↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグった世界で俺たちは  作者: Kaいト
世界の片隅より、まだ見ぬ世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/9

#03 未知のバグ

 スドオオオオオオオン!!


「がっ……!?」


 背中から床に叩きつけられ、肺の空気が一気に押し出される


「……っ、げほっ、げほっ!!」


 くっそ、何だ今の!?


 舞い上がった埃に咳き込みながら、どうにか息を吸い直す。


「っ……いてぇぇ……」


 背中の痛みに顔をしかめ、ゆっくり身体を起こす。


「………は?」


 見上げると、天井には大きな穴が空いていた

 その向こうに見えるのは、ついさっきまで俺たちが立っていた屋上


「…………落ちた?」


 いや、それは見れば分かる。


 問題は、なんで落ちた?


 俺は確か、あいつを家まで送り届けるために屋上の扉へ向かって、それから――


「……ドアノブ」


 そうだ。ドアノブに手を伸ばした。


 ただ、それだけだった。


 なのに次の瞬間、足元から床が消えて――


 って、今はそんなことどうでもいい。


「……なんで、痛ぇんだ?」


 背中に手を回すと、鈍い痛みが走る

 間違いない。さっき落ちた時の衝撃だ。


 その瞬間、ほんの数分前に考えていたことが頭をよぎる。


『おかしいな……この辺りなら落下による衝撃とか無いはずなんだけど。』


「…………」


 そうだ。


 この渓谷一帯では、『落下無効』のバグが発生している。


 だから俺もあの子供も、あれだけの高さから落ちて無傷だった。それなのに今、俺の背中はちゃんと痛い。


「……バグが、消えた?」


 バグが突然消えること自体はある。だから、たまたま今この瞬間に消えたって可能性も、なくはない。


 でも、同じタイミングで屋上の床まで消えたんだよな。


「……バグの、上書き」


 新しく現れたバグが、それまでそこにあったバグを喰う現象。


 絶対じゃないが、バグ同士が上書きし合った場合、より強大な方が残ることが多い。


 もしそうなら、『落下無効』が効かなくなったのも説明がつく。



 もう一度、頭上の穴を見る


 ただ床を消すだけで、渓谷一帯に広がる『落下無効』を上書きできるとは思えない。


 なら――まだ何かある。


「こりゃあ……しくじったなぁ」


 その時だった


「お兄ちゃーーーーん!!」


 上から声が降ってくる


「生きてるーーー!?」


「ああ!! そんなことより、お前は大丈夫か!?」


「うん!」


 その返事に胸を撫で下ろす


「足元の床は!?」


「あるよ!」


「分かった! そこから動くなよ!」


「うん!」


 背中は痛むが、手足は動く。骨も――多分、大丈夫。


 本当なら今すぐあいつと合流したい。でも、何も分からないまま近づく方が危険だ。


「未知のバグか……」


 最初から全部分かってるなら、そもそも俺の仕事なんて必要ない。


「知らねぇなら、知ればいい」


 痛む背中を押さえながら立ち上がる


「それが解析屋だ」


 改めて周囲を見渡す


 どうやらこのビルも相当ボロボロらしく、本来ならいくつもの部屋に分かれていたはずのフロアも、壁が崩れて大半が一つの巨大な空間みたいになっている


 そして頭上には、それ以上に巨大な穴。


「…………デカすぎだろ」


 屋上のほとんどが、丸ごと消えてやがる。残っているのは、あいつが立っている端の方だけ


 まずはここから出るか。


 崩れた壁の中を見回すと、廊下へ続く扉が一つだけ辛うじて残っていた


 ドアノブを捻り、警戒しながら廊下へ出る


 一歩、二歩。


 ミシッ。


「ん?」


 振り返った瞬間――


 ドゴオオオオオン!!


「うわっ!?」


 咄嗟に腕で顔を庇う


 壁の一部が崩れ、大量の瓦礫が今通ったばかりの扉へ雪崩れ込んでいく


 舞い上がった埃が収まった頃には、人一人通れそうな隙間すら残っていなかった


「…………マジかよ」


 窓はない。他の出入口も、とっくに壁ごと崩れてる。


 つまり――もう一度ここへ落ちたら、今度は出口がない。


「……思ってた以上に、ヤバいな」


 どうする。


 このまま屋上に戻る?


 いや、そもそも戻れるのか?


 もしまた床が――


「…………」


 いや、焦るな。


 こういう時こそ冷静に――


「……すぅー……はぁー……」


 一度、深呼吸する


 よし。


 まずは、このビルから出られるか。そこからだ。


 廊下を進み、案内表示を頼りに階段を降りていく

 一階のエントランスまで辿り着くと、ガラス扉の向こうには見慣れたバグだらけの街並みが広がっていた


 見たところ、何もおかしくない。


 でも――


「……ま、いきなり俺で試す必要はないか」


 足元の小石を拾い、ポケットから一円玉も取り出す


 材質の違う二つをまとめて外へ放ると、床を跳ねたそれらがビルの境界を越えた瞬間――消えた


「…………」


 外を覗いても、どこにも落ちていない。


「お兄ちゃーーーん!」


 上から声が響いてくる


「聞こえてるぞー!」


「なんか落ちてきたー!」


「何が!?」


「石と……え? 一円!?」


「…………」


 なるほど。


 消えたんじゃない。


 外へ出たものが、屋上へ飛ばされる。


 だったら――人間は?


「…………」


 何が起こるか分からない以上、試す対象は最初から一人だ。


 ――俺でやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。