↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/58

残金1,842円|第53話「支払予定表」

 午前七時十八分。


 真鍋は、支払予定表の一行を黄色く塗った。


「これは、何を支払う予定ですか」


 本社会議室の長机には、前夜に差し替えた工程表と、経理部が出力した資金繰り表が並んでいた。


 黄色い行の摘要欄には、当初進入路側追加工事とある。


 金額欄は、一億四千万円。


 支払予定日は、翌月末になっていた。


 榊原は椅子へ座る前に、その行を見た。


「仮設道路の概算だろう」


「まだ採用していません」


 経理部の三浦が答えた。


「一億四千万円は、選択肢を比較した時の概算です。追加工事として承認された金額ではありません」


「資金繰りを見るなら、入れておく必要がある」


「可能性としては必要です。ただ、この表では契約済みの支払いと同じ欄に入っています」


 三浦は、金額の左にある黒い丸を指した。


 同じ丸が、造成工事の出来高払いにも、配管工事の支払いにも付いている。


 その二つは契約済みだった。


 一億四千万円は違う。


 発生する可能性のある支払いを落とさないため、経理部が仮置きしていた。


 仮置きすること自体は間違いではない。


 だが、同じ印を付けたことで、表を受け取った者には同じ確度の支払いに見えた。


「抜けば、必要な金を少なく見ることになる」


 榊原が言った。


「抜きません。状態を分けます」


 真鍋は黄色い行の横へ、未契約と書いた。


 三浦が新しい表を画面へ出した。


 契約済み。


 発注済み。


 請求済み。


 社内承認済み。


 支払日確定。


 支払済み。


 その右側に、未契約見込みと条件付き見込みがある。


「細かすぎないか」


「一つの予定欄で済ませていたため、何を約束した金なのか分からなくなっています」


 三浦は別の行を表示した。


 作業班一組の手配解除費用。


 概算九百万円。


 実費確認中。


 支払日は翌月末。


「これも確定しているのか」


「していません。施工会社から根拠資料はまだ全部届いていません。請求書も受け取っていません」


「班はもう別の現場へ入った」


「今後の待機費が発生しないことは確認しています。解除までに発生した準備費用とは別です」


 真鍋は、九百万円の行から支払日を消した。


 金額は消さない。


 状態欄へ、実費協議前と入れる。


「日付を消したら、資金繰りへ入らない」


「確定欄ではなく、見込み欄へ入れます」


 真鍋は表を二段に分けた。


 上段は、契約や請求によって支払日を置けるもの。


 下段は、金額や条件が決まっていないもの。


 二つを重ねれば、最大の支出見込みが見える。


 上段だけなら、約束済みの支払いが見える。


 榊原は、画面の右端にある残高予測を見た。


 昨日まで一本だった線が、二つに分かれている。


 確定支払いだけを反映した線。


 見込み支払いまで含めた線。


 どちらも同じ現預金残高から始まり、翌月に入ると離れていた。


「悪い方を見ればいい」


「悪い方だけを見て、未契約の工事まで契約済みとして扱うことはできません」


「金を残すための表だろう」


「何を約束したかを間違えないための表でもあります」


 真鍋は、前夜に差し替えた工程表を隣へ動かした。


 完成見通し、再算定中。


 支払予定表にも、再算定中の行が増えていた。


 午前八時三分。


 大沢から北側工事の朝の報告が届いた。


 第二区域は、引渡し前の確認を終える。


 第一区域の配管は、当初の注文範囲を継続する。


 新たな部分施工は行わない。


 配管班については、午後までに次の区間を続けて渡せるか回答する。


 榊原は、報告の最後まで読んだ。


「今の注文範囲は、工程を見直しても支払うんだな」


 三浦が発注内訳を開いた。


「出来高の確認と請求を経て、契約条件に従って支払います」


「全体工程が遅れてもか」


「現在施工している範囲まで、自動的に未払いになるわけではありません。別区域の遅れと混ぜて支払いを止めることはできません」


「施工会社側の遅れなら別だ」


「その事実を確認できた場合は別です。現在は、こちらが当初進入路側の作業範囲を渡せていません」


 榊原は、配管工事の行を見た。


 工程表では、次の区間の開始日を置けない。


 支払予定表では、現在動いている範囲の支払日が残っている。


 完成日を外しても、今日まで進めた仕事の代金は消えなかった。


「出来高を確認する日を入れろ」


 三浦が入力した。


「請求見込日と支払日も分けます」


「請求が来たら払うんじゃないのか」


「その前に出来高の確認があります。請求書を受け取った日と、契約上の支払日は同じではありません」


「遅らせろと言っているわけじゃない」


「遅らせないために、誰がいつ確認するかを入れます」


 出来高確認予定日。


 請求見込日。


 支払期日。


 同じ一行の中に、三つの日付が置かれた。


 午前九時二十六分。


 施工会社から、作業班の手配解除に関する資料が届いた。


 九百万円という一枚の請求書ではなかった。


 協力会社との調整費。


 車両と機械の事前手配。


 作業計画の作成。


 中止連絡までに発生した準備人工。


 取り消せた費用。


 別現場へ振り替えた費用。


 項目ごとに、発生済み、取消可能、協議対象と分けられている。


 三浦は資料を一枚ずつ確認した。


「合計は」


 榊原が聞いた。


「施工会社側でも確定していません。証憑がそろっていない項目があります」


「九百万円より増えるのか」


「今は言えません。取り消す前の金額と、実際に負担した金額が混ざっています」


 真鍋が、九百万円の行を見た。


「概算を残すか」


「見込み額として残します。ただし、発生を確認できたものと、協議中のものを分けます」


「相手が出した費用を、こちらの都合で削るな」


「削りません。何の費用かを確認します」


 榊原は資料を取り上げた。


 一つの項目に、別現場へ転用と書いてある。


 手配したものが使われなかったからといって、すべてが損失になるわけではない。


 別の現場で使えたものもある。


 一方で、作業員がこちらへ来なかったからといって、準備に使った時間まで消えるわけではなかった。


「施工会社と今日中に確認しろ」


「金額を決めるのではなく、項目と根拠を確認します」


「それでいい」


 九百万円の行は二つに分かれた。


 発生確認済み。


 協議未了。


 どちらにも、支払日は入らなかった。


 午前十時四十一分。


 小田は地権者宅の前で、図面を広げていた。


 榊原は本社で連絡を待った。


 協議には大沢も同行している。


 工事車両が通る幅。


 農作業の車両が優先される時間帯。


 工事側が使用した後の清掃。


 降雨時の扱い。


 通路に異常が出た場合の連絡先。


 価格ではなく、生活の動線を壊さないための条件を詰める。


 午前十一時十二分。


 小田から最初の連絡が入った。


「基本の幅と時間帯は、修正案で確認いただけました」


「合意したのか」


「条件の骨格です。書面へ入れる文言が残っています」


「何が残った」


「雨の日の使用判断と、農作業が予定より長引いた場合の連絡方法です。現地表示の位置も午後に確認します」


「今日中に署名できるか」


「先方は、文案を家族で確認してから決めたいと言っています」


「新しい金額の話は出たか」


「出ていません。今回は通行条件だけです」


「工事側へ、決まったことだけ渡せ。まとまりそうだという話は流すな」


「大沢さんが同席しています。現地条件と分けて報告します」


 電話が切れた。


 真鍋が支払予定表の一億四千万円を指した。


「通路条件の協議が進んでも、仮設道路を承認したことにはなりません」


「同じ話じゃない」


「はい。だから摘要を直します」


 当初進入路側追加工事という一行が消えた。


 代わりに、北側仮設道路案と、当初進入路整備見込みの二行ができた。


 北側仮設道路案は、比較検討中。


 当初進入路整備見込みは、条件確定前。


 どちらも未契約だった。


 昨日までは、一億四千万円という数字が、二つの可能性を一つに見せていた。


「二つに分けて、両方を足すなよ」


「同時に採用しない案は、同時に合計しません」


 三浦は、一方を選べばもう一方が外れるように印を付けた。


 午後零時二十分。


 真鍋は弁当を開ける前に、各部署から届いた回答を並べた。


 調達部は、資材発注の予定を三件出している。


 法務部は、変更協議に備えた契約確認を進めている。


 事業部は、稼働開始予定の変更が入居予定者との協議に影響する可能性を報告していた。


「調達部の一件目は、発注済みになっています」


 三浦が言った。


「契約書は」


「ありません。担当者へ確認したところ、メーカーへ数量を伝え、納期の仮押さえを頼んだ段階です」


 榊原は担当者を会議室へ呼んだ。


 十分後、調達部の担当者が資料を持って入ってきた。


「メーカーには、何を約束した」


「数量と希望納期を伝えました。正式注文は、仕様確認と社内承認後です」


「材料は押さえたのか」


「まだです。生産枠をいつまで待てるか確認しています」


「費用は発生しているのか」


「現時点では、発生したという回答は受けていません」


「なら、発注済みじゃない」


「社内では、発注手続き開始の意味で使っていました」


「外へ出した約束と、社内で動き始めたことを同じ言葉にするな」


「承知しました」


 真鍋は三件を一つずつ確認した。


 見積依頼。


 納期照会。


 社内承認申請。


 正式発注。


 契約成立。


 同じ発注という言葉の中に、異なる状態が入っていた。


「支払いが発生する境目はどこだ」


 榊原が聞いた。


「契約条件によります」


 真鍋が答えた。


「注文の成立時点で義務が生じるものもあります。基本合意の段階で予約金が必要になるものもあります。見積りを頼んだだけなら同じではありません」


「全部、表へ入れろ」


「同じ合計には入れません」


「落とすなと言っている」


「落としません。状態を分けます」


 担当者の資料の最後に、設備メーカー回答待ちという案件があった。


 金額欄は空白だった。


 榊原は一度だけ目を通し、弁当の蓋を開けた。


 午後一時四十八分。


 施工会社との費用確認が始まった。


 大沢は地権者側との現地確認を続け、電話で参加している。


 施工会社の契約担当者は、手配解除費用の一覧を画面へ映した。


「九百万円は最初にお伝えした概算です。協力会社の資料を反映し、発生済みと取り消し済みを分けました」


 三浦が項目を確認する。


「この車両費は、別現場へ振り替えられています」


「はい。全額を協議対象には残しません」


「事前計画の人工は」


「担当者が既に作業しています。作業記録を添付します」


「協力会社の管理費は、何に対するものですか」


「手配と取り消しの事務費用です。金額の根拠は確認中です」


 施工会社は、出せる項目をすべて残しているわけではなかった。


 別現場へ移せた費用は外している。


 その一方で、準備のために人が動いた時間は残している。


「支払いはいつになる」


 榊原が聞いた。


「今日、対象額へ合意したわけではありません」


 施工会社の担当者が答えた。


「根拠資料をそろえ、協議後に請求書を発行します。支払いは契約条件に従います」


 真鍋が表へ入力した。


 資料提出期限。


 項目確認。


 対象額協議。


 請求書受領。


 支払期日。


 今までは、翌月末という一つの日付しかなかった。


 その前に終えなければならないことが、四つ増えた。


 支払いを遅らせるためではない。


 約束した日に払うためだった。


 午後三時九分。


 小田と大沢が本社へ戻った。


 小田は、地権者側と読み合わせた文案を机へ置いた。


 通行条件の骨格はまとまっている。


 雨天時は通路の状態を確認する。


 農作業の時間が延びる場合は、用地担当へ連絡する。


 工事側は、車両を入れる前に現地表示と路面を確認する。


 異常が生じた場合の連絡先も入った。


「署名は」


 榊原が聞いた。


「先方は、家族でもう一度確認した上で、明日の午前中に返事をくださいます」


「今日、まとまったんじゃないのか」


「文言の読み合わせまでです。内容を持ち帰る時間が必要だと言われました」


「工事側はどうだ」


 大沢が区域図を出した。


「幅は図面上、必要な寸法を確保できそうです。ただ、一部に整地が必要です。大型車両の旋回は、使用する車種を特定して確認します」


「何日かかる」


「署名後、現地表示と測量確認を行います。整地の方法と注文範囲を決めてから日程を出します」


「配管班への返事は今日だ」


「今の注文範囲を終えた後、いったん引き揚げてもらう案を第一にします」


「残す案は」


「細切れの仕事を作れば、数日は残せます。ただ、次の区間を続けて渡せる約束ができません」


 仕事を作って残すな。


 自分で言った言葉だった。


「引き揚げ日は」


「今の注文範囲が完了し、出来高確認を終えた日です。明日の作業状況で確定します」


 三浦が支払予定表を開いた。


「引き揚げても、今の注文範囲の支払いは残ります」


「分かっている」


「追加部分施工を採らなかったので、その費用は見込みから外します」


 三浦は一行を削除した。


 支払いの可能性が一つ減った。


 同時に、配管班を現場へ残す可能性も一つ消えた。


 午後四時二十七分。


 更新された支払予定表が、工程表と同じ画面に並んだ。


 工程表の青い線を選ぶと、対応する契約と支払いが表示される。


 赤い線を選ぶと、未契約の見込みと判断期限が出る。


 造成工事。


 契約済み。


 出来高確認予定。


 請求見込み。


 支払期日。


 配管工事。


 契約済み。


 現在の注文範囲を施工中。


 追加部分施工は不採用。


 次区間は未発注。


 作業班手配解除費用。


 概算から精査中。


 対象額協議前。


 請求未了。


 北側仮設道路案。


 未採用。


 比較用概算。


 当初進入路整備。


 通行条件署名前。


 施工範囲未確定。


 見積り未取得。


 同じ事業でも、金額の状態は違っていた。


 昨日までの表では、すべてが一つの支払予定額として足されていた。


 支払いが多く見える月がある。


 支払日が空白のため、何も起きないように見える月もあった。


 三浦は、確定支払いと見込み支払いを反映した資金繰りを表示した。


「残高予測の幅が、前より広がっています」


「精度を上げたのに、幅が広がるのか」


「分かっていないものを、分かった日付へ押し込まなくなったからです」


「役に立つのか、その表は」


「どこまで自由に使える金かを判断できます」


 確定支払いを引いた後の残高。


 条件付き見込みまで確保した後の残高。


 未契約の全候補を最大で見込んだ残高。


 三本の線がある。


 最大の線だけを基準にすれば、使える金を少なく見る。


 確定の線だけなら、近く必要になる金を先に使う可能性がある。


「真ん中を使え」


 榊原が言った。


「条件付き見込みまで確保しますか」


「ああ。ただし、採らない案の金まで寝かせるな。判断期限が来たら外す」


 真鍋は、その基準を表の上へ記録した。


 未契約案件にも判断期限を置く。


 期限までに決められない場合は、理由と次の確認日を書く。


 採らない案は合計から外す。


 契約した時点で、確定支払いへ移す。


「資金を押さえる権限は」


 三浦が聞いた。


「案件担当だけで押さえるな。事業部、財務、経理で確認する。契約前でも、支払いの可能性が高くなったものは真鍋へ上げろ」


「金額の基準を決めますか」


「金額だけで切るな。支払日と、取り消した時に失うものも見る」


 真鍋が榊原を見た。


 以前なら、必要額を聞き、その場で進めるか止めるかを決めていた。


 今は、まだ支払っていない金を、いつから自由に使えない金として扱うか決めている。


「運用を文書にします」


「今日から使え」


 午後五時四十八分。


 調達部の担当者が、設備メーカーからのメールを持ってきた。


「生産枠について回答が来ました」


 大型設備の製造開始時期を確保するには、基本条件の合意が必要だった。


 正式な文案は、メーカー側の確認後に送られる。


 メールには、予約金十五億円という金額が記載されていた。


 支払いの候補日は、二週間後。


「払えば、枠は確保されるのか」


 榊原が聞いた。


「その条件を含む文案が、まだ届いていません」


「払わなければ」


「現在示されている時期を維持できない可能性がある、という回答です」


「可能性では決められない」


「正式な基本合意書案を受け取り、条件を確認します」


 三浦が支払予定表を開いた。


「どの状態で入れますか」


 昨日までなら、二週間後の支払いとして入れたかもしれない。


 契約前だからと、表へ入れなかったかもしれない。


 どちらにしても、十五億円が持つ条件は見えなくなる。


「未契約。基本合意書案待ち」


 真鍋が言った。


「支払候補日は二週間後。判断期限は未確認。支払義務が発生する条件も未確認です」


 三浦は新しい行を作った。


 設備製造枠予約金。


 十五億円。


 未契約。


 社内未承認。


 基本合意書案未着。


 支払義務発生条件未確認。


 判断期限確認中。


 金額は表へ入った。


 確定支払いの合計には入らない。


 条件付き見込みの線だけが、二週間後に十五億円下がった。


 午後六時三十六分。


 地権者側から、小田へ連絡が入った。


 家族で文案を確認し、修正を求める点が一つある。


 雨天後に通路を再開する判断を、工事側だけで行わないこと。


 翌朝、その文言を確認できれば署名へ進む。


 小田は、求められた内容を大沢へ伝えた。


「工事側として受けられるか」


 榊原が聞いた。


「共同で現地確認する形なら受けられます。緊急時の連絡方法は決めます」


「明日の朝、修正文案を出せ」


「はい」


 道の条件は、あと一文まで進んだ。


 設備の支払いは、最初の一行が現れた。


 工程表では完成日が空き、支払予定表では十五億円の候補日が置かれている。


 午後七時十一分。


 三浦は、更新した支払予定表を関係部署へ送った。


 表の上部に、状態の定義が付いていた。


 見積依頼は、契約済みではない。


 社内承認は、発注済みではない。


 発注済みは、支払済みではない。


 請求書の受領は、金額確認の完了ではない。


 支払候補日は、支払義務が発生した日ではない。


 榊原は、自分に届いた表を開いた。


 十五億円の行を押す。


 金額の横には、空欄が多かった。


 この事業を行う会社が支払う。


 そこまでは分かっている。


 だが、何を受け取るための金なのか。


 いつから戻らない金になるのか。


 払わなければ、何を失うのか。


 その答えは、まだ表へ入っていなかった。


「明日、文案が届いたらすぐ回せ」


 榊原が言った。


「法務、調達、財務で確認します」


 真鍋が答えた。


「支払原資もだ。既に用途が決まっている金を、空いているように見るな」


 三浦が、その言葉を運用欄へ書き加えた。


 会議室の壁には、完成日の空いた工程表がある。


 机の画面には、二週間後に十五億円下がる可能性を示す線がある。


 現場では今日も工事が進んだ。


 通路の合意も、昨日より前へ進んでいる。


 それでも、動いた仕事と、使える金は同じ方向には増えなかった。


 榊原は、支払予定表を閉じなかった。


 十五億円の行には、支払済みの印も、承認済みの印もない。


 残っていたのは、まだ払っていない金が、いつから自由ではなくなるのかという問いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。