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今宵月 月花大戦  作者: アル治
月花大戦

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8/10

第8話  静かに侵すもの

いつも読んでいただきありがとうございます。

主催側ホテル。

試合の余韻は、もう消えていた。

残っているのは――

静けさだけ。

部屋。

秋桜は、ベッドに腰を下ろしていた。

「……ねむい」

軽く伸びをする。

体が、重い。

「疲れたなぁ……」

テーブルの上。

手を伸ばしかけて、止まる。

「……あれ?」

違和感。

喉が、少しだけ渇く。

指先が、わずかに震える。

「……変、だな」

その時。

別の部屋。

文月が、足を止めていた。

「……やられたか」

壁に手をつく。

視界が、わずかに揺れる。

「遅効性……」

小さく息を吐く。

「食事……か」

思い出す。

ほんの僅かな違和感。

「……気付くのが遅れたな」

舌打ち。

「秋桜の方が……深い」

体勢を立て直す。

「……行くか」

足取りは重い。

だが、止まらない。

秋桜の部屋。

「……ねむい……」

ベッドに倒れ込む。

その瞬間。

気配。

「……っ」

遅い。

動かない。

影が、揺れる。

音もなく。

近づく。

「……やっぱりか」

ドアが開く。

文月。

「……毒だ」

その一言。

影が止まる。

「……へぇ」

低い声。

「気付くか、普通」

姿は見えない。

だが、そこにいる。

文月は、視線を動かさない。

「2人同時に仕込むとはな」

「……仕事なんでね」

わずかな殺気。

秋桜の呼吸が浅い。

「解毒は出来るか?」

「無理だな」

即答。

「だが、抑えることは出来る」

文月が手を上げる。

「――止まれ」

言葉が落ちる。

秋桜の震えが、止まる。

同時に。

文月の膝が、わずかに崩れる。

「っ……」

「……無茶するねぇ」

影の声。

「今なら、まとめて殺せるのに」

沈黙。

文月は笑う。

「出来るなら、やっているだろう」

その言葉。

わずかな間。

「……確かに」

気配が、薄れる。

「今回は引く」

「でもな――」

「次は、仕留める」

完全に消える。

静寂。

文月が、息を吐く。

「……面倒な連中だ」

ベッドに近づく。

秋桜の顔を見る。

「……生きてるな」

小さく頷く。

「運がいいのか……悪いのか」

その時。

秋桜の手が、わずかに動く。

空間が、歪む。

重力が乱れる。

「……不安定か」

文月が呟く。

「毒の影響……か、それとも――」

目を細める。

「……両方だな」

秋桜が小さく呟く。

「……なんか……変……」

その声は、かすれていた。

文月は何も言わない。

ただ、窓の外を見る。

静かな夜。

だが――

確実に。

何かが、動いている。

8話も読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。

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