっくり食べた。


味は、した。


ちゃんと、うまかった。


うまいのに、飲み込むたびに、喉の奥が重かった。


「ごちそうさまでした」


こめりはカウンターの中で、深く頭を下げた。


「……また来てほしいって、私が願っても、いいんでしょうか」


「あんたの米は、うまい。それは本当だ」


「ただ、今日は、それしか言えない」


こめりは、しゃもじを胸に抱いて、小さくうなずいた。


「あの人に」


戸の方を見て、彼女は言った。


「ごめんなさいって、伝えてください。……ううん。違う」


「それは、私が自分で言わなきゃいけないやつだ」


店を出ると、外はもう夕方だった。


メンちゃんは、少し先の電柱の横に立っていた。


待っていたのか、離れられなかったのか、分からない。


「メンちゃん」


呼ぶと、彼女は歩き出した。


俺の三歩先を。


隣じゃなかった。


帰り道に隣にいるのはお前がいい。


いつか、そう言った。


その隣が、今日は三歩ぶん、遠い。


三歩は、たぶん、俺があの一言で空けた距離だった。


信号で立ち止まるたび、俺は言葉を探した。


ごめん。


その二文字が、口の手前で何度も詰まった。


さっき「うるさいな」と言ったのと同じ喉で言っても、届かない気がした。


三歩の距離は、家に着くまで、一度も縮まらなかった。


夜。


台所に、湯気は立たなかった。


メンちゃんは部屋の隅で膝を抱えて、胸元の半分の食券を、両手で包んでいた。


その指先は、まだ少しだけ薄い。


「メンちゃん、あのさ」


「……今日は、もう休んで」


声は、優しかった。


優しいまま、閉じていた。


俺は机に向かい、巡礼ノートを開いた。


横浜家系 米乃家。


そこまで書いて、ペンが止まった。


ライス無料。


おかわり自由。


スープ海苔ライスが強い。


書けることは、いくらでもあった。


うまかったのも、本当だった。


だが、「また来たい」の一行の手前に、書かなきゃいけないことがある。


三杯目に伸びた手。


下げられた茶碗を、追いかけた手。


そして、俺が言った一言。


それを書く勇気が、まだなかった。


ノートは、店の名前だけを乗せて、白いままだった。


机の端に、けん子の食券を置く。


もう光っていない。


ただの白い紙に戻っている。


借りたつもりのない、借り物。


返しに行かなきゃならない。


一人で行くのか、二人で行けるのか、それすらまだ分からない。


かばんの中の暖簾の端は、今夜は静かだった。


山の熱も、海の風も、紙の音も、米の湯気もしない。


責められている気がした。


窓の外で、風が湿り気を帯び始めている。


そのうち、雨が来る。


部屋の隅で、メンちゃんは動かない。


薄い指先だけが、半分の食券の上で、時々かすかに動いた。


謝る言葉は、まだ決まっていない。


ただ、一つだけ、決まっていることがある。


あの一言は、券の声に押された。


でも、言ったのは、俺だ。

ライス無料の店「米乃家」と、その一杯に宿る妖精・こめりを描いた。


こめりの願いは、ただ「もっと食べてほしい」というまっすぐなものだった。


けれど、その願いに、紛れ込んでいた食券の声と、俺がためこんできたものが重なってしまった。


三杯目の前で、メンちゃんは茶碗をそっと下げた。


あの夜と同じ手を、俺は追いかけて、言ってはいけない一言を言った。


メンちゃんは怒鳴らず、静かに店を出た。


こめりは悪くない。


言ったのは、俺だ。


謝る言葉は、まだ見つかっていない。


窓の外は、そのうち雨になる。

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家系ラーメンを愛しすぎた男と、ラーメンの化身・メンちゃんの物語。
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