第15話 招待状
タワー暦1199年 11/26 | ミナト・事業所/住居
タツオは最初、問い合わせを出したことへの呼び出しだと思った。
ユノに見せると、相手の身元は正規の公開名簿と一致した。内容も、成果の利用に関する質問と、今後の研究機会の案内だった。
「断れますか」
「面談の依頼です。断ることも、目的を確認することもできます」
タツオは目的を確認した。返事はその日のうちに来た。
航行経路の補正方法について、外部の研究部門から照会があった。本人の希望を含め、推薦の可否を相談したい。
期待してはいけないと思うほど、期待が大きくなった。
イサクの公開記録を調べると、過去の広域避難の報告書が見つかった。二つの居住地への支援を延長し、受け入れ側の設備が過負荷になった事例だった。負荷の上限を過小に見積もったと、当時の担当者の名前とともに記載されている。その中にイサクの名もあった。
失敗を公開したまま責任者を続けていることが、タツオには意外だった。学校なら、次の課題で評価を上げればよかった。現実の失敗は、次の結果で消えない。
報告書には、支援しなければ別の損失が生じたことも書かれていた。何も悪いことを望まなくても、選んだ行動が人を困らせる。
タツオは、イサクが怖くなったのか、身近になったのか、わからなかった。
ユノに報告書を見せると、現在の面談の意図を過去の一件だけから決めないほうがよいと言われた。
「でも、知っておく意味はある?」
「質問を考える材料にはなります」
タツオは、自分の成果が採用されなかった場合、何を見直せばよいか教えてもらえるのか、と質問欄に書いた。これまで不採用を、評価の終わりとして受け取っていた。続きのための情報を求めることはできる。
研究施設の写真をもう一度開いた。胸が高鳴った。警戒しているからといって、嬉しくないふりをする必要はなかった。
面談の前に、タツオは成果の確認資料をまとめた。自分の方法であること、既存の解法に負っている部分、現在わかっている限界。かつての応募書類から、評価の頁を半分削った。
レンはその間、別の机で部品の費用を計算していた。
「研究の話が来た」
タツオが言うと、レンは顔を上げた。
「よかったな」
「まだ決まってない」
「それでも、話が来た」
レンはまた費用の一覧に戻った。引き留めないことが冷たく思え、それを期待していた自分が身勝手に思えた。
「この仕事は、途中でやめることになるかもしれない」
「決まったら引継ぎを相談しよう」
それも、正しい答えだった。
タツオは端末の資料へ戻った。ユノが、条件を狭めて実証したことを強調したほうがよいと助言した。
「広く役立つと書いたほうが、評価されない?」
「確認していない範囲は、質問されると説明できません」
彼はその一文を削った。
帰りに、明日のための上着を買おうとしてやめた。今の服は清潔で、破れていない。必要なのは、自分が何をしてきたかを話すことだった。
面談の資料を閉じると、ハルカの運航注意が更新されていた。沿岸北部の警戒域が少し南へ伸びている。
タツオは研究資料の地図と、輸送用の地図を並べた。
同じ惑星の、同じ場所だった。
それなのに、まだ別の人生の図のように見えた。




