第56話 神の謀略
最終章突入になります。よろしくお願いいたします。
最終章 神の謀略
決勝戦が終わり、会場は歓声に包まれていた。
優勝を称える声。
悔しさから目を逸らす者。
嫉妬の視線を向ける者。
様々な感情が渦巻く中、ただ2人だけは静かに立っていた。
神と女神。
神は退屈そうに腕を組み、
「やっと決まったか」
と呟く。
女神もため息混じりに、
「長いのよね」
と冷たく言い放った。
そんな2人の様子など知らず、宵うさぎがいつもの調子で笑う。
「それでは~優勝者には~ご褒美だね~」
隣では月狼が静かに問い掛ける。
「何を選ぶ」
秋桜と金木犀は互いに視線を合わせた。
そして、
秋桜はいつものように笑顔で、
「私はお金~」
金木犀も迷うことなく、
「私もお金を希望します」
と答えた。
金木犀は視線を一度も神と女神から外れない。
2人の願いを聞いた瞬間、
神の表情がわずかに変わる。
「金か……それでいいのか?」
女神も鼻で笑う。
「神になりたいと思わないの?」
しかし、秋桜は首を傾げた。
「思わないよ~」
金木犀も一切視線を逸らさない。
神は静かに笑った。
「そうか……残念だな」
女神も冷たく言い放つ。
「馬鹿な人間」
その瞬間だった。
島全体が光に包まれる。
巨大な光の壁が空を覆い、島そのものを閉ざした。
観客達に動揺が走る。
「な、なんだ?」
「何が起きてる?」
ざわめきが広がる中、
金木犀は少しずつ体勢を変え、いつでも動けるように準備する。
秋桜もまた、能力を発動できるよう静かに構えた。
神が口を開く。
「最終警告だ」
「仲間になれ」
女神も笑みを浮かべる。
「私達のためにね」
金木犀が静かに問う。
「断ると言ったら?」
神の笑みが深くなる。
「死ね」
「そして我等の力となれ」
「我等の力になれるなら本望であろう?」
金木犀がナイフに手を伸ばした。
その瞬間、
神がわずかに目を細める。
すると、
金木犀の動きが急激に遅くなった。
いや、
ほとんど止まっている。
「ッ!?」
秋桜が叫ぶ。
「金木犀~!」
神が視線を外すと、再び金木犀の体が動き出す。
誰もが理解した。
師走が震える声で呟く。
「じ、時間減速……」
「霜月の能力……」
神は不敵に笑う。
「判ったか?」
しかし、金木犀は答えることなく、ナイフを女神へ投げる。
だが、
女神の前に現れた水の壁。
ナイフは水面に触れた瞬間、
まるで鏡のように軌道を変え、金木犀自身へと跳ね返る。
秋桜が慌てて能力で止める。
金木犀が目を見開く。
「水壁じゃない……」
「水鏡……」
神無月も愕然としていた。
「どういうことだ……」
百合も状況を理解できず、呆然とする。
「月花大戦って……何なのです?」
会場中が混乱に包まれる中、
文月。
秋桜。
そして金木犀。
3人だけはすでに戦闘態勢に入っていた。
神は満足そうに笑う。
「では始めようか」
「私達と1つになろうじゃないか」
女神は椅子に座ったまま微笑む。
「私は待ってるわよ」
神は肩を鳴らした。
「いいだろう」
「俺だけで充分だ」
「少しは楽しませろよ」
神が静かに呟く。
「須佐之男命」
その瞬間。
細身だった神の肉体が、凄まじい速度で膨れ上がる。
圧倒的な神気。
巨大な肉体。
神無月が息を呑む。
「なっ……」
「同じ須佐之男命なのに……」
神は笑った。
「人間と神を一緒にするなよ」
そして、
会場中を見渡しながら、
楽しげに口元を歪める。
「さぁ始めようか」
「一方的な虐殺を……」
今後もよろしくお願いいたします。




