第48話 エキシビション
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準決勝。
本来は、
秋桜、金木犀VS文月、彼岸花。
その1戦が行われるはずだった。
しかし――
宵うさぎがマイクを持ち、いつもの調子で笑いながら、
「秋桜、金木犀VS文月、彼岸花なんだけど~」
「睦月と向日葵が~暇そうだから~」
「遊んであ~げ~る~」
会場が一瞬静まり返る。
睦月と向日葵も唖然としていた。
「聞いてないぞ……」
「私はいいよ!」
向日葵が目を輝かせる。
睦月は思わず向日葵を睨みつける。
「だって楽しそうだから!」
「はぁ……判ったよ…」
「で、相手は?」
すると宵うさぎと睦月の目が合った。
「……まさか……」
「宵うさぎさんと?」
宵うさぎは酒を1口飲み、
「早くやろ~」
「マジかよ……」
頭を抱える睦月。
しかし向日葵は嬉しそうだ。
「いいね!」
「やろっ!」
月狼は呆れたようにため息をつく。
「遊びだぞ」
「本気出すなよ」
「は~い」
「勝てたら~」
「言うこと聞いてあげるよ~」
「出来る範囲でね~」
「おい!」
思わず月狼が声を上げる。
「いいじゃない~」
「若い子には~ご褒美必要でしょ~?」
月狼は頭を押さえた。
「はぁ……」
宵うさぎが2人に聞く、
「フィールドは~?」
向日葵が笑いながら。
「私は太陽ね!」
「睦月は~?」
「俺も?」
「ハンデだよ~」
「大分優しいな…」
睦月の顔つきが変わる。
ナメられている。
「市街地!」
フィールドが構築される。
太陽。
そして市街地。
「これで~いいかな~?」
「おう!」
「うん!」
月狼はため息混じりに告げた。
「始めろ…」
宵うさぎは動かない。
酒を飲んでいるだけだった。
「向日葵!」
「本気で行くぞ!」
「うん!」
睦月は自分と向日葵に限界近くまでバフを掛ける。
自身は最初から二刀流。
向日葵も太陽を浴び、その力を溜めていく。
宵うさぎは酒を飲んでいた。
「そろそろかな~?」
その言葉が言い終わる前に。
すでに向日葵の目の前にいた。
「ッ!」
宵うさぎの蹴りが脇腹を襲った。
向日葵もとっさに膝で受けるが、軽く吹き飛ばされる。
「ッ!強っ!」
「油断するな!」
睦月が二刀流で斬り込む。
振り下ろし。
回転しながらの切り返し。
「遅いよ~」
宵うさぎは軽やかに避ける。
そこへ向日葵の拳が迫るが、
避けられる。
蹴り。
避けられる。
2人の猛攻。
しかし、宵うさぎは笑っていた。
「終わり~?」
睦月の日本刀を足で止める。
向日葵の拳を紙一重でかわす。
だが。
向日葵の拳が、ふさふさの毛をかすめた。
「おぉ~?」
「当たった~」
嬉しそうに笑う。
その瞬間を逃さず、睦月が切り返す。
宵うさぎは初めて距離を取る。
「ヤバイかも~」
宵うさぎは月狼を見る。
しかし月狼は一切関与しないって顔をしている。
「自分で何とかしろ…」
宵うさぎは笑いながら酒を地面に置く。
「危なそうだね」
向日葵が笑う。
「面白い!」
睦月も笑う。
2人は一気に距離を詰める。
向日葵の拳。
睦月の斬撃。
互いを信頼しているから出来る連携。
防御。
回避。
反撃。
次第に宵うさぎの攻撃回数も減り、防御の回数が増えていく。
「凄いね~」
「2人とも~」
「成長したね~」
「楽しくなってきた~」
「まだ余裕なの?!」
向日葵が叫ぶ。
「化け物かよ……」
睦月も苦笑する。
しかし2人は止まらない。
向日葵のミドルキックが初めて宵うさぎの腕を捉えた。
「おぉ~!」
「入った~!」
宵うさぎは嬉しそうに笑う。
「いけるぞ!」
「いくよー!」
その瞬間。
宵うさぎの目の色が変わった。
月狼の表情も変わる。
「……宵うさぎ…」
一瞬。
本当に一瞬で。
向日葵の体が吹き飛んでいた。
「ぐはぁっ!」
「向日葵!」
吹き飛ばされた先。
そこにはいつの間にか月狼がいた。
「っと」
向日葵を受け止めると、
「宵うさぎ」
「ハッ!」
「ごめん~!」
「つい本気に~」
月狼は深くため息をつく。
「勝者、睦月、向日葵」
「え~!」
「なんでよ~!」
「本気を出しただろう?」
宵うさぎはうつむく。
「判ったよ~……」
「遊びって言ったのに~」
「つい楽しくなっちゃった~……」
「反省しろ」
「は~い……」
向日葵は月狼の腕の中で目をパチパチさせる。
「……勝った?」
睦月も苦笑した。
「……勝ったらしい」
準決勝前。
温かなエキシビションマッチは幕を閉じた。
今後もよろしくお願い致します。




