第7話 月に触れる者
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試合後の夜。
主催側ホテル。
静まり返った廊下。
音もなく。
1つの影が、歩いていた。
「……ここやな」
小さく呟く。
扉の前。
ノックは、しない。
「――入るで」
その瞬間。
空気が、歪んだ。
中にいた気配が、反応する。
「……誰だ」
低い声。
彼岸花は、静かに笑った。
「誰でもええやろ」
1歩、踏み出す。
「殺す相手なんやから」
次の瞬間。
距離が消える。
手が、届く。
その時。
「――そこまでだ」
止まった。
彼岸花の手が、空中で止まる。
「……は?」
視線の先。
いつの間にか。
1人、立っていた。
師走。
「そこ、どいてくれへん?」
彼岸花が言う。
「それは出来ない」
「なんで?」
1歩。
師走が前に出る。
「月を殺していいのは――」
その目が、細くなる。
「俺だけだ」
空気が変わる。
彼岸花が、笑う。
「はぁ……」
「面倒なん来たなぁ」
その瞬間。
“消えた”
次の瞬間。
衝撃。
師走の腕と、彼岸花の手がぶつかる。
「……速いな」
師走が呟く。
「そっちもな」
彼岸花が笑う。
一瞬の静寂。
そして。
「今日は、やめとくわ」
すっと、距離を取る。
「試合、壊したらあかんしな」
師走は動かない。
ただ見ている。
「次は、止められる思わんといてな」
背を向ける。
「神無月は、うちが殺す」
足音が遠ざかる。
静寂。
師走が、ぽつりと呟く。
「……好きに言え」
その視線は、扉の向こう。
「殺すのは――俺だ」
夜は、まだ終わらない。
廊下。
「……次は、お前だ」
霜月の声。
睦月が振り向くより早く――
殺気。
その瞬間。
「危なっ!」
向日葵が割って入る。
衝撃。
拳と刃がぶつかる。
「……邪魔だ」
霜月が呟く。
「するよ」
向日葵が笑う。
「この人、うちのペアだから」
一瞬の静寂。
霜月の目が細くなる。
「……なるほど」
視線が向日葵に向く。
「お前か」
空気が変わる。
次の瞬間。
消える。
いや――
遅くなる。
世界が、わずかに歪む。
向日葵の動きが“遅れる”。
その隙に。
霜月が距離を取る。
「……今日はいい」
「順番がある」
振り返る。
「次は、殺す」
完全に消えた。
時間が戻る。
「……なに今の」
向日葵が呟く。
睦月が小さく息を吐く。
「面倒なのに目をつけられたな」
廊下の先は暗く見通せない。
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