第4話 太陽と氷
いつも読んでいただきありがとうございます。
「いくよ!」
向日葵が笑い、氷原へ飛び出す。
睦月は肩をすくめた。
「はいはい……」
ゆっくりと後に続く。
「行くぜ!」
如月も踏み出す。
梅は静かにその後ろへ。
だがその瞳には、確かな勝ちへの意志があった。
フィールドに入った瞬間――
向日葵が地を蹴った。
氷が砕け、音が弾ける。
「バフ掛けるぞ!」
後方から睦月。
だが。
「待って!」
振り向きもせず、向日葵が叫ぶ。
「どこまで出来るか試したい!」
「そのままやらせて!」
睦月はため息をついた。
「……好きにしろ」
向日葵が一直線に突っ込む。
如月が氷原を操作し、壁を作る。
瞬間。
「おりゃあああッ!!」
拳が叩き込まれ――
氷が粉砕された。
「……マジかよ」
如月が笑う。
「上等だ!」
拳、踵、爪先に氷を纏う。
「いいね」
向日葵が笑う。
「殴り合いだ」
激突。
拳と蹴りが交差する。
如月の猛攻。
だが向日葵は――
避ける。
流す。
いなす。
まるで達人のように。
「……なんだその動き」
如月が歯を食いしばる。
「格闘家か?」
「違うよ」
向日葵が笑う。
「能力」
「太陽があるとね」
「体が軽いし、よく見える」
「なら――これでどうだ!」
如月が踏み込む。
拳が振り抜かれる。
向日葵がかわす――
その瞬間。
氷が伸びた。
棘となって、肩を掠める。
血が弾けた。
「女に傷つける趣味はねぇが――」
如月が吐き捨てる。
「強い自分を恨め!」
「いいよ」
向日葵は笑う。
血を流しながら。
「楽しいし」
「全力でやろう」
後方で睦月が呟く。
「負けたら恨むぞ」
「大丈夫」
向日葵が答える。
「勝つよ」
「このっ……!」
如月の猛攻が加速する。
拳。
蹴り。
氷の棘。
すべてが向日葵へ向かう。
だが。
「……速い」
如月が息を呑む。
さっきよりも、さらに速い。
向日葵が流しながら踏み込み――
正拳。
腹に突き刺さる。
「ぐっ……!」
如月が崩れる。
だが。
梅が即座に回復する。
「助かる」
如月が笑う。
「いい相棒だ」
睦月が声をかける。
「そろそろだろ」
「……もう少し」
向日葵が答える。
攻防が続く。
如月は回復される。
向日葵は削られる。
疲労が蓄積していく。
そして。
「……やっぱり無理か」
向日葵が笑う。
「睦月さーん」
「なんだ」
明らかに機嫌が悪い。
「バフ、お願い」
睦月が笑う。
「高くつくぞ」
「いじめないでよ」
その瞬間。
如月が動いた。
「させるか!!」
氷原から棘が噴き出す。
槍となって、睦月を襲う。
睦月が避ける。
だが――
残る。
その前に。
向日葵が割って入る。
「すみません……」
「助かった」
睦月が言う。
「いくぞ」
その瞬間。
光が弾けた。
バフが――向日葵にかかる。
次の瞬間。
向日葵の意識が、消えた。
気づいた時。
目の前には――梅。
「え……?」
拳が、めり込む。
「がっ……!」
梅の体が折れる。
そのまま宙に浮き、吹き飛んだ。
「梅ッ!!」
如月が叫ぶ。
次の瞬間。
向日葵が“消えた”。
「な――」
視界から消失。
反応した瞬間。
腹に衝撃。
「ぐっ!!」
如月の体がくの字に折れる。
氷を瞬時に纏い、防御する。
だが。
完全には防ぎきれない。
(速い……!?さっきとは別物だ……!)
向日葵は止まらない。
感情のない瞳。
ただ、敵を叩き潰すためだけに動く。
蹴り。
肘。
拳。
連撃が途切れない。
「くそっ……!」
如月が距離を取る。
氷原を操作。
巨大な氷の槍が無数に浮かぶ。
「全部、叩き落とす!!」
一斉射出。
だが。
向日葵が踏み込む。
避ける。
砕く。
すり抜ける。
一直線。
「嘘だろ……!」
次の瞬間。
懐に入られる。
正拳。
「――がはっ!!」
如月が吹き飛ぶ。
氷原を滑り、地面に叩きつけられる。
動かない。
そのまま、向日葵が歩く。
ゆっくりと。
確実に。
トドメを刺すために。
如月がうずくまる。
だが、まだ意識はある。
向日葵は止まらない。
感情の消えた目で、1歩、また1歩と近づく。
トドメの距離。
脚が振り上がる。
如月の顔面へ――
その瞬間。
「――遅い」
いつの間にか、そこにいた。
月狼。
振り下ろされた蹴りを――
片足で、受け止めている。
衝撃が走る。
氷原が砕け、ひび割れる。
だが。
向日葵の足は、一切動かない。
「……そこまでだ」
低い声。
静かで、重い。
逆らえない圧。
その一言で。
空気が、完全に止まる。
次の瞬間。
向日葵の瞳に、光が戻った。
「……あれ?」
力が抜ける。
膝が崩れる。
「っ……はぁ……」
荒い呼吸。
全身から汗が流れる。
「……やりすぎだ」
睦月が呟く。
「バフの代償だ」
向日葵が苦笑する。
「……聞いてないよ、それ」
「言ってないからな」
月狼が、ゆっくりと足を下ろす。
「勝者――」
一拍。
「睦月・向日葵ペア」
歓声が爆発する。
如月は倒れたまま、かすかに笑う。
「……ちくしょう」
その隣で。
梅もまた、意識を取り戻していた。
氷原の上。
強い太陽が照りつける。
戦いは終わった。
だが――
その裏で。
何かが、静かに動き始めていた。
4話も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願い致します。




