第63話 女神との決着
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卯月が笑みを浮かべる。
「3人? 分身は1体しか出してない。」
「すり抜けたのは、俺の幻影だ。」
撫子も笑顔で続ける。
「そもそも、1人1体しか出せないなんて言ってないよー。」
女神の表情が歪む。
「なっ……!」
「ナメるな! こんな半端な呪いが、私に効くかー!」
女神は黒い彼岸花を掴み、力任せに引き抜こうとする。
だが――
一切抜けない。
「抜けない……?」
「なんで……?」
「ちゃんとした彼岸花でもないのに……。」
彼岸花は静かに答える。
「それは、貴女には絶対抜けません。」
「貴女達以外なら抜けるし、効果もないでしょうね。」
女神は眉をひそめる。
「何を言ってるの……?」
「私達にしか効果がないなんて……。」
「まるで……。」
その瞬間、女神の表情が凍りつく。
「まさか!?」
「あり得ない! あれは伝説、作り話よ!」
「しかも黒じゃない! 白のはずよ!」
彼岸花は首を横に振る。
「白を伝説にしたのよ。」
「白い彼岸花は出来ない。」
「神殺しは――黒!」
「そ、そんなはずない!」
「私でも出来なかったのに、こんな小娘が作れるはずがない!」
「待っていれば判りますよ、女神様。」
「人間風情がー!」
女神は彼岸花へ斬りかかろうとした。
その瞬間――
周囲を囲んでいた水鏡が、1枚、また1枚と静かに消えていく。
「う……嘘でしょ……。」
「私が……?」
「この私が……。」
「私は女神よ……。」
「私が……死ぬの?」
女神はその場で立ち止まり、膝から崩れ落ちる。
黒い彼岸花は、刺さった時とは比べ物にならないほど大きく育ち、女神の身体を飲み込むように咲き誇っていた。
「あり得ない……。」
「あり得ないのよ!」
叫び続ける間にも、黒い彼岸花はさらに大きくなる。
女神の身体は少しずつ、その黒い花へ吸い込まれていく。
「ここまで来たのに……。」
「ここまで来て……。」
女神は氷に閉ざされた神を見つめる。
「お前のせいで……。」
「お前が居なけれ……。」
言葉を止め、小さく笑った。
「違う……。」
「面倒だったけど……。」
「好きだった……。」
「愛していた……。」
それが女神の最後の言葉だった。
静かに息を引き取る。
卯月が呟く。
「倒したのか……?」
彼岸花は震える声で答えた。
「うん……。」
「倒した……。」
「殺した……。」
神無月はそっと彼岸花を抱き締める。
「気に病むことじゃない!」
「彼岸花は、みんなを……世界を救ったんだ!」
「大丈夫だ。」
その言葉に、皆が優しい眼差しを彼岸花へ向ける。
ただ1人――
如月だけは違った。
「おい!」
「神が俺の氷を破ってくるぞ!」
氷が音を立てて砕け散る。
涙を流したまま、神がゆっくりと立ち上がった。
「よくも……!!」
「許さねぇぇぇーー!!!」
神が彼岸花を睨みつける。
その瞬間。
彼岸花の身体が、ぴたりと止まった。
神無月が叫ぶ。
「彼岸花!?」
彼岸花は時間減速に囚われ、1歩も動けない。
神は涙を流したまま、低く告げる。
「お前は1番最後だ。」
「全員の死体の上で、お前は絶望しながら殺してやる!!!」
彼岸花を除く全員が、一斉に神へ向き直る。
戦闘態勢。
神は怒りに震えながら目を見開いた。
「お前らも、楽に死ねると思うなよ!!」
その瞬間――
神の周囲に、無数の水鏡が現れる。
全員が息を呑む。
「えっ!?」
神は涙を流しながら笑った。
「ここで死んだ者は、神の力となる。」
「女神……。」
「力も、屈辱も、悔しさも、愛情も……。」
「全部、俺が受け継いだぞ。」
神の頬を伝う涙は、最後まで止まることはなかった。
今後もよろしくお願いいたします。




