第5話 静かなる牙
いつも読んでいただきありがとうございます。
試合が終わる頃。
歓声の裏で――
別の動きがあった。
名家の一室。
重い空気。
「……まだ情報はない」
低い声が響く。
「だが、必ず起こる」
「前回もそうだった」
「……承知しております」
1人が頭を下げる。
「それより」
別の声が割って入る。
「彼女は、どうしますか?」
一瞬の沈黙。
「気にするな」
冷たい声。
「我々の管轄外だ」
「しかし――」
わずかな間。
「神無月が狙われているのは明確です」
「何も対処しないのは……」
「勘違いするな」
空気が凍る。
「我らの掟は……月の者のみ」
それ以上は、誰も言わなかった。
「……御意」
静かに、決定される。
場面が変わる。
主催側ホテル。
1室。
女が1人、窓の外を見ていた。
「……あの家だけは」
小さく、呟く。
「潰さなくては」
静かな声。
感情は薄い。
だが、奥に“執念”がある。
「私の力なら……両方、届く」
指先が、わずかに震える。
「近づいて――」
一瞬、笑う。
「終わらせる!」
その目は、どこまでも冷たかった。
そして。
もう1つの影。
「……くだらない」
霜月。
観客席の端。
誰にも気づかれず、立っている。
「月を殺せるのは――」
小さく笑う。
「俺だけでいい」
その視線の先。
次の標的。
「……邪魔するなら、全部殺す」
静かに。
だが確実に。
“月が月を狙う”
その戦いが、始まろうとしていた。
5話も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願い致します。




