第51話 決着
いつも読んでいただきありがとうございます。
彼岸花がゆっくりと顔を上げる。
「……とっとと終わらせましょうか」
文月が頷く。
「頼みます…」
そう言って砂嵐へ向かおうとした。
しかし。
彼岸花が目の前に立ち塞がる。
「……彼岸花?」
「どうしました?」
返事がない。
次の瞬間。
彼岸花は文月を抱き上げた。
「えっ?」
「はっ?」
しかも、なぜかお姫様抱っこである。
「ちょっ!?」
「彼岸花!」
文月の顔が一気に赤くなる。
「俺が囮にならなければ、この防壁は――」
彼岸花は聞いていない。
足元の石を蹴り上げる。
石は砂嵐の中へ入り、少し遅れて地面へ叩き落とされる。
文月の目が開く。
「なるほど……!」
秋桜が反応してから重力を発動するまで、わずかに時間差がある。
彼岸花は再び石を蹴り込む。
そして、落ちるタイミングを見極める。
「一気に行くよ」
地面を蹴り砂嵐に入る。
常人を遥かに超える速度。
砂嵐の向こう側。
秋桜が笑った。
「金木犀~」
「来るよ~」
「はい!」
「秋桜様!」
あと少しで砂嵐を抜ける。
その時。
突然、砂嵐が消えた。
「ッ!」
目の前には秋桜。
1人で立っている。
「判るよね~?」
「罠あるけど、来る~?」
彼岸花は笑った。
「もちろん」
「行きますよ!」
一気に距離を詰める。
しかし。
足が重い、重力じゃない、
地面そのものが沈み込んでいる。
「ッ!」
「彼岸花地獄~」
秋桜が笑いながら言った。
重力による蟻地獄。
彼岸花が砂の中に沈む。
「高く跳べ!」
文月が叫ぶ。
しかし、足場が悪すぎる。
「チッ!」
「許せよ!」
「吹っ飛べ!」
文月の言霊。
彼岸花の体が前方へ吹き飛ぶ。
蟻地獄からは脱出は出来た。
言葉の反動で文月自身も少し吹き飛ぶ。
秋桜が感心したように笑う。
「手荒だね~」
その後、視線はビルの上へ。
次の瞬間。
何本もの矢が彼岸花と文月へ襲いかかる。
能力で止めておいた矢を重力で加速させる。
さらに。
秋桜の後方から飛び出してきた金木犀。
その手には、自身と変わらないほど巨大な大剣。
「っ!」
文月が目を見開く。
金木犀には不釣り合いなほど巨大な大剣。
しかし。
秋桜の重力操作によって重量を制御されている。
金木犀は軽々と振り下ろした。
逃げ場がない。
彼岸花が無理矢理、割って入る。
すでに矢が2本ほど刺さっている。
さらに矢を受けながら、細剣で大剣を受け止める。
文月にも矢が刺さる。
「くっ!」
「ッ!」
「降参しますか?」
「まさか、負ける訳には…」
「判りました、秋桜様を泣かせる訳にはいきません!」
大剣を振り抜く。
彼岸花が押される。
秋桜も自分の背丈を超える大剣を持ち上げた。
文月が苦笑する。
「そういうことか……」
「長引きそうですね」
今回。
秋桜は蟻地獄と大剣の重力制御に徹している。
能力の消耗が少ない。
そして。
遠距離、近距離。
どちらにも隙がない。
何より。
2人は強いというより、互いの特性を知り尽くしていた。
「厄介すぎる……」
彼岸花も苦笑する。
「ちょっと……キツイかな」
彼岸花は言葉の力を一段階落とす。
文月も自身へ言霊をかけた。
細剣。
ナイフ。
対するは巨大な大剣。
本来なら取り回しではこちらが有利。
しかし。
大剣の重量は自在に変化する。
軽いが、斬る瞬間だけ、本来の重さへ戻る。
絶妙なタイミングでなければ反撃すら難しい。
「私の血でいきましょか」
「それしかありませんね」
「動きを止めても、重力は止められない……」
彼岸花が笑う。
「任せとき」
「うちが倒したる」
文月も頷いた。
2人が同時に突撃する。
秋桜も迎え撃つ。
彼岸花の剣。
秋桜の大剣。
大剣は盾にもなる。
しかし。
剣術そのものは彼岸花が上。
徐々に秋桜が押され始める。
一方。
文月も金木犀を押し始めていた。
「秋桜様!」
金木犀が叫ぶ。
そして。
巨大な大剣を秋桜へ投げた。
「ありがとう~」
秋桜が受け取る。
巨大な大剣二刀流。
もちろん怪力ではない。
重力操作によって重量を自在に制御している。
軽く、そして振り下ろす瞬間だけ本来の重量。
2本の大剣が舞う。
まるで踊るように。
流石の彼岸花も防ぎ切れない。
同時に。
金木犀は体から見えない気体を放ちながらナイフを抜く。
「飛び道具には自信があります!」
ナイフが正確に文月を襲う。
「チッ……」
「作戦が甘かったか……」
そして。
ついに。
2本の大剣が彼岸花を追い詰めた。
首元。
腹部。
あと少しで致命傷。
彼岸花は静かに笑う。
「降参します」
そして……
「文月……すまない」
文月も苦笑した。
「謝る必要はありません」
「強かったですね」
月狼が静かに宣言する。
「それまで」
「勝者」
「秋桜、金木犀」
決勝進出。
誰も予想しなかった顔ぶれ。
しかし。
異論を唱える者はいなかった。
ここまで勝ち上がってきた4人の実力を。
誰もが認めていたからである。
今後もよろしくお願い致します。




