第49話 ご褒美は?
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エキシビションマッチ終了後。
向日葵がニコニコしながら宵うさぎへ近付いて来る。
「よ、い、う、さ、ぎ、さ~ん♪」
「な~に~?」
「嫌な予感しかしないんだけど~」
向日葵は満面の笑みで言った。
「ご褒美くださいな♪」
「私の望みは……」
宵うさぎが少し身構える。
「出来る事だよ~?」
「一緒にパフェ食べよう♪」
「えっ?」
構えていた宵うさぎの力が抜けた。
「お酒飲むから、甘いの嫌いかな?」
「そんなことないよ~」
「好きだよ~」
「じゃぁ♪行こぉー!」
向日葵は宵うさぎの手を引っ張ってラウンジに走る。
助けを求めるように月狼を見る宵うさぎ。
しかし月狼は、なぜか目を合わせてくれなかった。
「睦月ー!行くよー!」
「はい、はい、」
3人がラウンジへ入ると、いつもの女子会メンバーや、カウンター席の師走と百合がこちらを見る。
しかし向日葵は全く気にせずテーブル席に座った。
「すみませーん!」
「パフェとショートケーキとパンケーキ、それと紅茶お願いしまーす!」
宵うさぎは静かに座ったまま固まっていた。
「宵うさぎさんは?」
「えっ?」
「今のは~みんなの分でしょ~?」
「私の分だよ!」
宵うさぎが思わず引く。
「そんなに食べると~……」
向日葵がニコニコしながら首を傾げた。
「もう一度戦うのかな?」
宵うさぎは、自分の方が圧倒的に強いはずなのに、なぜか怖いと思ってしまった。
「キャロットケーキ~」
「ホットミルク~」
「俺はコーヒーを、ホットで」
やがてテーブルにスイーツが運ばれる。
「やったー!」
「食べよう♪」
向日葵は一心不乱に食べ始めた。
宵うさぎは苦笑しながら睦月を見る。
「睦月~」
「これ~毎回なの~?」
「うーん」
「今日は少ないかな」
宵うさぎはさらに引いた。
引きながらも、キャロットケーキを口に運ぶと、
「美味しい~!」
向日葵が口いっぱいにケーキを頬張りながら頷く。
「でひょ~?」
「ここ、ほいひいの~」
「何言ってるか判らないから、口に物を入れたまま喋るな…」
睦月が苦笑する。
このご褒美の席で、
月花大戦の話も。
神の話も。
戦いの話も。
誰もしなかった。
ただ、3人で美味しいスイーツを食べて。
穏やかな時間を楽しんでいた。
「美味しかったよ~」
「良かった♪」
「宵うさぎさんも楽しんでくれたなら!」
「うん~」
「楽しかった~」
宵うさぎは嬉しそうに笑っていた。
「次は~睦月だよ~」
「出来る事だからね~」
睦月の目が輝いていた。
「夜、ここに集合で」
「夜ね~?」
「判ったよ~」
――そして夜。
「来たね」
「どうぞ」
睦月に案内されてラウンジへ入った宵うさぎは、思わず固まってしまった。
「月狼さん~♪」
テーブルには月狼が座っていた。
月狼はちらりと視線を向けるだけだった。
「月狼さんも呼んだよ」
「お酒好きかなって思って♪」
「それで~?」
「何を望むの~?」
「それは……」
「それは~?」
睦月は満面の笑みを浮かべた。
「潰れるまで呑む!」
宵うさぎの顔が緩む。
月狼は深くため息をついた。
「なぜ私まで……」
「月狼さんもお酒好きそうだったから」
そう言いながら月狼の口元がわずかに緩んでいた。
「向日葵は~?」
「向日葵なら」
「ほら」
隣のテーブル。
向日葵は1人、幸せそうにケーキを食べていた。
「なるほど~」
「向日葵らしいね~」
3人は酒を酌み交わした。
睦月が飲み続けるが、
「うっ……」
「限界……」
真っ先にテーブルに顔が着く。
「弱いね~」
「若いな」
宵うさぎと月狼が笑う。
その後も2人は飲み続けた。
向日葵は隣でケーキを食べながら寝てしまい。
睦月も夢の中。
夜が明けていく。
ラウンジには静かな朝日が差し込んでいた。
「……まだ飲むのか」
「月狼さんこそ~」
「付き合っているだけだ」
「ふふ~♪」
誰も戦いのことなど口にしない。
神も。
人も。
ただ同じ時間を楽しんでいた。
そんな穏やかな1日だった。
今後もよろしくお願い致します。




