残金1,842円|第23話「再生案件」
給料は払えます。
そう言った社長の横で、経理の女性が首を振った。
「手取りだけです」
征一は、差し出しかけた名刺を机に置いた。
女性は膝の上から茶封筒を出した。口の折り返しが柔らかくなっている。何度も開けた跡だった。
「今月の振込額はそろえられます。でも、その後の引き落としまで払うと、材料の代金が足りません」
社長が女性を見た。
「そこは、入金を前へ寄せてもらえば」
「昨日、断られました」
女性は征一ではなく、社長へ答えた。
机の向こうで、壁の時計が一度鳴った。
応接室の窓の下には、油の付いた作業着が干されていた。工場の奥から機械の音がする。一台が止まると、その後ろで別の一台が動いているのが分かった。
仕事をしている会社だった。
会社を畳む相談だとは、電話で聞いていなかった。
征一の倉庫を使い始めた金属部品工場から、近くの加工会社が保管場所を探していると紹介された。使っていない区画の話になると思っていた。
持ってきた倉庫の図面は、まだ鞄に入っていた。
「保管したいのは、何ですか」
征一が尋ねると、社長は少しだけ顔を上げた。
「材料と、加工の済んだものです。ここが狭くなりまして」
「仕事が増えたんですか」
「増えています」
隣の女性が、封筒の中から一枚の紙を抜いた。
「受注はあります。ただ、引き取ってもらえていないものもあります」
社長の指が、膝の上で重なった。
「先方の生産がずれただけです」
「いつ、引き取ってもらえますか」
征一が聞いた。
社長は答えなかった。
女性が紙を置いた。
納品を予定していた月と、変更された月が並んでいた。二度書き換えられた品物がある。次の日付が空欄のものもあった。
「この分は、請求できていますか」
「検収してからです」
「材料代は」
「払っています」
征一は倉庫の図面を出さなかった。
外へ移せば、工場の床は空く。
だが、金を受け取れる日が決まるわけではない。保管料と運ぶ費用が、新しく増える。
「今日は、場所の契約は決めない方がいいと思います」
社長の顔が固くなった。
「うちでは、払えないと」
「払う必要のない費用を、先に決めたくありません」
女性が、封筒から残りの紙を出した。
試算表。借入の返済予定。支払いを待ってもらっている会社の一覧。
征一は、真鍋へ目を向けた。
真鍋は一覧を受け取る前に、女性へ聞いた。
「今の預金残高と、今日から出ていく予定はありますか」
「あります」
「入金の予定も、同じ日付で見せていただけますか。受注ではなく、請求が確定したものから」
社長が背もたれから体を起こした。
「銀行にも、同じものを出しています」
「銀行へ出した日から、変わった支払いはありませんか」
女性は、机に置いた封筒を押さえた。
「あります」
その返事を聞いてから、真鍋は紙を手前へ寄せた。
工場を案内したのは、社長だった。
会社の名は東浜精工といった。
従業員は十八人。産業機械に使う金属部品を加工していた。社長の高瀬は、父から引き継いだ会社だと言った。
「これが、一番精度の出る機械です」
高瀬は、通路の右側で止まった。
扉の閉じた加工機の前で、若い作業員が測定器をのぞいている。征一たちが来ても顔を上げなかった。
「入れた時には、仕事も決まっていたんですが」
高瀬が言いかけると、奥にいた白髪の男が近づいてきた。
「次の材料、どうなりました」
「手配している」
「いつ入りますか」
「確認する」
男は高瀬の顔を見た後、征一へ軽く頭を下げた。
それから、機械の横に置かれた材料を数え直した。
「工場長です」
高瀬は歩き始めた。
征一はすぐについていかなかった。
「あと、何日分ありますか」
工場長は高瀬を見た。
「こちらの会社の方ですか」
「まだ、何も決まっていません」
征一が答えると、工場長は材料へ目を戻した。
「今の順番なら、木曜までです」
「今日は月曜ですね」
「はい。ただ、全部の機械を同じようには動かせません」
高瀬が口を挟んだ。
「材料屋には話をしています」
「その返事を待って、順番を組んでいます」
工場長の声は、責める調子ではなかった。
征一は、加工機の前の若い作業員を見た。
一つ削るたびに、測る。数字を記録し、もう一度、部品を機械へ入れる。
受注があっても、材料がなければ止まる。
止まった後で材料が届いても、出荷日に間に合うとは限らない。
征一が応接室へ戻ると、真鍋は携帯電話の計算機を閉じたところだった。
「まず、二週間を見たいです」
机には、経理の女性が書いた日付の表があった。
給与。材料。電気。借入の返済。
その間に、取引先から入る予定の金があった。
「月末だけなら、足りるように見えます」
真鍋は言った。
「その前に、止まる日があります」
高瀬は立ったまま、表を見下ろした。
「いくら、入ればいいですか」
征一は顔を上げた。
「何をするためのお金ですか」
「つなぐためです。受注はあるんです。今を越えれば、売上は立つ」
「その受注を終えるまでに、いくら出るかを見せてください」
高瀬の口元が動いた。
「利益は出ています」
真鍋は試算表を開いた。
「この利益には、引取りが延びた品物も関係していますか」
経理の女性がうなずいた。
「完成品として残しています」
「今後、加工し直す必要は」
「先方から図面の変更が来た分があります」
高瀬が椅子を引いた。
「全部ではありません」
「全部とは言っていません」
真鍋は静かに答えた。
「ただ、今の原価のまま納められる分と、追加で加工する分を分けたいです。引き取られないものを、売れるものと同じ金額で置くこともできません」
経理の女性は、新しい紙を取りに立った。
高瀬が、その背中を呼び止めた。
「そんなものまで、今、必要か」
女性は振り返った。
「材料屋さんにも、同じことを聞かれました」
高瀬は黙った。
征一は、机の上の試算表から手を離した。
「今日、ここでお金を入れる約束はできません」
高瀬の顔から、表情が薄くなった。
「では、何のために」
「入れたお金が、次の仕事を終える前に消えるなら、こちらも御社も困ります」
機械の音が、窓を通して聞こえた。
「続けられる仕事がどれかを、先に確かめたいです」
高瀬は、しばらく征一を見ていた。
帰れと言われるかもしれないと思った。
だが高瀬は、机の電話を引き寄せた。
「工場長を、呼んでもらえますか」
受注を一件ずつ並べると、忙しさの中身が変わった。
継続して出る標準品は、段取りをまとめれば利益が残っていた。
少量の特注品は、見積もった時より加工の手間が増えているものがあった。高瀬が客先の担当者へ口頭で応じた変更もある。追加料金の請求は、話していなかった。
「次の仕事もありますから」
高瀬は言った。
工場長は、工程の記録をめくった。
「この仕事が入ると、こっちを止めています」
標準品の受注へ指を移す。
「止めた分を、土曜にやっています」
経理の女性が、その日の勤務表を出した。
特注品の見積書には、残業代がなかった。
高瀬は紙を持ち上げ、また置いた。
征一は、値上げすれば済むとは言わなかった。
既に受けた注文がある。納期を延ばせば、客先の組立ても止まる。変更分を請求できるかどうかも、やり取りを確認しなければ分からない。
「これから受ける分は、同じ条件では続けられません」
征一が言うと、高瀬はすぐに答えた。
「それで切られたら、どうするんですか」
「残す仕事まで、終えられなくなるよりは」
「あなたは、そう言えますよ」
高瀬の声が初めて大きくなった。
「うちは、父の代から頼まれているんです」
工場長が記録を閉じた。
「社長」
高瀬はそちらを見なかった。
「断って帰ってきた後、ここで何を動かせばいいんですか」
征一は、机の上の受注一覧を見た。
高瀬にとっては、一行の売上ではなかった。
頭を下げて仕事を取った日があり、機械を買った時に約束した相手がいる。今後も呼んでもらえると思って、急な変更を受けた。
その関係を切らずに済む金を、求めていた。
「私が引き受けるとしても、その注文を全部残す約束はできません」
高瀬が、ゆっくり征一へ顔を向けた。
征一自身、口にするまでは、そこまで考えているつもりではなかった。
工場を見た時から、頭の中で仕事をつないでいた。
倉庫を使う荷主にも、機械加工を頼む先がある。ここに残る技術を必要とする会社はあるかもしれない。物流を組み直せば、材料と完成品の動かし方も変えられる。
だが、それは、今ある会社へ金を足すだけの話ではなかった。
「引き受けるというのは」
高瀬が聞いた。
「仕事と設備と、人を確認した上で、事業を譲っていただく方法も含めて考える、という意味です」
経理の女性が、征一を見た。
真鍋は何も言わなかった。
高瀬は両手を机の下へ入れた。
「会社ごと、ですか」
「まだ、方法は決められません。借入も、設備の所有者も、契約も見ていませんから」
「借金を払ってもらえるなら」
「そこも、約束できません」
高瀬の肩が止まった。
征一は言葉を続けた。
「会社の株を買えば、その会社にある借入や契約も残ります。事業だけを譲るなら、何を移せるか、一つずつ確認が必要です。今の会社へいくら残り、債権者へどう払うかも、別に決めなければなりません」
「私の保証は」
真鍋が、高瀬を見た。
「事業を譲っただけでは、消えません」
高瀬は、机の端を見た。
工場を残せば、自分もそこに残れる。
借金を払えば、もう一度、同じように始められる。
征一の言葉を、そのどちらかとして聞いていたのかもしれなかった。
経理の女性が、借入の一覧を高瀬の前へ置いた。
高瀬は、初めてそれを自分の方へ引いた。
その日は、何も署名しなかった。
帰りの車で、真鍋は資料の入った鞄を膝に置いた。
「当社が、仕事を出すだけでは足りません」
「分かっています」
「仕事を増やせば、材料と給与が先に増えます。今の支払条件のままでは、苦しい日が早くなる可能性もあります」
征一は前を見た。
「続けられる部分は、ありました」
「はい。だから、安く見えると思います」
信号が変わった。
征一はアクセルを踏み、真鍋の次の言葉を待った。
「機械がいくらかより、引継ぎの日から、誰が何を払うかです。代金を用意した後に、動かす金が残らない買い方はできません」
征一はうなずいた。
倉庫の仕事に残すと決めた金があった。
その金を、ここへ回すつもりはなかった。
「調べるために使える額から、決めましょう」
真鍋は鞄から手帳を出した。
「それと、やめる条件です」
「資料が出なければ、進めない」
「出てきた結果、採算がなければ」
征一は、道路の先にある工場の屋根を見た。
さっきまで、十八人が働いていた。
「その時もです」
数日後、高瀬は会社の顧問税理士と、弁護士を同席させた。
征一側も、契約と債務を確認するための専門家を入れた。相手の顧問から説明を受けるだけでは、買う側の判断には足りなかった。
まず、情報を誰に見せるかを決めた。
従業員へ話す時期も、顧客へ照会する範囲も決めずに、資料を持ち回ることはできなかった。
高瀬は取引先の名が載った一覧を、しばらく手放さなかった。
「これが外へ出たら、注文を止められます」
「だから、先方へ確認する時は、御社と順番を決めます」
征一は答えた。
「確認しないまま、引き受ける約束もできません」
高瀬は、一覧を机へ置いた。
資料がそろうにつれて、工場で見たものに、別の持ち主が現れた。
一番精度の出る加工機は、リース会社の所有だった。
工場の土地と建物には、銀行の担保が付いていた。
棚に積まれた材料の一部は、客先から預かったものだった。東浜精工の在庫として売ることはできない。
完成品にも、同じ客先の材料を使ったものがあった。
「機械を残して、ここで続けるなら」
征一が言うと、弁護士は設備の一覧を示した。
「貸す側の承諾が必要です。銀行が同意しても、こちらまで同意したことにはなりません」
高瀬が顔をしかめた。
「毎月、払っているんですが」
「その契約を、誰が続けるかの話です」
銀行との面談では、工場を動かし続けた場合と、止めて処分した場合の見通しを分けて出すことになった。
担保の付いた建物を、帳簿の金額だけで譲ることはできなかった。売却代金をどこへ入れ、担保をどう外すか。銀行内でも判断が必要だった。
担当者は、資料を閉じる前に聞いた。
「御社として、東浜精工への追加融資をお考えですか。それとも、事業の取得ですか」
「事業の取得を検討しています」
征一は答えた。
「その前の資金不足を、当社が無条件で埋めるお約束はしていません」
高瀬の指が、机の下で動いた。
帰り際、高瀬は廊下で征一を止めた。
「材料が、木曜までなんです」
「はい」
「話が決まるまで、少しだけでも」
征一は、扉の向こうにいる真鍋を見た。
今、振り込めば、材料は届くかもしれない。
だが、既に約束した支払いもあった。振り込んだ金で材料を買う前に、別の口座引落しが来る可能性がある。材料を買えても、その注文の代金を受け取るまで、給与と電気代は続く。
「必要な注文を選んで、支払い先まで確認させてください」
「そこまでしないと、駄目ですか」
「返せると言われただけで、お貸しすることはできません」
高瀬は、しばらく動かなかった。
「信用がないんですね」
征一は、すぐには答えられなかった。
高瀬が欲しいのは、検討を続けるという返事ではない。
明日、工場長へ言える言葉だった。
「御社の返済を、次に誰かが貸すお金へ任せる形にはしたくありません」
高瀬は、征一の横を通って階段を下りた。
その背中を見送り、征一は鞄の持ち手を握り直した。
検討には時間が要った。
工場には、その時間を買う金がなかった。
材料商社は、東浜精工への掛け売りを止めていた。
支払いを待っている分が残っている以上、さらに増やせないという。電話に出た担当者は、何度も同じ説明をした。
現金で買う分まで断っているわけではなかった。
高瀬の顧問らが、受注先と支払いを調整した。
納品の見通しが立っている標準品の一部について、先方が引取りの時期と支払条件を見直した。材料商社とは、古い未払分の協議を続けながら、新しい注文の支払いを混ぜない段取りを作った。
それでも、足りなかった。
東浜精工は、受けていた仕事の一部を客先へ返した。
工場長は、空いた工程の欄を見たまま、高瀬へ聞いた。
「次は、入れないんですね」
高瀬は、机の上の電話を見た。
長く付き合った担当者から、先ほどまで着信が続いていた。
「あの条件では、入れない」
工場長は返事をせず、予定表から作業指示を外した。
征一は、その場にいた。
注文を断れば採算がよくなると、紙の上では書けた。
実際には、機械が一台、早く止まった。
夕方になる前から、工場の奥が静かになった。
調べた結果、征一が引き受けたいと考えたのは、東浜精工の全てではなかった。
繰り返し出る標準品を中心に、残せる仕事を選ぶ。加工に必要な設備を使い、顧客から契約の承継を認めてもらう。工場の使用も、銀行や所有者との調整を済ませる。
従業員には、一人ずつ条件を示し、本人の意思を聞く。
高瀬が選んだ相手へ、十八人をそのまま渡すことはできなかった。
譲渡代金も、高瀬の再出発の資金として自由に残る金ではない。資産の価値を確かめ、債権者への支払いをどうするかは、高瀬側で手続きを進めなければならなかった。
話が進んでも、保証の問題は高瀬の手元に残った。
「工場を残す話と、私を助ける話は、違うんですね」
高瀬が言った。
征一は、向かいに座っていた。
「同じ約束には、できません」
高瀬はうなずかなかった。
ただ、席を立つこともなかった。
征一側の会議で、真鍋は取得代金の試算とは別に、もう一枚の表を出した。
引継ぎの準備。
材料。
給与。
電気。
検査と出荷。
最初の入金までに必要な金。
その次の月も、持ち続けなければならない金。
「代金が下がっても、こちらは同じだけ下がりません」
真鍋は言った。
「今の見通しでは、動かすために残す金の方が重いです」
征一は、二枚の表を並べた。
取得だけなら、手を出しやすい金額に見えた。
長く使われた機械と、受注と、十八人の技術がある。
だが、会社を買う金を用意しても、月曜の朝に材料が届くとは限らない。
「倉庫で残した分は、使いません」
征一が言うと、真鍋はうなずいた。
「新たに持つ分として、調達も含めて組みます。承認が出る前に、先方へ払う約束はできません」
「ほかに遅らせるものは」
真鍋は、一つの提案書を出した。
使っていない倉庫区画へ、設備を入れる案だった。
征一が確認の日を書いて戻したものに、新しい見積もりが付いていた。
こちらは、仕事を取れれば広げられる。
東浜精工は、調べている間にも小さくなっていた。
征一は、提案書の端を指で押さえた。
「今回は、こちらを見送ります」
「再生の方が、利益が大きいとは限りません」
「はい」
「手を入れる人も、必要です」
征一は、東浜精工の工程表を見た。
切り離す仕事は、決められた。
だが、残す仕事を止めずに変えるには、毎日、判断する人間が要る。
高瀬に全てを任せたまま、条件だけ変えることはできなかった。
「私も、入ります」
真鍋は少し黙った。
「いつまでですか」
「動き方が決まるまで」
「期限と、任せる相手を決めてください。社長が毎日そこにいられる前提では、買えません」
征一は、その言葉を書き留めた。
週の終わり、高瀬は、条件を整理した紙を持ってきた。
最終契約ではなかった。
調達、取引先、設備、工場の使用、従業員の同意。確認が済まなければ、実行しない。
その間に東浜精工が続ける仕事と、征一側が負担する調査の費用も分けてあった。
高瀬は、署名欄へ来る前に一度止まった。
「私が、価格を決められなくなるんですね」
「引継ぎ後の受注については、こちらで決めます」
「長い客でも」
「はい」
高瀬は、ペンを持ち直した。
「断った後に、あの人たちと会うのは、私です」
征一は、高瀬の目を見た。
「必要なら、私も行きます」
高瀬は答えなかった。
紙の最後まで目を通し、名前を書いた。
帰る前に、二人で工場へ入った。
工場長が、月曜からの予定を組んでいた。未確定の欄には、まだ何も書いていない。
「この仕事は、返事が来ています」
高瀬が、一枚の注文書を渡した。
工場長は数量と納期を見た。
「材料は」
「支払いの段取りを確認した。明日、先方から連絡が来る」
「来たら、入れます」
工場長は、注文書を予定表の横へ置いた。
征一は、その扱いを見ていた。
紙が来たからといって、工程には入れない。
材料が入り、人が動き、納められるところまでつながってから、初めて仕事になる。
高瀬が、工場の端の明かりを消した。
一列、暗くなった。
残った明かりの下で、若い作業員が最後の部品を測っていた。
征一は、持ってきた倉庫の図面を鞄の底へ戻した。
代わりに、東浜精工の支払予定を取り出した。
月曜の欄に、材料商社の名前がある。
その隣は、まだ空いていた。
「入金が確定したら、知らせてください」
征一が言うと、高瀬は紙をのぞき込んだ。
「私から、電話します」
工場を出て、征一は自分の手帳を開いた。
月曜の朝に入っていた予定を動かした。
空けたところへ、材料商社の名前を書いた。




