第50話 絆の力
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準決勝。
試合会場へ向かう途中。
彼岸花が文月に静かに話しかけた。
「私の願いが叶ってしまいました」
「この試合、負けても構わないと思っています」
文月は少し驚いたような顔をした。
「そうなのか」
「すまないが、私は決勝へ行かなければならない」
彼岸花が不思議そうに首を傾げる。
「貴方も神になりたいんどすか?」
その言葉に、文月の表情が一瞬だけ曇った。
しかし、すぐにいつもの顔に戻る。
「まさか」
「神なんかになりたいとも思わない……」
彼岸花は目を細めた。
「そうどすか」
「判りました、勝ちましょう」
準決勝。
秋桜、金木犀。
文月、彼岸花。
秋桜は砂漠。
文月は市街地を選択。
砂に飲み込まれた都市が姿を現す。
月狼が静かに告げた。
「始めろ」
試合開始と同時に、秋桜が砂嵐を発生させる。
さらに金木犀を重力で浮かせ、ビルの屋上へ移動させた。
文月は砂嵐を見ながら眉をひそめる。
「相手には届かないな」
彼岸花も細剣を構える。
「さすがにお互い手の内は判っとりますね」
「言霊で一気にいきますか?」
文月は首を横に振った。
「砂嵐を抜けても、その先が見えない以上、真正面から行くのは得策ではない」
「そうどすな」
「でも、このままでは埒が明きません」
2人は左右に分かれ、砂嵐を回避しながら前進する。
ビルを利用し、何とか突破できると思われた瞬間。
ドスッ!
文月のすぐ横に矢が突き刺さった。
「っ!」
金木犀の狙撃。
彼岸花も砂嵐を抜ける。
しかし。
目の前には秋桜が立っていた。
「その細い剣で受けきれる~?」
彼岸花は細剣を構える。
「試してみては?」
秋桜の拳に重力が集まる。
そして放たれた拳。
彼岸花は剣で受け止めようとする。
しかし。
体が重い。
いや。
動きそのものが鈍っている。
拳が彼岸花の腹にめり込む。
「ぐはぁっ!」
彼岸花が吹き飛ばされる。
秋桜は申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね~」
「金木犀と約束したから~」
彼岸花は苦しそうに立ち上がる。
「謝らんといて」
「私が勝つのに、謝られても困ります」
細剣で斬りかかる。
しかし重力の影響で剣速が落ちる。
その時。
「秋桜様!」
金木犀の声。
秋桜は迷うことなく後退した。
直後。
ドスッ!
先程まで秋桜がいた場所にナイフが突き刺さる。
「避けますよね」
戻ってきた文月だった。
金木犀も深追いはせず、秋桜との合流を優先していた。
秋桜は周囲に巨大な砂嵐を発生させ、防壁を作り出す。
しかし、それは諸刃の剣。
敵だけでなく、自分達の視界も遮る。
そう思われた瞬間。
文月がナイフを砂嵐の中へ投げ込む。
ナイフが砂嵐に入ると、
重力に引かれたように地面へ叩き落とされた。
秋桜の能力。
そして位置。
文月は小さく笑う。
「やはり、そうですか」
完全に。
近距離型と遠距離型。
2組の戦いになっていた。
「この防壁、厄介ですね」
文月が呟く。
彼岸花も苦笑した。
「諦めはるんどすか?」
「まさか」
「でも、このままでは負ける」
彼岸花も脇腹を押さえる。
「そうどすな」
「私も肋骨が折れとります」
しばらく考えた後。
文月が静かに言った。
「俺がやる」
「囮になる」
「後は任せても?」
彼岸花は目を丸くした。
「うちが囮になった方が良いのでは?」
「いや」
「言霊で強化した彼岸花の方が強い」
「頼みます」
彼岸花は頷いた。
「判りました」
文月は彼岸花へ言霊をかける。
「力が強くなる」
さらに。
「速くなる」
同じ言葉を2度重ねる。
常人なら耐えられない。
彼岸花の意識が飛びかける。
それでも。
彼岸花は歯を食いしばり耐えた。
そして。
ゆっくり顔を上げる。
その瞳から、いつもの柔らかさが消えていた。
口調も変わる。
「……とっとと終わらせましょうか」
今後もよろしくお願い致します。




