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残金1,842円|第36話「地方に作る理由」

 工場の門を出たトラックは、榊原たちの車とは反対へ曲がった。


「あれも港へ行く荷物か」


 助手席の榊原が尋ねると、物流担当の西野がバックミラーを見た。


「いったん、市外の倉庫へ入れます」


「港はこっちだろ」


「向こうで検品と積み替えをしてから、明日の便に載せます」


 白い荷台が、交差点の先へ消えた。


 工場から港までは、東へ行けばいい。だが荷物は西の倉庫へ運ばれ、翌朝、同じ道を戻ってくる。


「何キロ余分に走る」


「経路によりますが、往復で六十キロほどです」


「毎日か」


「平日は、ほぼ」


「なぜ近くで受けない」


「夕方に入れて、夜に検品する人がいません」


 後部座席の藤崎が地図を広げた。


「だから、ここに物流拠点を作る」


 榊原は振り返らなかった。


「倉庫を作れば、検品する人間も生えてくるのか」


 西野が速度を落とした。


「工場へ戻ってください」


 榊原が言った。


「今の荷物を見たい」


 出荷場では、午後の製品が並び始めていた。


 箱の大きさはそろっているが、貼られた荷札は違う。作業員が端末で番号を読み取り、台車へ積んでいた。


 出荷責任者の女性が、黄色い線の外で三人を待った。


「ここから先は、フォークリフトが通ります」


 榊原は線の手前で止まった。


「荷物を翌朝まで置けないんですか」


「置けます。ただ、ここを埋めると夜勤の製品が出せません」


 女性は、壁際の空いた床を指した。


「生産設備を増やした時、出荷場は広げられなかったんです。毎日引き取ってもらわないと、最後はライン側へ戻すことになります」


「近くに倉庫ができれば、移しますか」


「距離だけでは決められません」


 返事は早かった。


 西野が名刺を持ち直した。


「今の業者さんとは、長いんですか」


「工場ができた頃からです。荷物ごとに見る場所が違うので」


 女性は、積まれた箱の一つを示した。


「これなら外装だけです。隣の製品は、決められた数だけ開けて、中の固定状態まで確認します。封を戻した記録も必要です」


「工場では、やらないんですか」


「出荷前の確認はします。倉庫でやるのは、積み替えの後の確認です。傷が見つかった時に、どこまで正常だったか追えるようにしています」


 榊原は箱へ伸ばしかけた手を引いた。


 倉庫を近づければ、運賃は減るかもしれない。


 だが、今の業者を外せば、作業を覚え直す時間と、間違えた時の責任が新しく生まれる。


「今の業者が、近くの場所を使うならどうですか」


 女性は、初めて西野から榊原へ視線を移した。


「その方が相談しやすいです」


「荷物を移す時期は」


「今すぐとは言えません。向こうにも人と場所がありますから」


 榊原はうなずいた。


 新しい拠点へ持ってくる荷物には、すでに、それを運んでいる人間がいた。


 工場を出ると、西野が車の横で足を止めた。


「既存業者を残すなら、検品の売上はこちらに入りません」


「運賃は」


「減った距離の分、下がります」


「誰の運賃だ」


「工場が、今の業者へ払っている運賃です」


「こちらの港向けの便に載せれば」


「空きを使えます。ただ、今の便の出発時刻までに検品が終わるかは、見ないと分かりません」


「なら、それを見ろ」


「新拠点の売上としては、当初より小さくなります」


 榊原は、工場から出てきた別のトラックを見た。


「相手が今払っている金を、全部こちらへ移せる計算にしていなかったか」


 西野は答えるまでに少し時間を使った。


「運ぶ区間と、作業を、まとめていました」


「分けろ。こちらが減らせる費用と、こちらが引き受けなければならない仕事を」


 藤崎が車の屋根越しに言った。


「細かく見すぎると、最初の絵がなくなるぞ」


「残る仕事で描き直せばいい」


 榊原は助手席のドアを開けた。


 午後の現地協議には、自治体と、電力、通信、物流、施工の調査担当者が集まった。


 借りたのは、旧工場の事務棟だった。


 廊下の時計は止まっていた。会議室だけに仮設の空調が入り、窓の外では、舗装の割れ目から草が伸びている。


 藤崎が三つの候補地の比較表を配った。


 都市近郊の工業用地。


 港に近い埋立地。


 そして、今いる旧工場用地と、その周囲の土地。


「面積と取得費では、ここが一番いい」


「取得費は、まだ売主の希望も確認できていない」


 真鍋が言った。


「現時点では、周辺の取引事例を基に置いた額です」


「それでも、都市近郊よりは安い」


 藤崎が答えた。


 榊原は比較表を裏返した。


「安い理由を、先に出してくれ」


 自治体の担当者が、手元の資料を開いた。


「まとまった利用が決まらなかった土地です。面積が大きく、単独の企業には扱いにくかった。それから、周辺地と一体にしなければ使いにくい部分があります」


「旧工場だけでは足りない」


「物流車両の出入りと、設備配置まで考えると、窮屈になります」


「土の調査は」


「閉鎖時の資料はあります。ただ、今回の用途に必要な範囲まで十分かは、調査会社の確認を待っています」


「撤去した建物の地下は」


「記録を取り寄せています」


 榊原は窓の外へ目をやった。


 平らな土地には、何もないように見える。


 何もないことを確かめるために、金がかかる土地でもあった。


 施工担当者が、都市近郊の案を指した。


「こちらは、道路と上下水の条件が読みやすいです。ただ、必要面積をまとめられません。物流施設を別敷地に出すことになります」


「分けた時の費用は」


「警備、構内道路、管理棟の一部が重複します。それと、施設間の移動が増えます」


「全部を同じ場所へ置いた時の不利は」


 担当者は配置図を出した。


 物流棟の前を大型車両が通り、その先にデータセンターの入口があった。


「今の案では、この交差が残ります」


 榊原は、二本の線が重なる場所へ指を置いた。


「荷下ろし待ちの列が伸びたら、保守の車も止まるな」


「経路を分ければ避けられます」


「分けてくれ」


「道路面積が増えます。建物を置ける面積は減ります」


「それで成立するかを見る」


 藤崎が椅子へ座り直した。


「道路も管理も共有できるから、三つをまとめるんだろう」


「共有していいものを、まだ決めていない」


 真鍋が配置図の余白へ書き込んだ。


 共用道路。


 専用道路。


 警備範囲。


 設備停止の影響。


 同じ敷地に置けば、費用の一部は減る。


 同じ敷地に置いたために、一か所の故障や渋滞が、別の事業へ及ぶ可能性も増える。


「一つずつ作る場合と、まとめる場合を比較します」


 真鍋が言った。


「土地代だけで出た差額から、追加の道路と設備費を引きます。共用で減らせる管理費も、担当部署を決めたものだけ計上します」


「まだ決めていないものは」


「利益には入れません」


 電力担当者が、送電線の位置を示した。


「接続の事前相談は受け付けられています。正式な検討に必要な資料を追加しています」


「近いから安い、という回答ではないな」


「はい。接続点までの距離だけでなく、その先の設備の空きと、必要な増強によります」


「ここで発電する分を、ここで使えば済むという話でもない」


「発電量と使用量が、同じ時刻に一致しません」


 情報通信の担当者が続けた。


「データセンター側は、発電設備の都合で止められません。外部からの受電と非常用電源を含めて考えます」


「発電設備を隣に置くことで、何が減る」


「供給の方法と契約が決まらなければ、確定できません。少なくとも、非常用設備が不要になるわけではありません」


 藤崎は腕を組んだ。


「三つ一緒にやる強みが、だんだん消えていくな」


「消えた分は、最初からなかったんだろう」


 榊原は答えた。


「残るものを見たい」


 通信担当者は、候補となる回線の経路図を広げた。


 二色の線が、別々の道路を通って敷地へ入っている。


「二系統です」


「途中も別か」


「事業者は分かれています。ただ、この区間は同じ橋を通る可能性があります」


「橋が落ちたら、両方切れる」


「迂回経路の敷設可否を照会しています」


「費用と日数は」


「未回答です」


 榊原は、経路図を比較表の上へ重ねた。


 土地が安くても、通信を引く費用が増えれば差は縮まる。道を分け、地盤を直し、電力設備を増強するうちに、都市近郊より高くなることもあり得た。


「利用企業の本社へ近くないことは、どこまで不利になる」


 情報通信の担当者が答えた。


「用途によります。特に短い応答時間が必要な処理と、保管や災害時の備えでは、求められる場所が違います」


「今、意向を聞いている三社は」


「用途が同じではありません」


「同じ単価と稼働率で置くな。ここで使う理由が強い相手から、条件を詰めてくれ」


 担当者は、計画書の売上欄へ付箋を貼った。


 自治体の担当者が、空いた間に口を開いた。


「人材の確保についても、地域として協力できます。学校と職業訓練の関係先には、相談ができます」


 榊原は顔を上げた。


「開業時に必要な人と、その後に育てる人を分けたい」


「専門人材は、当初は外から来る想定でしょうか」


「今いる人で足りるかを、まだ確認していません」


 情報通信の担当者が、小さくうなずいた。


「保守を請け負う企業が、どこまで対応できるか調べています。夜間の障害対応も必要です」


「夜中に呼ばれた人は、どこから来る」


 榊原が尋ねた。


「一番近い拠点でも、車で一時間半ほどです」


「冬も同じか」


「そこは、まだ」


「常駐させるなら、給与だけでは済まない。住む場所、交代要員、研修の費用も出してくれ」


 自治体の担当者が書き込んだ。


「住宅については、空き物件の情報を集められます」


「家族で来る人もいる。部屋が空いているだけで、住めるとは限らない」


 榊原は、窓際の止まった時計を見た。


 この工場が閉じた時、働いていた人間は、ほかの場所へ行ったはずだった。


 その人たちが、新しい建物を作れば戻ってくるという資料は、どこにもなかった。


 休憩に入ると、藤崎が廊下で榊原を呼び止めた。


「ここまで全部拾えば、どこにも作れなくなる」


「全部を直すとは言っていない」


「都市近郊なら、人も通信もそろってる。土地代を多く払って、そこでやればいいという結論になるぞ」


「なるかもしれない」


 藤崎は口を閉じた。


「お前を呼んだのは、判断ができると思ったからだ」


「だから来てる」


「俺は、この土地を何年も見てる。工場がなくなって、昼飯を食う店まで閉じた。自治体も次の企業を探し続けている」


「知ってる」


「なら、少しは進める話をしろ」


 榊原は廊下の窓へ寄った。


 駐車場の隅に、弁当を売る車が一台止まっていた。調査に来た作業員が、折り畳みの台へ金を置いている。


「お前は、ここに作りたいんだな」


「作れると思っている」


「作りたい理由と、作れる理由を、同じ紙にするな」


 藤崎の顎が動いた。


 榊原は続けた。


「ここに仕事を残したいという話は、取締役会でしていい。だが、そのためにいくら負担するのかは、出す側が決める。電力が安くなるはずだとか、人が集まるはずだとか、別の数字へ隠すな」


「お前の会社は、そういう金を出さないのか」


「出す。事業として返ってくる金と、返らなくても引き受ける金を分けてからだ」


 藤崎は窓の外を見た。


「冷たいな」


「続けられない約束をする方が、後で困らせる」


 会議室へ戻ると、西野が新しい紙を用意していた。


 工場の出荷責任者から、今の物流業者へ連絡がついたという。


「共同でやるなら、現場を見せてもいいそうです。ただ、向こうも条件があります」


「何だ」


「工場との取引を、こちらが直接取り直すための見学にはしたくない、と」


「その通りだな」


「作業手順と人員配置は、今の契約に関わる情報です。見せる範囲を先に決めたいそうです」


 榊原は法務担当者へ顔を向けた。


「見学で知ったことを、別の業者への値下げ材料に使わない。その範囲まで含めて、短くまとめられるか」


「先方の意向を確認します。秘密保持だけで、取引上の不安が全部なくなるわけではありません」


「分かってる。見せられないものを、無理に求めるな」


 西野が紙を裏返した。


「もう一つあります。今の倉庫は、来年の春まで借りる契約です。近くへ移っても、その間の賃料が残ります」


「倉庫全部を移す必要はあるのか」


「今回の工場の荷物だけなら、一部です」


「空いた部分へ、ほかの荷物を入れられるか」


「それも含めて話したいそうです」


 藤崎が尋ねた。


「そこまで面倒を見るのか」


「費用を誰かの表から消しても、誰かが払う」


 榊原は西野の紙へ視線を戻した。


「共同でやる以上、向こうに残る費用も見ないと、こちらの料金を決められない」


 真鍋が、既存拠点の収支表を隣へ置いた。


「こちらも同じです。新拠点へ荷物を移した後の倉庫に、固定費が残ります」


 新拠点の売上は、既存荷主を移せば作れる。


 だが、同じ荷物のために、二つの建物と二組の人員を抱える期間が生まれる。新しい倉庫だけ黒字でも、古い拠点の赤字が増えれば、会社に残る金は減る。


「新しく取れる荷物と、移す荷物を分けました」


 真鍋が言った。


「移す分については、古い拠点の費用がいつ減るかを入れています。今の段階では、物流棟を最初から計画どおり建てる根拠が足りません」


 西野は黙って表を見ていた。


 榊原が尋ねた。


「全部建ててから営業をかければ、埋められるか」


「可能性はあります」


「空いている間の金は」


「こちらで負担します」


「それを負担するほど、今の引き合いは強いか」


 西野は首を振った。


「今の資料では、言えません」


「なら、建物を小さくする案を出せ」


 藤崎が配置図を引き寄せた。


「小さくすれば、一平方メートル当たりの工事費は上がる」


「総額は」


「下がる」


「使わない床の単価が安くても、返済には使えない」


 施工担当者が、物流棟の線を鉛筆で引き直した。


 短くなった建物の横に、何も置かれていない余白ができた。


「後で増やせる配置にしますか」


「増やす時の工事車両が、営業中の車両を止めない案にしてくれ。空けた土地を、今すぐ買う必要があるかも分ける」


 真鍋がペンを止めた。


「三つの施設を、同じ時期に完成させる前提も外しますか」


 榊原は、しばらく図面を見た。


 三つをまとめれば、事業は大きく見える。銀行も設備会社も、全体の金額を見て人を付けている。


 小さく区切れば、一括で発注する時ほどの条件は出ないかもしれない。共用設備の費用を、最初の施設だけで負担する期間も生まれる。


「前提は外す。ただし、分けたために増える費用も出す」


「基本設計の検討範囲が増えます」


「最初の三億円の承認範囲でできるか、明日までに確認してくれ。超えるものは発注しない」


 藤崎が言った。


「新聞では、もう八百億円の計画だ」


「新聞の面積に合わせて建てるわけじゃない」


「先方は、そうは受け取らない」


「どの先方だ」


「自治体も、銀行も、設備会社もだ。小さくなると知れば、話の進み方が変わる」


「まだ決めていないことを、決まったように受け取っている相手には、今伝える」


 榊原は自治体の担当者を見た。


「道路の調査は、範囲を変えられますか」


 担当者は即答しなかった。


「予算を付けたばかりです。発注前なら、調査内容を整理できます。ただ、内部への説明は必要です」


「こちらも資料を出します。事業中止の連絡ではなく、段階的に作る場合も調べるという内容です」


「雇用人数の見込みも変わりますか」


「変わる可能性があります。前の人数をそのまま使わないでください」


 担当者は、計画書の表紙を閉じた。


「議会で質問が出るかもしれません」


「必要なら、説明に来ます」


 藤崎が椅子の背へ身体を預けた。


 榊原が言うほど、計画は白紙ではなかった。


 まだ土地も買っていない。融資も承認されていない。それでも、一度外へ出た数字を小さくするには、新しい説明が必要になっていた。


 会議が終わりかけた時、西野が手を挙げた。


「工場の荷物についてですが、新拠点を待たずに試すことはできますか」


「場所は」


「工業団地の端に、使っていない荷捌き場があります。屋内です。ただ、床と照明、それから夜間に使えるかを確認する必要があります」


「借りる契約はするな。先に現場を見る」


「検品業者と一緒に見ます。今の倉庫で何をしているか、確認してからです」


「それでいい」


 藤崎が榊原を見た。


「そっちで回れば、新拠点へ来る必要がなくなる」


「来なくて済むなら、それも答えだ」


「八百億円の事業を作るための調査だぞ」


「八百億円を使うかどうか、決めるための調査だ」


 西野は紙へ何かを書き足した。


 榊原は、その手元を見て言った。


「ただし、試す仕事にも責任者を置け。小さいからといって、荷物の受渡しを曖昧にするな。傷、数違い、遅配。どこから誰が引き受けるかを決めてから動かす」


「分かりました」


「荷物が一日遅れた時、相手が誰へ電話するかまで決めておけ」


 西野は、もう一度うなずいた。


 帰り際、自治体の担当者が榊原を呼び止めた。


「大きな施設が来ると、みんな期待します」


「ええ」


「小さく始めるという説明は、後退したように聞かれるかもしれません」


 廊下の向こうから、調査員たちの靴音がした。


「何を約束できますか」


 榊原が尋ねた。


 担当者は少し考えた。


「今は、調査を進めるところまでです」


「こちらも同じです」


「物流の試行は」


「条件が合えば進めたい。ただ、まだ引き受けるとは言えません」


 担当者は名刺入れをしまった。


「そのまま伝えます」


 車へ乗り込むと、藤崎は窓の外を向いた。


「俺は、ここにもう一度、人が通う景色を作りたい」


 今度は、事業性の話として言わなかった。


 榊原は膝の上で配置図を畳んだ。


「それは、最初から聞きたかった」


「聞いてどうする」


「いくらまで引き受ける気があるか、次に話せる」


 藤崎は返事をしなかった。


 工業団地を抜ける手前で、西野の携帯が鳴った。


 安全な場所へ車を止めてから、電話に出た。


 検品業者からだった。


 来週の火曜日、午後八時なら、現場を見せられるという。工場から届く荷物がそろい、夜の作業が始まる時刻だった。


「三人まででお願いしたいそうです」


「俺と、お前と、実務を引き受ける責任者で行く」


 榊原が言った。


 真鍋が予定表を開いた。


「火曜の夜は、設備会社との会食です」


「俺から先方へ連絡する。担当者だけで話を進めていい内容は、今日中に決める」


 西野が電話の向こうへ人数を伝えた。


 通話を終えると、住所を紙へ書いた。


 候補地から、西へ三十キロあまり。


 地図の中では、削減できる運行距離として扱っていた場所だった。


 榊原は、その住所を受け取った。


「長靴は要りますか」


 西野が尋ねた。


「聞いてくれ。こちらの都合で、現場を止めたくない」


 西野はもう一度電話をかけた。


 真鍋の予定表から、会食の横に書かれた榊原の名前が消えた。


 代わりに、午後八時、検品倉庫と書き込まれた。

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